んちゅ✩ あうあうあうあうあうあうあう ヤメろー!
「あううぅぅう!」
梨園さんことルヒュールはωさんこと新亜さんに対峙しているかのようだ。なにが気に入らないんだろうか?
険悪というよりかは焦っていそうに見える。僕が(キラキラウェーイ! ミ★)をやらされることが知らされて催促でもしに来たのかな?
「魅了の術を使っている悪魔の情婦に気をつけて先輩いやゴッデビル!」
そういうえば僕はゴッデビルって二つ名で呼ばれていたよ。封印して下さい。
「何それ? 誘惑でもされたってことかな? バカな。ないよ、そんなことはね。そろそろ向かうところだよ」
本当は否定できないけどね。
新亜さんってイマイチよくわからない人なんだよな。ビッチかともおもったけどさ。思わせぶりにも感じたけど、そうでもないように思える。
彼女なりの感性とういうか、大切にしている世界観があるのかな。そういう部分を心許してみせてくれたような感じがする。憶測だけどね。
もともと、敵対していたわけでもない。今まで顔合わせはしたけど、こうやって仲良くする機会がなかっただけだと思う。
だけど、梨園さんは食らいつく。
「違う! 妖魔の気を感じてもしやと思って引き返したら、人間の皮をかぶる悪魔とは……先輩とはいえ、私が来なければ危なかった」
助けてくれる自信がたっぷりなのかな? 身内の店で暴れるのはよしてくれると助かるな。
「もし、危険があっても回避できる能力ない僕なので助太刀してくれても変わらないよ」
でも、聞いていなさそう。彼女の周りには毎回言う意味のない言葉『あう』が多数吹き出していそう。
『あう』『あう』『あう』『あう』って感じだ。
「危険な女なんて……。罪な私。もう、パーフェクトガールだね✩」
どっちも何を言っているんだ? あと、覆面しながらいるとバカみたいに自分を感じる。ああ、いったん脱げばいいのか。
「よ、ようやく呪いがとけてゴッデビルが正常になったか……。前よりカッコ悪くなってしまったけど」
それは、素顔を隠していた方がマシということかな? 失礼じゃないかな?
「梨園ちゃんだったかな」
誰に対しても距離が近い接し方だな。この人は。このくらいじゃないと自称アイドルはできないか。
「私の人間としての名を知っているとは……警戒に値する。久しぶりだよ、魔界対戦以来だ」
そりゃ、同校なんだから調べれば知っているでしょ。つうか、人間ではないのね。君は。
あと、人間じゃない方の名を知られるほうが問題じゃないのかな? 中二力がまだまだだな。で、僕は人間の駄作だけどね。だけど、人間のほうがいい。人外は嫌。
「う~ん、梨園ちゃんじゃなく杏ちゃん。可愛いね、私の次に」
「か、可愛いだと! え? えっと~あう~」
簡単に言葉が出なくなっているよ。単純だな~。
しかし、新亜さんは何に対してもかわいいですますな。このままだと汚物を見てもかわいいとか言いそうだぞ。
別に梨園さんがブサイクだと言っているわけではないからね。ちょっと目つきが鋭い感じがするけどあとは緩い感じのかわいい娘だよ。一応。
『おいおい、どうしたんだい満、遅いぞ』
「ビックリした! エア子さんか……。まあ、色々とあってね。言葉を返すけどエア子さんがコミュしてこいって言ったから遅刻になったんでしょ」
『そうだな、悪い、悪い。どうも満を気にして過保護にしてしまう』
「それよりさ、見て! この色紙」
『なんだい? どれどれ』
「ジャーン! 新亜さんがエア子さんイメージを描いてくれたんだよ。どう思う?」
『嬉しいねえ。アタシそっくりだよ』
そっくりって無色透明な自分の姿がわかるの? まあ、気に入ってもらってなによりだね。
僕がやったことではないのにハッピーな気分にさせる。人に見られることは怖いと思っていたけど、感動もあるんだね。
『真! ありがとな』
「新亜さん、エア子さんが似顔絵ありがとうって言ってくれているよ」
「え? 今いるんだ。どういたしまして」
『これからもよろしくな!』
「よろしくだって」
「うん、よろしく。嬉しいな。エア子さんに返事がもらえるなんて。そこは私、美の女神のみぞなせる業だね。神々しくて輝きがまぶしー✩」
後半、何を言っているんだ? でも、エア子さんに仲良くしてくれるのはいいことに感じる。僕も心境が変わるものだな~と思う。僕一人が誰も認識できないエア子さんと話をしてもがいていたが、嘘のようだ。
「あう~、置いていかないで、危うく淫らな女に騙されるとこだったがこんな危険な女に満先輩は近づいちゃダメ。先輩の相応しい死に場所は私がつくるの!」
「死に場所って……。なに、物騒なこと言っているの? リリスだったりハーロットだったりごちゃごちゃだし。あとね、ハーロットとかそういう名前つけちゃいけないよ。売春婦とか意味があるから…」
僕もωさんとか失礼な呼び方をしていたので棚にあげて注意しちゃったかな?
「梨園さんも見てくれないかな。ジャーン! エア子さんの顔」
「バカな魔女め、先輩の闇人格を念写したか……こいつは危険だ! くらえ、ダグザの棍棒!」
なんで、マイクを持ってきたのか知らないけど梨園さんは新亜さんにマイクで殴りかかる。ダグザって今度はケルトネタですか……。
パシ! 打撃音はせずに新亜さんは梨園さんの手首を掴む。こういうのって簡単にできないんだよな。
ちょっと家系の武術をやらされたことがあるからわかる。まあ、子供の時に学校サボっていたらやらされただけだけど。で、僕がポンコツだから難しいと思ってしまうだけかもしれないけどね。
「バカな、通じないとは……くっ、離せ」
「だ~め、杏ちゃんは、かわゆいから。私の次にね。うん、サービスしちゃお✩」
ωからεまたはЗに変わる。
んちゅ✩
そのまま、キスをかましている。この人は百合かバイなのかな。
「あ、あう……」
梨園さんは照れるか、嫌がる素振りもせず倒れこむ。ショックだったのか眠りにつく。気絶しちゃったのかな。だ、大丈夫かな?
「……あ、積極的な淫女……怖い」
などと、うわごとを言っているので、多分大丈夫でしょう。メンタル以外は……。
『満よ、新亜さんはもしかしてバイセクシャルなのかい?』
「いや、多分だけどナルシストなんじゃないかな……」
「杏ちゃんを気持ちよくさせちゃうんなんて罪な私。大サービスしちゃった✩」
悪気がまったくなさそうだ。何千年も世界を救ったというルヒュールより最強な彼女だ!
今後、僕にもそういうことをするだろうから気をつけなければね。だけどそこまでの魅力は僕にはないだろうからセキュア(安全)だと思うけどさ。でも、災害はいつおこるかわからないから。
でも、僕は自己セキュリティーの能力なしだから運命をともにするしかないけど……ね。なので、大丈夫だと思うことにしよう。怯えてもしょうがない。
悶絶してうなされている梨園さんを近くの椅子に寝かせてしばらく様子をみることにした。




