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七瀬葵の独白

私の名前は七瀬葵。16歳。

性格はどうだろ?

割と世話焼きだけど少し気が短いのかな。


あっ、あと特徴的な所なら私は割と男の子が苦手なんだよね。まぁ、シンヤとリョウスケは別としてだけど。


何故苦手なのかはあとで話すけど、そんな私にも恋バナの1つくらいはあったりする。



あれは中学2年の夏、好きな人に告白したら


「そんなことより、今日、麺吉のラーメン半額らしいぞ。食ってこうぜ」

なんてあしらわれてしまった。


それにしても、シンヤにとって

私の告白って『そんなこと』なの?


結構勇気を出して告白したんだけど、、


でも、告白した時のシンヤの表情を思い出すと『告白は失敗だった』とはっきりわかったんだ。


彼は怒ったような、悔しいような、悲しいような、やるせないような、何とも言えない表情を浮かべていたから。そんな彼の表情を見たのは後にも先にもこの時だけだから私は驚いたというかショックだった。


シンヤにとって私に好かれるのって、そんなに嫌なことだなんて想像もしていなかったから。


告白なんかしなければ良かった。




彼とは小学四年の時仲良くなったけど、その時の私は男の子が苦手だった。


例えば、女友達の彼氏が私に告白してきたり、違う男の子は私をストーキングしたり、とにかく男の子というのは私にとってはストレスそのものだったんだよね。



そんな小学四年の五月ごろのある放課後

「明日こそはリョウスケに勝つ。だから、付き合え。」

なんて話しかけて来た男の子がいた。


また、告白?

ほんと、嫌になっちゃう。


「なんで私があなたと付き合わなければいけないの?えっと…名前は…「橋本だ。一局くらい付き合ってもらってもいいだろ?なんか、お前暇そうだし。」

その男の子は一人でオセロをやっていて、相手になって欲しかったみたい。


暇そう?

誰が?


…カチンと来た私は男の子をコテンパンにやってしまうつもりで彼の対面に座りました。



「参りました。」


なぜか完全に負けが決まってから降参した男の子に私は思わずため息をついた。


パーフェクトは逃したものの、盤面には白の駒が大部分を占めていた。

もちろん、私が白で男の子が黒。


「自分から勝負をふっかけておいて、なんでこんなに弱いのよ?コテンパンにしてやろうと思ったのに…途中からそんな気すらなくなったわよ。えっと…リョウスケ君が誰かは知らないけど、君、多分ぼろ負けしてるでしょ?」


「よくわかったな?確かにぼろ負けしてるんだ。ちょっとお願いがあるんだけど…俺を「イヤよ。」

流石に後の展開は予想がついたので私は彼の言葉を遮った。どうせ『弟子にして下さい。』とかそんな感じのことでしょ?


「まだなにも言ってないだろ?」

男の子が恨みがましい目で私を見つめる。



「いや。言わなくても想像つくから。むしろ、もう一生口を開かなくても構わないわよ。」

でも、私もこんな面倒くさいお願いは聞きたくなかった。


「わかっている。タダでとは言わないよ。」

そう言って、彼は写真を見せた。




あれさえ見なければ、そもそもシンヤを好きになることなんてなかったかもしれないのに。


当時の私に『その写真を見ちゃいけない』なんて言いたくもなるけど、写真に写っていた麺吉ラーメンは今でも私の好きなものベスト3に入る食べ物だ。


過ぎ去ったことを今更グチグチ言ってもしょうがないよね。

でも、恋心は現在進行形で私の心の中に居座ったままだから正直どうしたらいいかわからない。


それにちょっと面倒くさいことに、きっとその気持ちはリョウスケあたりにはバレてる。


なぜわかるって?


私とシンヤで話してたら、たまにリョウスケが生暖かい目で私達を見つめたりしてるからすぐわかるわよ。

ホントに腹立たしい。


でも、本当に腹立たしいのは自分自身。

いい加減諦めるか、アタックすればいいのにそれも怖くて出来ない。また、彼にあんな表情を浮かべさせたくないんだよね。



だから、彼の為に作ったおにぎりも『余ったから食べる?』なんて言ってしまった。

実はお弁当にしたかったけど、さすがに露骨だからやめた。


でも、いつか食べさせてあげたいなぁ。




とはいえ、私はシンヤに関しては正直安心している部分もあった。


このまま進展が無くてもいつかは自然に恋人になってけっこ…コホンッ、ちょっと暴走し過ぎたね。

まぁ、月日が解決してくれて自然と恋人になれるかと思っていたんだ。


私達は本当に仲が良いしね。


実際はそんな単純なものじゃないと気付いたのがひと月前。彼からこんな相談を受けた。

『彼氏が欲しい友達を紹介してくれないか』


…私の友達と言っている時点で私は対象から外れているの?


別に私でもいいんじゃないのかな?

それともあえて外してる?


私ってそんなに魅力ないかな?


思わず手が出そうになった私は笑顔を浮かべて彼を見つめると、彼は

「いや、ほんとゴメン。冗談だから。」

驚いた顔をしてすぐに撤回してくれた。



まぁ、幸いなことにシンヤは何故かモテない。

あんなにカッコイイのに。

だから『彼に好きになってもらうのにまだ時間はたっぷりある。』なんて思ってた。



なのに、最近氷結姫がアヤシイ。


シンヤが怪我をさせたからって言っても、何故一緒に帰らなきゃいけないのよ。


確か彼女はいつも車で送り迎えされてる筈なのに!


それに氷結姫に対してはいつも申し訳なさそうなシンヤとは対照的に、彼女は恋する瞳でシンヤを見ている……と思う。

シンヤに関しては私は少し恋愛脳入っちゃってるからちょっと自信ないけど。


それでも、なんとなく怪しいと思う。

もしホントなら大変。

あんな綺麗なセンパイにせまられて落ちない男の子なんて…いるのかな?


でも、仮にそうだとしても私も負けるつもりはないから。少なくとも好きの年月と重さなら負けないって胸を張れるしね。



私は決意を胸に今日もおにぎりを作るのでした。

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