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女子とエンカウントすると恋の始まりになるわけがない

自分の教室へと帰る。僕はほふく前進したまま進む。

 

 ビビって壁伝いで来た時より酷いかもしれない。誰も見ていないからいいけど。

 

『なんだい、なんだい(みちる)、情けない格好は』

 

「エア子さん、今日の僕は頑張ったと思うんだよね。知らない下級生と会話しする。ボッチには不可能領域! 目的がごちゃごちゃだけど上手くいったと思うよ。多分ね。だから、少しくらい多目にみてよ」

 

 目的なんてないコミュ障害のボッチ療法の荒療治だな、これは。

 

 先ほど(クソ長い6話)できごとが別につまらないとまで感想にしないけど。

 

 これから僕は、バカ丸出しで付き合いをしていくことを考えると辛いな……。まず、僕を平均値知能にするべきでは? 僕自信、無理だとおもうのが切ない。 

 

『満は気合がたりないな! ふらふら、ぐねぐね、いじいじしてみっともない。加えて自信がなくてはっきりしない。だから、明朗闊達できず愚図になる。本来あるべき能力が出せないのさ』

 

「僕の本来の能力? マイナスな面しかないよ。そもそも、負の要素が特技なんて言わないと想うけどね。」

 

『全く、こいつは……』

 

 まあ、こんなやりとりしながら体を這いずり移動。確実に前進しているが、これは午後の授業に間に合わないな……。

 

 エア子さんに実体があれば肩でもかしてくれるのだろうか? いや、自力で歩かされるな。

? 影が見える。 

 

「邪魔よ、どいてくれないかしら」

 

 僕に見えるのは足の先とスカートの先のみ。厳密にいうと他も見えるが別にパンツを覗こうとしているわけではない。パンツまでは見えないし……。


 挿絵(By みてみん)




「はい」

 

 声の主は手を差し伸べてくれるのでつかみたいのだけどね。いかんせん柔らかそうな華奢な手なので気恥ずかしくてつかめそうにない。ちなみに僕も華奢だけどね。

 

 それにしても、今日は女子に関わることが多いな。普段は人間自体にかかわらないけどね。それにしても、風貌がどこか誰かに似ている。 

 

「ああ、ごめんなさい。避けるから」

 

 詫びながら僕は助けを必要とせずにズリズリとほふく全身しながら女の子を避ける。

 

「だから、邪魔よ!」

 

 僕は自力で避けようとしているのに女の子は僕の手首をグッと引っ張る。見た目とは違い力強いので勢いで僕の両足をたたせる。凄いな。 

 

「バカじゃないの? 邪魔よ」

 

 今日一日、バカ呼ばわりも多い。バカですけどね。

 

 女の子は顔立ちいいけど、キツいといよりかは気が強そうで三白眼。

 

 風貌はキツそうな感じなのに愛嬌がいいふりができるというか、ネコぽい感じがした。やっぱりどことなく誰かに似ている。

 

「ジロジロみないで気持ち悪い」

 

「す、す、す、すみません」

 

『満、ビビリ過ぎだぞ』

 

「だってエア子さん、怖いんだもん」

 

「エア子さん?」

 

 女の子は怪訝そうに僕に視線を送りながら、更に周囲を探る。懐疑の目はなくならい。

 

「誰もいないじゃない」

 

「すみません、すみません。なんでもないです。失礼します」

 

 僕は、歩けるだけの気力をだして、その子の脇を素通りしようとする。しかし……。

 

「邪魔よ」

 

 僕の進路方向へと立ち塞がる。なんというディフェンス。

 

 僕は注目されたアタッカーではない。通りすがりのステルス人間です。

 

 そもそも、偉大なる日常系ボッチの先輩方にステルス能力があるとされている。ステルスの次に呼称がある。

 

 僕で例えるなら隠密(ステルス)(ミッチー)のようなもの。先代は偉大だが、僕がステルスになりきるのは難儀である。目立たない奴は逆に目立つ。

 

 故にステルスミッチーはかなり高難易度のボッチの道を極めたものにしか会得できないと思う。

 

 あくまでも人とは関わらずの隠者(ニート)にならなければならない。

 

 隠者は学校にいかない。働かない。生活保護も受けない。死ぬしかない。その境地の極みで会得できるS級能力である。

 

 バトル漫画でもそうだ。

 

 気配なきところからの攻撃できるスキル。死線を分かち合った友のため、強敵に披露するとっておきのスキル。

 

 しかしながら、ボッチには友はいないのだ。相なれない最強ボッチと知られざる英雄。どちらも、認識されないという部分だけが共通。

 


 ? 

 


 で、なにが言いたかったんだっけ? 僕……。

 

 うん。現実逃避だね。妄想だね。自己流のうんちくだね。

 

「なに、ニヤニヤ考え込んでいるの? 気持ち悪い」

 

 ゲンナリされている。気づかないふりをしよう。妄想とは気持ち悪い表情をするものだよ。諸君。

 

 で続く。気配断ちとは人とのかかわり合いを避けるためにあるはず。

 

 なのに、エロ漫画ネタのように逆にかまってほしい変態ネタとしてもつかわれる。

 

 確かに存在感なし=ボッチ? は想像力は豊なので、孤独=ムッツリスケベかもしれない。単に透明人間ネタに使われがち……。

 

 故にステルス兵器は強引な考えとして変態兵器なのである。

 

 だから言いたいのは、こうやって妄想していないとやりきれない。

 

 通り道を塞ぐという意地悪を耐えるには妄想で打ち勝つしかないこと。

 

 ただし、僕には詭弁も思いつかないので、全く関係ないことを考えて悦に浸ることでしかやり過ごすということができない。誰か今のうちに助けて!

 

『満! しっかりしな!』

 

 ああ、僕には気配なき友がいたではないか! 本当になんにもできないけど……。

 

「エア子さんって変態だったんだね」

 

 声質だけはかわいい声です。 なんか僕を救える言葉でよがらせて! とは言えない。

 

『何を言っているんだい? こいつは』

 

 で、戻る。ゆえに、アルティメット(究極)ボッチでも道を阻む女の子に気配断ちなどてきないのである。


 既に、右や左に動いているのに通せん坊だ。僕をいじめないでよ。これは戯れではないよ。

 

「邪魔よ、退きなさい」

 

「そっちこそ退いてよ!」

 

 僕が右に向けば、向こうにしたら左に阻む。私達、気が合うかも~。じゃなく、向こうが楽しんで構ってくるのである。

 

 上機嫌そうだけど、なんだよ、面倒だな、この子は……授業に遅れる。

 

 健気な僕。

 

「厄介だ、窓から降りる」

 

 廊下の窓を開けて体操の跳び箱ように手をつけて飛び跳ねようとする。

 

「ちょ、ちょっと」

 

『コラー! 満、二階だぞ』

 

 エア子さんの怒声で思い止まる。前にもこんなことで怒られたけど……ショートカットでいいのにな。あれだよ、ゲームとかで重宝されるのにな。今は現実だけどね。

 

「忘れていたとはいえね。僕は二階から落ちても怪我しないから大丈夫だよ」

 

『満はどうでも良いところで勇気があるというか、無謀というか。本当にしっかりしろよな』

 

「人生で沢山高い所は登ったり、落ちたりを体験したから対処できるんだよ。このくらいの高さなら何も考えなくていい」

 

『大道芸でもしていたのかい? 屁放り腰(へっぴりごし)の満が』

 

「芸は身を助けるとかで、暇を見せると親に仕込まれたりするんだよね。このくらいなら対人するより怖くないね」

 

『凄い親御さんだな』

 

 さておき、三白眼の女の子が動じている様子。どこか冷静で落ち着いているようにもみえるが。知ったことではない。今のうちに通り抜ける。すかさずダッシュして去る。

 

『満、飛び降りる時は綺麗なフォームなのに走る時は女の子のような走り方だな』

 

 うるさいよ、エア子さん。

 

 女の子は唖然としてもいないが間に捕らわれている感じだった。虚をつくことはできたんだろうね。よし、授業に行けるぞ。しかし……。

 

「待ちなさい」

 

「嫌だ」 

 

「待って」

 

 僕は知らんぷりして走り去る。向こうだって暇じゃないはずだ。僕をいじらないで欲しい。

 

 大方、1年の棟に来たときから多少僕の顛末をみかけたのであろう。

 

 からかいのある奴だと思っての意地悪なのだろうが、相手をしてもつまらない。逃げるが一番。

 

「もう」

 

 そう、端的に言葉を漏らしたと思えば……。

 


「え?」

 


 瞬発的に間合いをつめて手首を捕まえられる。なにこれ、達人?

 

『早いな、またたく間だ。凄いぞ! 満』

 

 毎回、うるさいよ、エア子さん。運動音痴の僕でさえ、非凡な相手に見えない。

 

 なにこれ、分身の術でも使えそうなくらい早い、目にも残像しか残らない。いや、この物語はバトル漫画やアクション映画じゃないからね。

 

「何者ですか?」

 

「あなたのことは知っているから遊んであげようかなと思ってね。時間もないし名乗ってあげる。私は桃萌(ももも)

 

「! う~ん?」

 

「次は逃がさないから。それまでに私のことを調べなさい」

 

 そう、言って彼女は去って行った。

 

 しかし、思うところがある。どうして、下級生は僕に上目線なんだ? まぁ、僕だからこそか……。不本意だな。

 

 だけど、親しんでくれていると感じる……そういうことにする。

 

『凄い子だな、あれ我空の……』

 

「ごめん、エア子さん。遅刻するから」

 

『そうだな。満、急ぐぞ』

 

 僕は、おもいっきり走った。運よく先生には目撃されず注意はされなかったけど、五時限は教師より遅れてからの入室だった。

 

 なので、五時限も地味な存在なのに過酷に生きていかないといけないことを戦慄する。

 

 また、目の敵だと思うよ。 トホホが続くね。

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