スカートの下に何か見える
前々話もしくは、その前話の続きです。
昨日のはいったい何だったんだ?
翌日、俺は朝の肌寒い風を感じながらうんうんと頭を捻って歩いていた。
そして、校門に差し掛かった時声をかけられた。
「ちょっと、君。顔貸してくれるかな?」
俺に話し掛けたのは一昔前のリーゼントスタイルの不良ではなく、スレンダー美少女の親友さんだ。あれ、今日は氷結姫はいないのか?
「どうしました?」
「刹那のことよ。ついてきて。」
そう言う親友さんの有無を言わせぬ様子に不穏な空気を感じ取った俺は彼女の後を無言でついていく。
そのまま校舎に入り、階段を登っていく。
後に続くと彼女の短いスカートから何かが見える。‥‥って、ショートパンツか‥いや、悔しがってなんていないんだからな。
親友さんがキィーッという音を立てて扉を開けると、その先には見慣れた屋上が広がっていた。もちろん、こんな時間に屋上に居る酔狂な人間は俺達2人だけだ。
「ふぅっ、時間がないから本題に入るね。刹那に告白しておいて数日でフるってどういうことなのよ?私、刹那を泣かせたら許さないって言ったよね?」
屋上に出ると親友さんは俺に向き直り、あまり豊かではない胸を張ってそう切り出した。
「はっ?何言ってるんですか?」
俺は訳が分からず聞き返したよ。
何しろ俺は氷結姫に告白したこともふったこともないんだけど。
「えっ?あれ?だって、刹那が?」
俺が『意味がわからない』というような態度をとったので、親友さんの頭の上がハテナマークで大渋滞している。
何か誤解をしているようだが、きっと氷結姫が俺に関する不満を親友さんに漏らしたのかもしれない。
「神埼先輩が何か言ったんですか?もしかして、やっぱり俺を許すことは出来ないって言ってましたか?」
「許す、許さないって話じゃないよ。勝手だって思うよ。刹那の気持ちとか考えたことあるの?」
もしかして、俺が氷結姫に謝ることで自身の罪の意識を軽くしようとしたことを見透かされていたのかもしれない。
「いや、でも、悪かったとは思っているんだけど、俺がズルズルと付き合っていても(頭の調子は)よくはならないですから。」
そう、俺が付き添って帰るよりも、ちゃんと車で送ってもらう方がいいと思うし。
「よくも、そんな無責任なことを言えたものね。こんな奴を一回でも認めてしまった自分に腹が立つわ。もう、いいっ。あなたなんか刹那と一緒にいる資格はないわ。」
えっ?なに?
イヤイヤ付き添いしていると思われて愛想をつかされたのか?まぁ、イヤとは言わないがちょっと精神的に負担になってはいたのは確かだ。
だって、彼女、全然病院に行ってくれないし。
しかし、結果的に俺は自由の身になったのか?
でも、親友さんの独断なのかもしれないし。
「神埼先輩も同じ意見ってことでいいんですか?」
「もちろん、そうよ。これ以上あなたが口を開くと殴りたくなるから早く去ってくれないかな?」
親友さんは今にも泣き出しそうな顔で俺を睨んでいる。本当に友達想いなんだな。
とにかく、最悪の形ではあるけど俺は解放されてしまった。
俺は背中を丸めてその場を後にした。
そして、教室に入ると葵がなぜか気遣うような様子で声をかけてきた。
「おはよっ、どうしたの?そんな変な顔して」
「そんな変な顔って?いつも通りだと思うけど」
「‥自覚はないんだ?凄くかなしそうな顔をしてるんだけど。あれ?悔しそうな顔なのかな?どっちかわかんないや」
葵はそう言って無理やり口の端を上げて笑顔を作った。たぶん、俺を元気付けるためなんだろうな。普段は憎まれ口の方が圧倒的に多いんだけどな。
それにしても、顔に出てたのか?
『結局、怪我をした神埼先輩のお世話を負担に思っていたのが相手にバレて怒られて御役御免になった訳だし。結局、俺は自己中ってことなんだろうな』
なんてこと考えながら教室に入ったのがマズかったか。
「ありがとう、もう大丈夫だよ。」
俺も無理やり口の端を上げて葵にお礼を言った。
彼女の優しさに甘える資格は今の俺にはない。
それに‥‥やっぱり、中途半端なのは俺の主義には合わないな。
葵のお陰で少し冷静になれた俺はやはりもう一回氷結姫と正面から向き合う覚悟を決めた。
だから、授業が終わるとすぐに氷結姫の教室にダッシュした。
もちろん、走ってるのを先生に見つかって説教されたよ‥‥




