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マリたん再び

31話で終了します。

やっと書き上げました。


氷結姫の教室につくと入り口近くにいたメガネの真面目そうな人が彼女を呼んでくれた。


氷結姫が俺に向かって歩いてくる。

彼女は意外と温厚なので殴られたりなんてしないだろうが、身も凍るような冷たい目線でみられてしまうかもしれない。


それでも、やはりケジメはきっちりつけたい。

やっぱり、お世話を途中で投げ出すなんて間違っているしな。


「先輩、ほんとうにごめんなさい。」

まずは頭を下げて前回の非礼を詫びた。

しかし、それを見つめる彼女の様子が予想外過ぎた。


彼女の瞳からツゥーッと涙が零れ落ちた。

しかし、それで終わりではなく、涙は止め処なく溢れ出していく。



「…先輩大丈夫ですか?どこか痛みますか?」

予想外の出来事に一瞬思考停止してしまったが、もしかすると、やはり頭が痛くなったのでは?


「だ、大丈夫です。心配しないで。」

そういう彼女の涙が止まらないが、、、


どうやら、どこか痛いというよりは訳もなく涙がとめどなく溢れてきて戸惑ってしまっているようだ。いや、少しは痛いんだろうが。


ちょっと落ち着いてもらうほうがいいな。



「‥ちょっと歩きましょうか?」



そう言って氷結姫を屋上へ誘う。

そして、屋上に入ると氷結姫の目をまっすぐ見つめて懇願する。


「あれから、先輩とのこと色々考えてたんです。先輩(の頭が)痛いのは当たり前なんですよ。それで、先輩のことを放っておいて(罪悪感で)胸が痛かったんだと思います。俺に最後まで面倒見させてください。」

俺はそう言って頭を下げた。


…あれ?返事がない。ただのしかばね…

いや、俺を許すか許さないか悩んでるのかもしれない。


「(そういうのは)いいですよ。」

やっぱり断られたか。まぁ、しょうがないよな。

罪悪感を和らげるために彼女の面倒を見るなんて

俺が彼女の立場でも素直に許せるものではないよな。


「えっ?先輩、あっ、そうですか。やっぱり怒ってますよね。すみません、出直してきます。」

なんとか動揺を抑えてそこまでは言えたが、俺はそのまま逃走してしまった。



そして、俺は暫く走ったところで立ち止まった。



「逃げてどうすんだよ、俺は」

そんな言葉は冷たい廊下に溶けて誰の耳にも届くことはなかった。



暫く廊下で佇んでいると、目の前に葵が現れた。


「あれ?シンヤ?こんなところでなにしてるの?」

どうやら、新校舎の端にある用務室の前に来てしまったようだ。


どうりで人通りが少ない訳だ。



「いや、なんでもないけど」

俺は本音を悟られたくなくて目をそらしながら話を誤魔化しにかかったけど、


「なんでもないことないでしょ?もしかして、神埼先輩のこと?」

葵は全てお見通しだったようだ。

さすが、小学四年からの付き合いだ。



「…なんでもお見通しなんだな?でも、これは俺の問題だからな。」

そう、それでもこれは人に頼る訳にはいかない。


「なんでそんなこと言うの?私だって女の子なんだよ、わかってるの?」

わかってるよ。

葵が結構告白されてたりするのも知ってるし、女子目線のアドバイスが欲しいと言えば欲しい。


でも、、、、、


「ありがとう、でも、俺は葵の好意に応えるような資格は俺にはないからな。」

先輩に責任があるのは俺だし、その責任を一旦は投げ出したような形になったのも俺だ。解決するのに人の手を借りていい場面じゃない。


「資格とかそういうのはいいから、シンヤの本音を聞かせて。」



「そうだな。本音を言うと(最後まで)氷結姫に付き合いたいんだよな。」


そう、途中で投げ出すなんて俺の趣味じゃないし。

今回また逃げてしまったが別に送っていくだけが氷結姫に対してできることじゃないからな。



「そぅ。可愛いもんね。だったらシンヤのしたいようにするのが1番じゃない?ていうか、言われなくてもそうするのがシンヤじゃない?いっつもマイペースだもんね、シンヤは。」


「まぁ、葵との出会いから言ってそんな感じだったもんな。ありがとう、やっぱり葵と友達で本当によかったよ。」


そう、葵のお陰でわかった。

俺はどうせ不器用だ。

それに自己満足の押し売りなんて氷結姫は望んでいないだろう。


だから、俺は俺のやれることをやろう。




「懐かしいね。う、うん、私もシンヤと友達で良かったよ、一緒にいると飽きないしね」

葵は一瞬遠い目をしてそう言葉を紡いだ。


「うわぁ、なんか褒められてる気がしない。」


「当たりでしょ。褒めてないんだから」

そう言って、葵は悪戯に成功した子供みたいな笑みを浮かべていた。



そのまま、放課後は久し振りに葵と一緒に帰ることになった。


「ねぇ、神埼先輩ってどんな人なの?」


「うーん、若干天然入ってるけど性格は悪くないな。もっと冷たい人かと思ってたんだけどな。」

そう、氷結姫はそう呼ばれるほどの冷たくはないんだよな。黙ってジィーッと見つめられると怖くて冷や汗はでるけどな。


「そうなんだ?うーん、結局私はどうしようもないんだよね?」



「まぁ、(協力は)気持ちだけ貰っておくよ。話は変わるけど、葵のバイト先ってなにかバイトを募集したらしてない?」

そう。モデルをしている彼女の周辺に臨時のバイトか何か転がっていないかと思ったのだ。そして、バイト金を貯めればなにか氷結姫への償いに使えるかもしれない。

長期のバイトはさすがにする気になれないし。


今のままだと、何の償いもできないからな。



「うんっ、出てないと思うけどスタッフさんに聞いてみるね。」

葵は弾むような声で俺の頼みを引き受けてくれた。

彼女はほんとうに世話焼き屋さんだから、頼られたりするのは嬉しいんだろう。


そして、葵と別れて少し歩いたところで後ろを振り返ると…電柱に隠れきれていないマリたんの姿が視界に入ってしまった。。


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