友達のいない会って何?
放課後になった。今日は色々とあったけど、まだ苦労が継続される。普段より喋って疲れている。カラオケなどと言う誘いを避けてこのまま直帰にできないかな。だけど、逃げ出すには既に出遅れである。
もう、その話題に突入しているのだからね。
僕の机でバンバンと叩きながら主張する女の子がいる。皆がジロジロとみているのでやめてね。
「魔犬のエサと同行とは血迷ったの? 先輩! 送還を要求するぅ」
どちらかと言えばファンタジー世界の住人思考の娘だろうから、召喚の反対で送還って言ったのかな?
言葉が正しいかわからないが、僕は召喚士ではないので無理です。
魔犬のエサこと、我空は気にせずというより、その不名誉な二つ名が意味わからずのよう。僕もわからないけど。
魔犬のエサが元に居た世界ってなんだろうか? 魔界の牧場かな? なんて、どうでもいいことを考えていると……。
「満先輩! 聞いている? いや、ゴッデビルよ」
「聞いているよ。向こうから一方的に誘ってきたんだから、こっちだってさ、友達(疑問)の一人呼んだって悪くないと思うんだよね」
「友達?」
三人同時でハモる。
全員、同感なのか……なんなの? この集まり。ボッチの僕、はぐれものの我空、中二病の梨園さんことルヒュール……ダメ人間の集会かな? これ。偏見でしかないが的はずれでもないような。
「梨園さん、仲直りもかねて我空と同行でいいかな?」
「ぅ~。魔犬のエサが心変わりして謝罪しても断罪されないの。軽々しく秘した書物を読み上げた罪は重い。永遠に魂は浄化されない」
「何を言っているかわからないど……。一度、我空に心許して預言書? ラスト・ウィッシュ? を見せたんだから、もう一回心を許して深君を同行許可くれないかな? ねぇ、深君」
「は? おう。すまないとは思っている。面白半分に周りに言い広めたが誰も反応なしだ。もう少し、面白い妄想を書いたほうがいいじゃねえのか?」
反省してないだろこれはね。まぁ、内容がつまらないかは知らないが、多分は我空に誰も関わりたくないから広まらなかったじゃないのかな? 言わないけどさ。
『なんだい、なんだい盛り上がらないねぇ。あたしにラスト・ウィッシュっていうのを見せてくれないかい』
「だってさ」
「?」
「あっ、いや、エア子さんが読みたいって言っているけど、いいかな? ダメかな」
「先輩の闇人格なら、すでにわかるはず」
「闇人格ではないよ。本当に。エア子さんに見せればうんと誉めてくれると思うよ」
「ぅぅ~ん。う~称賛を得る為のものではないの。未来を変える為に戦う同志を導く書物」
中身がペラペラの我空あたりにみせた時点で、そんな大層なものではないと思うけどね。だけどエア子さんならバカにしたりしないしガンバレぐらいのエールで乗っかってくれるとおもうけどな。
それに、エア子さん自体がすでに超常現象として存在しているわけだから、僕としても笑ってからかうほどでもない。僕の方こそ状況が妄想より重い。
「いいから、見せてみなよ、エア子さんは物にさわれないから見開きは僕がするけどね」
「し、しかし」
「恥じない、恥じない」
「う~、恥ずかしいものじゃないもん。本当だもん」
羞恥より意地が増したのか、梨園さんは黒塗りのノートを渡す。
人を殺傷できるくらいの大きさだが、これ全部に妄想を募らせているのか……。頑張るな。こういうのって、後で自分が読んだとき、何を考えていたんだろう? と思ったり、なんだか笑えたりする。ま、自信しか楽しめないけどね。ひとりよがりだから。
「エア子さん。どこから見開く? 長いよ、これ」
『そうだねぇ、なんだか失礼ないいまわしだが、大変そうだな』
「よく、読書は始めの二行がつまらないと駄作的なイメージがあるじゃない。最初の一文からいく?」
『お前は当人を目の前に言い方がわるいな。気をつけなよ。梨園さんが不安そうに見ているぞ』
「本当だ。顔の作りは怖いのに。なんだか可愛いな」
「あほー! あほー! 早く読め」
半泣きで急かすものだから、とりあえず一ページを見開く。
「なんだ? 児戯のような絵は何かの生き物か? キモいな」
「あれ、深君は全部読んだんじゃないの?」
「あ? 気づかなかっただけだ。何のクリエイティブな幻想生物かしらないが臭そうだな」
「うぅ~!」
「ちょっと、やめてよ! 深君。梨園さんの心が折れてしまうよ」
『確かになんだかわからないねぇ。満はわかるかい?』
「え? 翼が生えているから天使?」
「は? 蛇だかなんだか知らんけど、うにょうにょしているぞ。とぐろ? う〇こ、アナコンダか?」
まぁ、う〇こ生物なら臭く見えるけど。多分だけどさ……。
「まぁ、天使って人間の姿とは限らないから……だよね?」
「ぁ、ぁ、あう。」
多分、そういう意図みたい。
「なんだ? 使徒、トグロエルとかか?」
「そんな、使徒はいない」
「俺はアニメを観ない」
「そういわれても知らないよ。でさ、うんちくの話をするなんて馬鹿臭いけど蛇に翼が生えている天使とかあるんだよ」
「死ぬほど興味がないな。満が死んでおけ」
「あぅ、それ、ドラゴン」
「え?」
勘違いか。失礼なことしたかな。でも、思うんだけど……。
「つうか、本当にドラゴンなのか? なんで見出しに出てくるんだ?」
「きっと、単に好きだからのりで書いたんだよ。僕は経験者」
「ち、違……」
「興味がないけど言うが、願いの本とかいうのが設定なんだろ? ドラゴンだろ? パクリだよな? つかもうぜ?」
「自分で楽しむにはグレーゾーンだよ。ね?」
「ち、違」
『おや、満よ。梨園さんが何か言いたげだぞ。聞いてやりなよ』
「わかったよ、エア子さん。気が利くね」
全部、見終わってから感想を述べるから、そこで訂正すればいいのに。小説ではないが……。
僕なんか誤解を解消する権利をもらえるときなんてそうはない。喋れない。我慢、我慢。忍耐こそが真理。主張しないことが教化するより大切なこと。……じゃないかな……違うか……。
「梨園さん、僕達の脳みそじゃ内容に理解がおよばないところがあるから説明しながら進めてよ」
「言っておくが俺が馬鹿だからじゃないぞ。満は馬鹿だがな」
「余計ないいまわしはやめておこうよ」
「知るか、で、そのトグロ何だ?」
「混沌を生みしブラック・ドラゴン、混沌玄龍。あの時は闇しかなかった……懐かしい」
「ああ、そういう設定。オリジナルな名前だね。聞いたことないね」
「どうでもいいわ、次」
「ちょっと、深君、梨園さんが3時間悩んでつけたキャラ名をあっさりと片付けない方がいいよ」
「だってよ、だから何だとしか言いようがないだろう? それより、3時間ってなんだ?」
「自経験からの推測です」
「なるほどって言葉がでるわけねぇな」
僕達の会話が梨園さんに不快にさせたのかいじけているように見えるので、脱線せずに梨園さんに進行してもらうかな。
「なんか、すみません。そのトグロエルじゃなく、フレ? フレー、フレー」
って、エールになってしまう。
「フレーゴ・カポリウスだ! あほー、あほー」
「ごめんなさい、フラミ…ゴゴゴ」
『フレーゴ・カポリウスだぞ。満。お前は相変わらず記憶力がないな』
「そんな本人しかわからない名前なんて覚えられないでしょ」
『わかったぞ満。お前は読書する時も人物の名前を覚えられないだろ?』
「そうだね。ルビとかも忘れてページを往復して読み返したりしていると面倒。だから感覚で人物をおぼえているね」
『何で覚えられないんだい?』
「何でと、言ってもな……。印象にのこらないからかな」
『印象ってな……。先週に満のボケを治すために日記を書かせたよな。何時間かけても、空白。お前は毎日、何も心に残らない生きざまかい?』
酷い言われようだね。
「そもそも、一日の行動を人に読まれるのが抵抗あるんだけど……」
『だいたいはあたしと一緒だろ。恥ずかしがることがあるのかい?』
其れ自体がばつが悪いんだよね。ホント、勘弁してよ。
「話が脱線してない? 今は梨園さんの事をふれてよね」
『そうだったな。悪い、悪い』
「満がやっている奇行の方がトグロエルより面白いぞ」
我空もちゃちいれないでよ。
実体なきエア子さんとの会話が面白いなんて端から見ないとわからないけど、今は梨園さんがテーマ。梨園さんの立場はどうなるの?
「あほー! フレーゴ・カポリウスだ」
「そんな、造語なんぞは、アホの満でなくても覚えられねえな」
我空はそう言うが……。その通りです。
『アタシは覚えたぞ。で、この竜はなんだい?』
エア子さんのそろそろふれたい皆の疑問を代弁する。と、いっても僕が口にしなければ伝わらない。
「この、竜を見出しにのせるにあたってなにか意味があるのかな?」
「ククク、私と共に何十世代とわたって転生を繰り返した盟友にして師である。破壊と創造の主」
「ふ~ん。そういう設定」
「なんだ、こいつも満といっしょで友達いないのか? 想像上かよ」
「深君だって、友達いないでしょ?」
「俺の場合は下僕しかいないんだよ」
何言っているんだ? こいつ……。
「いや、下僕もいないでしょ。関わる人間がいないでしょ」
「なめんな! 下僕を幾人か呼ぶから待っていろよ」
「いや、いいよ。面倒になるだけだからさ。見栄を張らなくていいよ。僕だってボッチだし」
嫌な会話だよ。お互いに自傷しあっているだけじゃないかな?
『おやおや、満達は友達のいない会になっているけど、ちゃんといるじゃないか』
なに、その友達のいない会というのは、ヤな会だな……。
「エア子さん、いるにはいるよ。深君除いてね」
『卑屈な会話になるから、さらっと流しな』
「卑屈な話が好きだからな~。どうしようもない」
『お前はどうしようもない奴だな。だいたい、満達3人はもう友達だろ?』
「そうなのかな……?」
『アタシはお前達3人をダチだと思うぞ』
それ、一方的だと思うよ。僕としか会話できない存在じゃないか。まぁ、でも尋ねてみる。
「梨園さん、深君」
「なんだ?」
「ククク、ゴッデビルよ! フレーゴ・カポリウスのことか?」
「ごめん、それ本気で覚えにくい。じゃなくて、エア子さんが二人を友達だと言っているんだけど、どうかな?」
「どうかな? って……お前の芝居キャラに付き合わされてもな……。お前の世界だし勝手にしろよ! キモいがな」
と、言いつつ。我空はエア子さんがナンタラとぶつぶつつぶやいている……。気味が悪いね。
「ククク、闇人格と盟友か心強い」
「だってよ、エア子さん」
『聞こえているさ、確認するってことじゃないだろ! 満はバカだな!』
怒られてしまった。親切にやったのにね。
少し精神がなえていると、突然電話のコールが鳴り響く。誰? 誰の携帯?
「ククク、暗号とコードネームを言え! え? 違う。 悪気じゃないもん。切らないで」
ぷつーん、何を言われたかは知らないが、明らかに電話が切れた音だけは僕からも聴こえる。
「しょぼーん」
「デス葛さんでしょ? 普通に電話しなよ」
『満よ、葛守さんなれたからって串カツみたいな変な呼び名はやめな! 失礼だろ』
「いや、串じゃなくてDeathだって、デス。」
『そういう訂正はいいんだよ』
「あ、ぅ」
『ほら、満よ、梨園さんが何か言いたがっているぞ。聞いてやりな』
「わかったよ、エア子さん」
なんだか、めんどうくさいやりとりだな。
「バカ言っていると話すことないと言われた。ぅぅぅ」
「大丈夫でしょ。メールかライン? がくるからさ」
「本当?」
「本当、本当」
自分も、身内にごちゃごちゃと電話で鬱憤はらしている時に途中できられる。後の用件はメールでのやりとり。ラインはやる相手いないのでやり方がわからない。でも、困らない。でも、スタンプしたい……。
ちょっとした間があったが梨園さんの携帯に着信音が鳴る。
また、電話か……。
「くくく、こちらはシークレット オブ シークレット。汝、正しき名を言え、然らば、道はとざされん。………、うん、うん、ごめんなさい。ふざけてないもん。邪悪な意志をもつ……え? 嘘じゃないもん。本当だもん。………え? 変われって? いいもん、わかったよ。変わればいいでしょ。あほー」
普通にしゃべってくれなきゃ長引きそうだよね。相手の声がわからない会話って不思議だな。ボリュームの問題で聞こえる場合はあるけど。梨園さんは耳が遠くなる年でもないし。
で、僕とエア子さんとのやりとりも電話に近いのかな? ブドさんも隠れて通信しているように勘違いしているし。
変われって……僕に梨園さんが携帯を渡そうとする。人の携帯で会話するなんて初めてだよ。
呼吸が荒くなり緊張してしまう。電話越しでも人を恐れるとは僕はどこまでも臆病者なのか。
『ちょっと! 先輩キモイ! 興奮しないで下さい! 変態ですか?』
「その言いようは……酷い」
「はっ、満の臭い息が届いたのか?」
我空は笑うが匂いが伝わる携帯はない。……と思う。それと、デス葛さんも少しは気を使って欲しい。
『何言っているんだい我空は! 満はな、一日、三回、五分ずつ歯磨きさせているんだ。臭いわけがないだろ!』
エア子さん、ガチでフォローしても聞こえないって。そういうことではない。しかし、我空は臭いとか死ねとか言うのが好きだな。
『先輩聞こえていますよね?』
「僕が変態ということ?」
『単に声が聞こえていますか? 馬鹿ですね』
『満よ、電話でいやらしいこと言っているんじゃないよな』
「エア子さん、まだ喋っていない」
『エア子さん? そうだ! 先輩のエア子さんは電話なら会話できるか試してみませんか? 話しができたら嬉しいです』
無理でしょ。多分。やってみるよう頼むけどね。
「エア子さん、デス葛さんが電話で話したいって、ほら」
「それ、私の携帯! 使い回しをすんなー! アホー!」
確かに、でもやる。考えてもいなかったが、できたら新発見で僕の妄想エア子さんが誤解だと証明されるからね。二回目、多分、無理だろうけど。
実体がないと思われるエア子さんが何処の位置にいるかはわからないが適当に携帯で話せるように空にむける。
『おーす! 香美菜』
『?』
やっぱ無理か……。
『先輩、今なんて?』
「おー……。こんにちはって」
『聞こえないか、でも気とでも言いましょうか。何かを感じました』
「そうなの? 変に思わずエア子さんを受け入れてね。エア子さん喜ぶから」
『当然です。で、杏じゃ、おつかいできないだろうから、私たち勝手にカラオケ屋にいます』
「え?」
『来てくださいね。これは強制ですよ。リヴァーニャって言えばわかりますよね。先輩のところ』
「知っているの?」
『私の情報網を舐めないで下さい。先輩のところに桃萌のお兄さんがいることも知っていますよ』
我空のことか……? 視認せずに得る情報。僕を見守るエア子さんより怖いな。筒抜けって感じで。
『皆で来てくださいね。一番広い部屋をとりましたから』
「拒否権は?」
『付き合いを重んじない奴は……』
あっちゃー、それ母さんの台詞だよ。無視すると鉄拳とタバコの根性焼きされるからあきらめるか。これって虐待? それにしても、家族ぐるみで巻き込むなだよね。
「ってことで皆、これからカラオケしにいこうね」
「あう?」
「構わんが、何故テメエがきめる?」
『いいじゃなか! 楽しもうな』
「じゃあ、決定。下校しようか」
腑につかない、梨園、我空二人。だけど、僕について来る。僕並みに意思がないな。無視すればいいのに。もしかして、楽しみでいるのかな?
教室を出て下駄箱へと向かう。そういえば、ラスト・ウィッシュとかいうノートの続きは? まあ、また後でいいよね。時間はあるし。まさか、カラオケルームで読む羽目にならないよね?
しかし、その思惑とは違い困ったことに校内放送が流れることになる。
構成書くと力尽きるので脳内プロットで突き進んでいます。勢いだけはあるんじゃないかなと己惚れてます( ´艸`)




