嫌われ者の我空(わがぞら)登場
前々話の分割2です。
バシャン! 周囲の空気が突然変わる。
「ん?」
休み時間なので教室の戸締まりは適当で関心がない。
僕だけかもしれないが。戸口が開けっ放しか閉まっているかいちいち気にもしなかった。
わざとらしく音をたてて自己アピールをするのはいつもの奴だ。かまってほしいのだろうか。単に品がないのかもしれないが誰もが注目するほど大きく音をたてるのをどうにかしてほしい。
「あいつ、よく来るな。昼休みでもないのに」
ブドさんは他意がなく、思った通りに口にしたという感じだ。僕の場合はげんなりするほど苦手な奴なので、とりあえず教室から逃げたい気持ちである。相手がいないと寂しいとは言ったが例外もあるんだよね。コイツは特に。
となりのクラスの奴で顔しか覚えていない奴。という設定にしたい。が、気持ち悪いほど僕とブドさんに会いに来る奴。
『おっ、満と真西さんの追っかけだぞ』
「知らない、知らない、聞こえない」
「お前、聞こえないって誰も何も言ってないぞ」
素でブドさんは言う。どうやってエア子さんを説明しろという。
毎度の事ながら人の名前を覚えていない僕だけど。奴といったので男である。見た目というか男を形容することがどうでもいいので表現しない。嫌いだし。
想像に不便だろうからそれでも風貌を述べる。顔の作りは悪くないのに品性を感じられない。変な空気をまとっていなければ女の子にモテる容貌はしているかと思うんだけどな。三白眼だけど。
不良というよりかは態度がでかい奴。なんか、わざとらしくチャラチャラしていて悪ぶる。表情が眉間に力をいれている。いつも、そんな印象。嫌われ大王。
本人のクラスでは相手をされないのを自覚しているのか、いちいち、僕たちに近づいてくる。だけど、僕のクラスもドン引きしているよ。
「よう! 我空、騒がしいな。そっととは言わないが変に音を立てるなよ、周りが白い目で見ているぞ」
「そんな、名字だっけ?」
そうそう、我? そら? って、名字だったかな? 重要じゃないのでメモはとらないよ。奴はブドさんの配慮もきにせずに『うっせ!』といった顔付きをした。
「どうでもいいだろ? それよりな、葡萄か満、現社の教科書を貸せよ」
「いや、俺達のクラス今日は現代社会がないぞ。他のクラスをあたってくれ」
「ブドさん、それは苛虐でしょ。この人、誰も友達いないから当てがないよ」
「お前も似たようなものだろ……。つうか、苛虐かな~、言葉の使い方が変だぞ。酷でいいだろ。それでもって俺は別に悪いこといってないぜ」
奴はブドさんとのやり取りを顔の筋を引き吊りながら凝視している。多分、怒っていているのだと思う。僕からすれば人目を感じて生きているから、人を直視ができなくても、その人間が持つ空気を感知できる。
そして、いつも悪態するのはアピールである。構ってボッチである。構わないでボッチと対極にあたる。
怒る理由は僕みたいにモブ扱いだと思うが違うかな? まっ、僕は実際に鈍感、鋭いときもあるが……鈍いで通っているので勘違いでいい。関わりを持ちたくない奴だから危険人物に興味はない。
「はあ? クソが! つかえねぇ奴らだな。死ねよ」
で、学校にいる以上、困っている人間=危機と遭遇する。人助けは苦難をあたえられるのを思い出す。日常は危険を常に孕む事を再確認する為に奴はちょうど良く来てくれたものかもしれない。つうか、お前が死ねよ。
「そ、それより君さ、僕の貸した美術の教科書を返してよ」
面倒を思い出す。
危険な関わりとはいえ必要とする物。美術の授業は選択で周に一時間しかないのであまり困らないのだけど。数日たっても返してもらっていない。催促もしていないけど。だって、他のクラスなんて近づけないもん。怖いもん。間違って迷い込んでいるけどさ……。
いつぞやクラス間違って入った時には、ちょうど僕の席と同じ位置にある空席を勘違いして座り、十数分くらいくつろいでいたら、席の主に変な目をされたけどね。そのくらいしか他クラスには行かない。
ちなみに、四月初めはそのクラスの席間違いを2回やった。名前知らないけどごめんね、無名君。今はエア子さんのツッコミがあるから問題ないよ。って今日もクラス間違えたけどね。心に耳栓してエア子さんのツッコミをスルーしたらこのざまだけどね。
他にも、癖で一年時の教室と席の位置に座ったし、高校入りたては、間違って、中学の母校に通ってしまい追い返されたけどね。誰にでもあるよね? あるわけねぇだろ。死ねよ! が返ってきそうで憂鬱。
そういえば中学の修学旅行の時は他校の生徒に間違ってついて行ってはぐれたな。誰も相手しなければそうなるって一人ボッチはそういうもの。違う? 違うだろうな……。さておき。
『満は~! 名前を覚えてない人に貸し借りするのか……。馬鹿だね~アタシは名前ぐらい知っているぞ! 満ぐらい変わり者で有名だから耳にするからな。あと、奴はストーカー』
「知りたくない。聞こえない」
エア子さんは僕にツッコミをいれると思ったよ。名前を知らない人だって関わるじゃん。僕は悪くないじゃん。
僕は大抵名前の知らない人と接するんだよ。ある意味勇者でしょ。勇者だって一々殺してきたモンスターの名前なんて覚えてないでしょ。いや、それじゃただの野蛮人か……。
「エア子さん、割ってはいらないでよ。押しに弱いから断れなかったんだよ」
『人間が弱いな。しっかりおし』
「僕の意思だろ。いいでしょ、責めないで」
『責めていないだろ』
「何をぶつぶつと呟いている。狂っているのか? 一人会話ってありえねぇな! 暗い奴だぜ」
わ、なんだったけ? いや、わめ! 暴言を許さない! あ、思い出した。我空か……。
しかし…。
「………」
これには返す言葉がない。もともと、そんなに奴と喋れないけどね。まぁ、はっきりと僕とエア子さんのやりとりがわからないと証明されているのがわかる。
「あん? 我空わかってないな。満の秘密の彼女だぞ」
「ブドさん、エア子さんは友達だって言ったでしょ」
「……ワケわからんが妄想彼女か?」
侮蔑した顔で見られる。耐え難いので話題をもどす。
「もう、いいでしょ? 現代社会の教科書はないから、戻って下さい」
「だが、断る。満、テメエが自宅に帰って持って来てくれよ! いいだろ?」
無茶を言ってくれる。僕は奴の手下ではない!
と、ブドさんが強く言を発してくれないかな……。
しかしながら、僕がいつもこういうヘタレだからブドさんは察して頑張れよと言わんばかりに僕を見守る。
期待の目だ、頑張れ、満! と。嫌だ、いつまでも甘えていたい! が、言う分は言わないと。
「む、無理かな~。時間が……」
この程度です。いいじゃない、主張したよ。
「家、近いだろ? 走れば間に合うだろ? 行ってこいよ」
僕の住まいを知っているのかな? キモイな。
で、なんだか、カツアゲみたいだな~。見兼ねたとばかりにブドさんが嘆息してから助太刀してくれる。
「我空、その辺にしとけよ。お前が忘れ物をするわけがないだろ」
「え?」
どういうことだろう? つうか、僕は話次いでに美術の教科書を返してほしいと催促の代弁を願う。頼む、ブドさん!
しかし……。
奴は、バツの悪い空気を醸しながら言い返す。思惑通りいかないからなのか?
「んだと~! コラ。 本当に困っているのによぅ。俺のことがわかっているつもりなのか? そうか! 俺の私生活しっているのか? ストーカー並に惚れているのか? ああ!」
そんな風に言うか! お前こそ、教えてもいないのに僕の寄宿先つうか、兄さん宅を知っている感じじゃないか。やめてほしい。困ります。
***ここ重要***
ブドさんの愛は女の子に向きます。友情は僕だけに向きます。
で、思うんだけどさ……コイツ悪態があまり上手くないと思う。『調べればわかるんだから見せろよ、荷物をよ。拒否権なし』とかかな。イマイチか僕が脱線思考していると………。
ブドさんが堂々と我空に話す。
「お前を執着する気なんてないな。とある筋からの情報だ。わかるだろ? 困らせるなよ」
奴は間を置き、閃きも見せずにいたが、ハッとわかったようなそぶりをして苦々しい顔をする。ブドさんは何も悪くないのに唾棄にも感じた眼差しで奴は罵る。
「ちっ、マッチョレズが……」
奴がブドさんを馬鹿にして言う時の呼び方だったかな。だけど、この場で使うのはよくわからない。
ブドさんは結構鍛えているからな~。だけど、良いお肉でプリプリしているけどな~。と噂される。僕がさわれるわけがないでしょ!
あ、僕もわりとプリプリしてたわ! どうでもいいわ!
「まぁ、待てって。手はだしてないからな。たまに話すし相談をされているからな。ちょっと口説いたけど」
こういう内容は女絡みだ。女絡みはマッチョレズと罵しられるね。ディープではない(はずだ)が、中身が男に近いところがあってブドさんはよく女子を口説くのは説明済み。
ちなみに僕とは中学の頃から女子の好みに語らいをすることがある。なんで? 男女で? だよね。
だけど、現実こと三次元の美醜にイマイチ乗る気がないんだよな。だから、ブドさんは僕を二次元ボケと思っている。確かにそういうところあるけど現実も大丈夫だよ。イケますよ。現実の人間が怖くて対象にならないだけ。……だと思う。
反撃してブドさんに百合ですか? レズですか? と問いかけたら殴られた。なんで? なんでなんだよ。
「あいつをテメエがどうしようがどうでもいいけどな。俺を探るな」
やだ、男女の拗れた話?
もしかして、ブドさん男女の関わり合いを裂く間男ならず間女? 調べたら、そういう言葉があるので驚き。授業中調べていたのを見つかって怒られたけど。思春期の下らない辞書調べって大人になって博学になるとおもうだけどなあ。……ならないか。
ブドさんってそもそも形容しづらいけどね。女らしいところふつうにあるけどやっぱり男の思考かい! って、あるものなあ。
唯一の友達がブドさんなので執着してしまうんだよね。度が過ぎるって自分でも思うけど。それにしても、我なんたらって……また、忘れた、奴にも彼女でもいたの? あんなのに? だったら、そっちに頼れば?
「あの娘とはそういう話題になるんだよ。お前も成長しろ! 満だって少しは人に慣れてきているんだぜ」
そうなのかな? 人に慣れる自覚なし。それよりかは我なんたらとブドさんの女性関係が気になる。
「どういうこと? ブドさん」
また今度なって相槌をされる。少し気づいたけど肝心なことを忘れているような……。奴が言う彼女は気になりはするけど……。
「お前がどうしてもと言うならなあ、俺が別クラスに頼んだっていいだぜ? お前は持っているから無意味な行為だけどな。だけど、時間だぜ?」
なんだかんだ話に夢中だったかも……。数学教師が腕時計を見ながら落ち着かない様子でいる。涙ぐんでいる様にも見える。
つうか、どこかで見たような顔、学校の先生だから知っているとかそういうことじゃなく……。
さておき、忘れていたのは時間か……。
「じゅ、授業が始まっていますよぅ。お話をやめて席に座ってく、下さ~ぃ」
二十代半ばの女性教師で引きこもりから復帰したと噂される人である。名前は忘れたけど。
そんな人を教師として雇うのが謎であるが……親しいものを感じ好感をもてる。
『なんだか頼りない先生だねぇ~。大丈夫かい?』
「エア子さんは人の弱さをもっと知るべき」
『気が弱いだけだろ。満はこういう大人にならないよいに反面教師として見るんだぞ』
なにそれ? ギャグなの? なんて返さずにして真面目に席にすわる。ブドさんも黙って席に戻るし、奴こと、わ、なんとか……我空か、奴も舌打ちしながら教室をさる。多分、平穏に二時限目がはじまった。
改稿、分割しましたが違和感などありましたら教えてください。
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