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出来の悪いイベント 目的は何? 

今度は長い(^_^;)

お付き合いおねがいします。

おもしろいはず! おもしろいよ( ´艸`)

 ガラガラっと戸を開く。誰も廊下で僕が奇行じみた行動をしていたとは気づいていない様子だ。変態さんいらっしゃい! と歓迎されることはなさそうだ。

 

 でも、気が重い。ビリビリとプレッシャーを感じる。自閉症人間(みちる)を、明るく愉快な満さんに変えなければならない。

 

 しかし、僕はモブ以下のキャラだ。無理だ。そんなものは天に選ばれし者だけだ。

 

 でも、天に選ばれてはいないが、僕は特殊だ。

 

 僕にはプラス2・5次元人間がいるのだから。声優でもないのにね。エア子さんの事だよ。

 

 誰も感じ取ることはないけどね。せめてきゃわいい声だけでも届いてくれ! おばちゃんぽい口調だけどさ……。

 

 僕を一瞥する人間もわずかで知らない奴が入って来ようと気にはならないようだ。

 

 嬉しい限りです。空気のようにどうでもいいと思われたかもしれない。変人、奇人扱いよりはいいです。

 


 しかし、皆さん呼吸するでしょ? 空気は大事だよ。

 


 でも、なんだか皆さんは微妙に僕を近づけさせない空気をだしているような……? 

 

 まぁ、僕は日頃の行いと新聞部掲載のサイトで有名だしね。

 

 今日も学内で時間つくってパソコン室でエゴサーチしたよ。社会デビューしてないのにね。

 

 見出し、今日も息野(いきの)先輩は登校中に池に落ちる。そしてその様の動画……。

 

 いいねが百を越えていた。何これ? 誰かこれをとめてくれない?

 

 僕が卑屈なオーラ、54万オーラを引き出しているのにたいしてお構いなしの声が聞こえる。

 

『満! 近くの人に梨園(りえん)さんを呼んでもらうんだよ』

 

 エア子さんは相変わらず直球というか心情を解することもなく僕を指図する。

 

 世話焼きだというか僕に子供のお守りのようなことをしてくれる。

 

 実体がないくせに好き勝手に言う。一方的に言われるのはやる気をなくすよね。親に怒られると返ってやるきなくでしょ? そういうの。

 

 でも、回避しようのないやりとりで無視しても辛抱強く喋ってくるのが毎度のこと。これはかなり疲労がたまるので大人しく従う。

 

「あ、あにょ~、り、梨園しゃ……梨園さんは居ますでしょか。……でしょうか?」

 

 滑舌以前にまともにしゃべれない僕。最初、一番に目があった下級生の男子に尋ねる。

 

『上級生のくせに虚弱なふるまいをするんじゃないよ! もっと、堂々としな』

 

「ハッキリ喋れなかったよ」

 

 僕はエア子さんに返したつもりなのに声をかけた男子が返してくれた。僕をリジェクトしない。リジェクト 満セルフ。満自身を拒絶してくださいの反応ではない。

 

 まだ、このネタ引っ張るのか。元ネタの曲が好きなもので。

 

「お言葉わかりますよ。上級生の方ですか? 俺、まだ入学してから一ヶ月なんで女子になれてないから呼び出しにくいんですよ。先輩から会ってくれませんか? あっちの女子グループにいますよ」

 

 やたら丁寧に消極的な対応をしてくれる。ナチュラルに弱腰の草食生物な感じだ。仲良くなりたい。

 

 指差した方向を見る。6人組でクスクス笑いながら食事している女子たちがいる。なんだか、1人だけクククと秘めた笑いをする奴がいる。片方の髪で目を隠している女の子。 なんだ? 気のせいかデジャブを感じる。

 

 あと、感じたのは僕は女の子が苦手というよりかは腫れ物と関わる危険を感じた。女の子苦手だけどね。ブドさんとエア子さん以外ね。毎日、女子達と昼食とっているけどね。

 

 腫れ物とは失礼だが、僕が変わり者だからなんとなく一目でわかってしまう場合がある。

  

 で、僕は思うに変人が変人と仲良くしても、まっとうなコミュ力を身につけられないじゃないかと思う。

 

 エア子さんが付き添っている手前無視して帰れないので、僕は『り』なんとかさんを探すことにする。 

「あの中の誰ですか?」

 


「は?」

 


「へ?」

 


 う~ん、僕が、り? 梨園さんを知っていて尋ねたと思い込んでいるな。これは僕がおかしいのではない。僕が変じゃない。

 

 目的もわからず知らない人間に会いに来たわけではない。よく知らない相手だけど。

 

「えっと、前髪で片目を半分隠している人」

 

 あの、含み笑いしている娘か……。なんだか面倒くさそうだな。うぅ~何かを思い出ささそうで頭痛が……。ガマンして……。

 

「ありがとうございます。こんにちは」

 

「は?」

 

 しまった! 緊張すると意味のわからない挨拶をしてしまう。次の難関に向かって恥じている場合ではないので仕切り直す。

 

「あ、あああありがとね」

 

「は、はぁ……」

 

 やっぱ駄目だわ、僕。対人したくない。孤独でいい。

 

『なに、やっているんだい。次だぞ、次も頑張りな、満』

 

「はい、エア子さん」

 

「エア子さん?」

 

 懐疑の目線をいただくのがなれているので何事もなく去る。本当はなれるわけがないけどね。

 

 目的って何なの? って、愚痴りたいけど進行することにする。退路をたってしまった感があるから。女の子達に近づく。向こうも気配を感じて僕に振り向く。

 

『おお、ルヒュールじゃないか! ルヒュール』

 

 エア子さんは感激しているが……。

 

「エア子さん。何言っているの? 外人?」

 

『ったく、満は。いつも、満に傘とかぶつけてチョッカイする娘じゃないか』

 

「あ、あいつか! げ、げげげのげ」

 

 自分が人を覚えれないレベルの度が過ぎることを置いておくことにして厄介だな。

 

「あの? 何か用ですか?」

 

 ルヒュールの仲間内で一番中心的な娘が僕に問いかける。怪訝そうに。

 

 そりゃ、挨拶もせずにエア子さんとの一人会話したからね。心良く思わなだろうね。胃が痛い。

 

「え、えっと……こんにちはでございます」

 


「は?」

 


 やっちまったー! また、やらかした。精神が高揚するとやらかしてしまう変な挨拶。今日は何度目か? トホホ……。

 

「ごめんなさい……そこの君が、り? 梨園さんだよね?」

 

「半信半疑ですか……」

 

 コミュリーダーが返事を返す。

 

 まぁ、不自然なのは受け止めるけど。用事がある。あるよね? 自問してどうする。

 

『おや? ルヒュール嬉しそうだな』

 

「マジで? エア子さん。ルヒュール喜んでるの? 嫌だな~」

 

 確認してみると隻眼のルヒュールはニンマリしてた。すぐに僕が嫌がったので気落ちした風にもみえるけどね。ごめんなさいね。

 

「何を一人でブツブツと言っているんですか? ……。(あんず)、あんたに用だって」

 

 グループリーダーが代わりに対応してくれる。流石にこの娘とは面識ないよね?

 

 ルヒュールの再度の印象は、怖可愛い(こわかわいい)

 

 そんな言葉があるかは知らないけどね。右目を髪で隠しているだけでなんかダークで怖い。顔の輪郭はプニプニと可愛いのにね。

 

「ククク、待ちわびたぞ! ゴッデビルよ。この退屈な日常もこれまでか」

 

「ん? んんんんんんんん?」

 

『満よ、そういう通り名で呼ばれていただろ』

 

「サンキュー! エア子さん」

 

「ククク、また闇人格との対話か。世界の滅びもいよいよ持って近くなってきたわね」

 


 また、これだよ。

 


 滅びる時は世界は滅びるだろうけどね。中二病限らずカルト的にも人間が滅びるとか言っても滅びないじゃん。

 

「この子はまたわけわからないことを。この先輩がお気にりなの?」

 

「違ーう! せ~んぱいと私は幾億年と魂を削りあった光と闇だ!」

 

「なんだかね~。今朝、先輩に傘をぶつけたのを謝れなくて恥ずかしくて会えなくなったんでしょ?」

 

「違うもん。あれは光と闇の宿命で仕方がないことで、今こうやって闇が光を求めてやってきている」

 

「結果的に望みは同じじゃない」

 

「違うー! アホー!」

 

「何を言っているんだか。黒塗りの妄想ノートに書いてあったでしょ」

 

「読むなー! あれは光と闇の意思に操られるままに記した運命の書物。決して私の願望ではない」

 

「はいはい、痛々しいからやめてね。ラスト・ウィッシュだったけ? ノートの名前」

 

「そうよ」

 

「乙女の妄想未来日記?」

 

「ぅぅぅ? 違うもん。バカー! アホー! アホアホアホアホアホアホー!」

 

「キレちゃダメでしょ」

 

 どうでもいいけど二人で盛り上がっているのはいいが、僕の要件もすませたいな。

 

『恋する、中二病ってやつかい? なんかそういうアニメあったな』

 

「いじめっ子にモテてもね。痛い目に合うだけじゃないか。関わりたくないな」

 

「何、この人……誰と喋っているの」

 

 不審な反応される。当たり前だけどね。闇の力とやらで生身のエア子さん召喚できないかな?

 

 ル? ルヒュールは別の反応で……。

 

「闇人格、カッコいい」

 

「杏、あんな危ない人に興味を持たないで。きっと変態だよ」

 

 ムッ、とした。まるで僕が犯罪者みたいじゃないか。

 

「でも、僕にチョッカイするのは向こうでしょ?」

 

 別の娘に相槌を促すが……。

 

「私に同意を求められても困りますけど……」

 

「ご、ごごごごごごごごごごめんなさい」

 

「そもそも迷惑だと装いつつわざわざ会いに来るなんて度し難いヘンタイ先輩ですね」

 

 その言葉は辛辣なのでやめて欲しい。

 

 で、僕は本題に切り替えたいので勇気をだして喋る。 

 

「ち、ちょっと聞きたいことがあって来たんだけどね……わ、わわわわ……」

 

我空(わがぞら)のことかい?』

 

「ありがとう、エア子さん」

 

 僕のやり取りを気持ちの悪い目でみるルヒュールこと梨園って娘のコミュリーダー。

 

「我空って知っている?」

 

桃萌(ももも)のことかな?」

 

「もももももも?」

 

「も・も・も!」

 

「ももも?」

 

「桃萌ね」

 

 誰の名前だか知らないけど変な名前だな。なんだかこれはコントなの? って、言いたい。違う名前? が出てくるし。

 

「えっと、その……」

 

「もしかして、違っているのかな? わかった! お兄さんの方か。杏、知っている?」

 

「知らない。魔犬のエサ?」

 

 酷い言われようだけど、知り合いだな、これ。

 

 元々、初見が怖い子なので怒気伝わりにくい。


 だけど、背中からゴゴゴと文字でも出てきそうなくらいの迫力がある。どういう間柄だろう?

 

「えっと、ふ? ふふふふふ」

 

「何を笑っているんですか? 気持ち悪い」

 

 キモイなんて中傷だよね? よくいう照れ隠しのスキンシップだよね? 傷つくな……。

 

『深のことだろ。満よ、覚えなって言っているだろ』

 

「ありがとう、エア子さん」

 

「エア子さん、闇人格の名か……興味深い」

 

 なんだかのってくる。ル? ルヒュールこと、り? 梨園って娘がエア子さんとのやりとりには嬉々としてみている。不思議だ。よそに、隣の友達は不思議そうな面持ちから、ぱっと理解したとばかりに……。

 

「これが、二年にいる噂の妄想彼女と喋る先輩のやりとりですか?」

 

 はっきり言うか、はっきりと……。不本意だな。そんな噂が広まっているのか。エア子さんの次に注目されない人間だと自負しているのに。

 

 で、発言した娘はどこかで見た覚えがあるんだよな。でも、いまはいっぱいいっぱいでほっとくが。

 

「流石は新聞部」

 

「え?」


『ああ、わかったぞ! 満。この娘がいつも満を尾行してネットで晒す奴だな』

 

「えええええええ!」

 

「おや、バレてしまいましたか?」

 

「もうちょっと僕に対して遠慮してくれないかな?」

 

「すみません、あまりに面白……いえ、気持ち悪いもので」

 

 くそ、めげないぞ。

 

 いい加減に本題にはいりたい。

 

「でさ、わ? 我空深って奴が僕の美術の教科書を梨園さんに貸しているって話で確認をしに来たんだよ」

 


「はぁ~?」

 


 いちいち、憎たらしいな。ここは我慢かな。

 

「そもそも、私達の選択授業は音楽ですから……ねえ? 杏」

 

「魔犬のエサに力を借りること自体があるまじき行為」

 

 で、魔犬のエサって存在ってなんなのよ。僕でなく我空のことだからいいけどね。

 

「だとは思ったんだけどね」

 

「ああ、先輩遊ばれているんですね。気付きましょうよ。馬鹿ですか?」

 

 なんかムカつくから正直に言おう。

 

「こういう結果だとわかっても行けと言われてしょうがないから来たの」

 

「ドMですか?」

 

「色々と事情があるんだよね。好きでこんなことはしないよ」

 

「我空さんのお兄さんは意味のわからないチョッカイすることで有名ですよ。先輩なのに知らないんですか?」

 

「知っても知らなくても同じなの。周りが行け行けとうるさいの!」

 

「なんで、逆ギレしているんですか?」

 

 いや、そっちこそなんで怒っているの? 言い争いは好まないので落ち着くことにする。むこうが単にお喋りなのでつられてしまったのかな?

 

「魔犬のエサめ……!」

 

 それって、我空の呼び名で定着しているの? ネームバリューを増やそうよ。でも、ディスるのに意気投合してみたいからのっかるけどね。

 

「うんうん、魔犬のエサだね」

 

「そうだ! 魔犬のエサだー!」

 

「ディスパインズド我空め」

 

『軽蔑されたって言っても満も似たような扱いされているぞ』

 

「エア子さんのツッコミはいらない」

 

「キモ!」

 

 いやさ、エア子さんを知覚できないだろうけどさ、先輩がこんなにナチュラルに無色透明の人物に会話しているから、暖かい気持ちで見てあげてよ。無理だよね。

 

「我空について知っていることは?」

 

「一応、桃萌とは友達だから言えません。先輩が調べて下さい」

 

 妹がいるからか。変な兄がいても友情が大事なのね。

 

 我空、イレギュラーな存在か……。ふと、大親友ブドさんがはぐれ者は嫌いじゃないという台詞を思い出す。

 

「エア子さんは友達だからね」

 

『は? いきなり何を言っているんだい。驚いたね』

 

「先輩、キモイ」

 

「人間は理解出来ないものを否定する」

 

「まて、これは闇人格」

 

 梨園って娘が反応をする。そっちは僕を否定的じゃないようにみえる。でも、闇人格って自分の心に宿るものなんじゃ……。合わしてやけどね。小心故に。

 

「そうそう、そんな感じ」

 

「やっぱり、ニヤリ」

 

 本人が喜べばどうでもいいけど。

 

「ククク、悪くない答えだ。せんぱ~いに他に宿敵がいるのか知らないけど。妾の眷属として、そ、その、ぅ~」

 

 何をモジモジしているんだろう。

 

「でた、杏、特有の友達作りアプローチ方法」

 

「キモ先輩が割と好みなのか? コイツ、趣味悪!」

 

「チョッカイはこのためだからね。どうなる?」

 

「向こうから来てくれてラッキーだね」

 

 各々、ルヒュール? 梨園? さんの友達が好き勝手に言う。

 

「違う、違うの。誤解を生むな! アホー!」

 

 キャッキャしています。友達同士のじゃれあい?

 

 ところで、眷属って下等な手下みたいなもんだよね。違うか……。でも、嫌だな。

 

「なんですか、眷属でも同属でもなってあげてやればいいじゃないですか」

 

 この娘は……コミュリーダーだからか気が強いな。僕みたいな虫けらに遠慮はいらないのね。丁寧のほうが気づかいするからいいけど。

 

「君は梨園さんの保護者ですか? 強要しないでね」

 

「先輩は杏の性格に上手く乗ってあげたんですから、もっとやってあげて下さいよ」

 


 嫌ですよ。 

 


「私たちは杏の保護者だから。この娘危なっかしいからね。彼氏は安心できる相手じゃないと」

 

 一同が言う。保護者なんてどうでもいいかもしれない。この子達は仲がいい。まあ、それが世間では普通なんだろうけどね。ああ、僕は所詮僕だよ。ひねくれで臆病で卑屈。友達がいない。

 

『いいじゃないか。満、付き合ってあげな』

 

「エア子さん……。彼女とかいらないんだけど」

 

『お前が彼女が出来るところはあたしは見たいぞ』

 

「彼氏は嫌だな、友達でも嫌だな」

 

「ううう~」

 

 なに、この娘。露骨に残念がっているよ。やりづらいな。

 

「り? 梨園さん、友達ならいいよ?」

 

「ククク、やったー。いや、ゴッデビルよ宿命の日まで末永く戦うのだぞ」

 

 何? その意味のわからない告白は。

 

「先輩は初めてモテましたね」

 

 また、横槍を……正解ですけど、こんなモテはいらない。

 

「ごめんなさい。生意気が過ぎました」

 


 本当にね。

 


 しかし、流れ的に友達になってあげないとばつが悪い。僕がそういう立場になるとはね。不思議だね。

 

 だけどさ、僕に傘で攻撃してアプローチするなんてことはだね。いくら自分がボッチ気質で情報に閉ざされているとはいえ、それはない。

 

『ところで美術の教科書はどうなったんだい?』

 

「まだ、ひっぱるの? それ。しょうがないから学校近くの教材を扱っている本屋さんから買おうと思っているんだけど」

 

『十中八九疑いもなく我空がもっているだろ? それ』

 

「つうか、結局はエア子さんも芝居を打って梨園さんが教科書を持っている騒動にまきこんだんだね……」

 

『気付かないとでも思うのかい。葡萄(ブド)さんの意図を感じてな、こんなことでもしないと誰かと接しないじゃないか。毎日、葡萄さん達と我空だけだろ?』

 

 否定したいがその通りである。だが、我空はその中から排除したい。日常として会いたくない。

 

「え、えっと、梨園さん。僕の失われた物は見つからなかったけどよろしくね」

 

 まぁ、教科書だけど。ロストしたからね。結局。ついでに僕なりに友情の挨拶をする。

 

 が、雲行きが怪しくなる。 

 

「失われた物なら妾にもある」

 

 妾って主語使うのね。さておき……。

 

「えっと……」

 

 なんか、怒っているけど、どうしたんだろう。

 

 もともと、怖い印象があったけど。良く見ると鋭い目付きでさらに激昂している。戸惑うし逃げてしまいたくなる。周りの友達達は慣れているのだろうか動じていない。

 

「先輩は杏の触れてはならないことに触れましたね」

 

「何? お喋りなご友人」

 

「私は葛守(かつかみ)香美菜(かみな)っていいますよ」


 挿絵(By みてみん)


 なんだか覚えにくいな。難しい。DQNネームみたいな名だな。リーダー。名剣カーツ・カミナとかね。いや、神話ネタで探してもそんな武器ないはずだよ。

 

『カツ丼食いな! で覚えればいいんだよ。覚え安いだろ?』

 

「なるほど、エア子さん! カツ丼食いな! か」

 

『声はだすな』

 

 こういう時、僕以外に誰も聞こえないエア子さんはいいな~と思う。

 

「なに、言っているんですか?」

 

「ごめん、カツ丼……さん。じゃなく」

 

「は?」

 

 いかん、いかん、気づかれてはいないか間違って呼ぼうとしたことを。

 

「エクス・デス・カミナ、じゃなくて、えっと…」

 

「なんだか、ノベルズにでてくる悪役みたいな呼び方やめて下さい」

 

 そんなにライトノベル読まないからわかっているよ。単に覚えられないだけ。つうか、何度かやられた経験からのツッコミでしょ? それ。

 

「カツ丼の盛りさん、じゃなく、えっと、なんだ? 略して葛さん。すみません。名乗り忘れてました。僕は息野(いきの)(わたる)……じゃなく、(みちる)です」

 

「どこから処理すればいいんですか……。言い間違えましたよね? 何で自分の名前を忘れるんです?」

 

「あれね、弟の名前がでちゃった」

 

「どう考えても、自分の名前は間違えないですよ!」

 

「いや、デス葛さん。先生を間違えて、お母さんと呼ぶのと同じでしょうよ。見逃して下さい」

 

「ちょっと、デス葛さんって呼ばないで下さいよ! 自分の名前ですよ。先輩は本当に馬鹿なのですか?」

 

 はい、その通りです。1年に馬鹿呼ばわりとは……。まぁ、弟の友達連中にもハッキリと言われたことがあるけど。

 

 あとね、デスをつけるのは癖です。単にメタルの種類でデスメタルが好きだからです。少年らしい発想でしょ? 違うか……。  

 

「せんぱ~い! じゃなくゴッデビルよ。エクス・デス・カミナ、カッコイイ。ぅぅぅぅ~」

 

 なんか、話に入って行けてないルヒュールこと梨園さんが無理矢理共感を得て乱入。関心を売りつつ怒っています。ほったらかしだからしかたないけど……ね。

 

「杏を超えた奇人ぶりですね。ある意味お似合いです」

 

「一緒にするな! アホー!」

 

 あぁ、僕のイカれぶりに拒絶し始めているな。いいんじゃないかな? これなら、こんなバカと友達しなくてもいいやって思うだろうし。ニヤニヤ笑える、これはいい。帰ろ。

 


「あ!」

 


「ああ!」

 


 二人がハッとした表情で僕を見据える。

 

「先輩、演技か!」

 

 い、いや……演技じゃないけど。まぁ、中二病の梨園さんには教えてやれることもある。僕にも先輩なところはあるのかな?

 

「知恵をひけらかすより、愚かであることが身を助けたりするんだよ」

 

 自分で何をほざいているんだかね。つづける。

 

「こんな、変な先輩は嫌でしょ?」

 

「私は満先輩とならいいと思いますよ。馬鹿で面白いし。ねえ? 杏」

 

 デス葛さんは余計な事を言わないでいい。葛ドンと言い間違えるぞ!

 

「あの、デス葛さ……」

 

 梨園さんに遮られる。

 

「先輩! いやゴッデビルよ」

 

「な、何かな? 梨園さん」

 

「満先輩と呼んでもいい?」

 

 今さら確認されてもな。むこうは照れながら『あうあう』している。こうしてみるとかわいい。

 

「拒否しても無駄だろうからいいよ」

 

「やったね! 杏。人間が弱いから快諾してくれたね」

 

(かつ)(カレ)ーさん、いちいち生意気だけど……」

 

葛守(かつかみ)香美菜(かみな)ですよ。ところで、杏の失ったものを聞いてあげないんですか?」

 

「面倒だけど、教えて。杏……ルヒュール」

 

 どう呼ぶか、やりづらい。

 

「ぬ~ぅぅ、魔犬のエサが。奴は預言書を奪った。書のタイトルはラスト・ウィッシュ」

 

 う~ん、それだと最後の願望だよ。つうか、黒塗りの本に願望は書いてないと言っていたような……。この子は僕並みに馬鹿なのかな? まぁ、預言なんて望みを訴えるもののように感じてしまうけどね。うんちく本を読んだ浅い知識だけどね。

 

「わかっている。わかっているんだ、先輩! 預言とは回避できない未来の事実! だが、自分は絶望しか孕んでいない未来の事実を打破するために残した道標を失うわけにいかない!」

 

「よくわからないけど、僕も事実は嫌いだよ。揉め事で誰がやったのか? と問われて否定すると、調べたら僕だとわかる。あれは辛いな……。記憶がないのに犯人とか……これは超常現象でしょ? と言いたい」

 

「馬鹿先輩、噛み合っていないですよ。妄想と残念な話は別ですよ」

 

「カツさんうるさいですよ」

 

「私になれきったところで調子にのっているようですが、私の本名を言えますか?」

 

 不味い、いつものことだけど……たまに話をしてくれる人間に対して本気で名前を忘れる。そんなもんだから、人間関係が壊れて離れていく。自業自得だけど、決別って悲しい。非業の死ならず、非業の決別。

 

 いや、そこまで、好きと言うか、初対面だから未練はないんだけど……呆れられて無視されるのは切ない。深く、深く考えて言葉にだす。

 

「えっ、えっと。葛飾区さん?」

 

「やはり、大馬鹿なんですね。葛守(かつかみ)香美菜(かみな)ですよ。まさか、杏の本名も忘れているわけではないですよね?」

 

 難所が二度も到来……。我が身を粉砕する気持ち。いや、あっちの方がショックで腰が砕ける想いだろうけど。さっきまで言えたけど、とっさに人の名を出せないことがある。何故だろうか? まぁ、そういう人間は僕だけだろうけどね。

 

「えっと、えっと、え~と……り、梨園 アプリコ……じゃなくて、梨園 杏さんでしょ」

 


「おお!」

 


 葛さん、葛守さんと周りのご友人達が一斉に感嘆する。周りのクラスメイト達が何事かと振り向いて直視をするのがなんだか恥ずかしい。

 

『なんだか、まるで赤ちゃんが生まれて初めて両親の名前を口にした時の驚きだな』

 

「なに、その表現は……エア子さん。人とのやり取りで最低限のことなのに」

 

『わかっているなら、ちゃんと人の名を覚えような』

 

 よそに、葛守、梨園さんの友達らは言う。

 

「いいんですよ。葛守(かつかみ)は私達も最初は(かつもり)って呼んじゃって難しかったし。変な名前としか思わないし」

 

「香美菜は、デウス・エクス・香美菜!」

 

 う~ん、マキナじゃないのかな。どうでもいいけど。

 

「ちょっと」

 

「まぁ、梨園(りえん)も(なしえん)じゃないんかいーって思っていたしね」

 

「そうそう、よく訂正された」

 

 なんだか、キャッキャ、ウフフで談笑している。葛守さんと梨園さんは抗議しながら照れている。良いシーンなのだが、僕が置いてかれている上に他から注目されているので、どうにかならないかなとは思う。

 

『う~ん』

 

「なんだい? エア子さん」

 

『いや、なに、羨ましいなと思ってな』

 

 姿こそ見えないけど、羨望しているのがわかる。勘違いじゃないよね。

 

「そうだよね、エア子さんは僕なんかよりも女の子同士でいたいよね。なんで、人との接触が僕だけなんかに限定されるのかな。社交的なエア子さんは僕以外の人に取るべき。僕なんかといても……」

 

『コラー! なんかとは言うな! ここまで来ても卑屈だな。シッカリしな!』

 

「そうだね。なんていうか、元気がでるよ」

 

『そうそう、まずは元気が一番』

 

「馬鹿先輩、杏の言う闇人格と語らいしていますが、忘れていませんか?」

 

「忘れている? 梨園さんも、わ? 我空に何か持っていかれたんだっけ?」

 

「ぅぅぅ~(怒)」

 

「あの、黒塗りの本ですよ」

 

「あの、って言われたてもな……実物知らないよ。思春期に書いてしまう秘め事ノートなんだよね。ないなら、替わりに僕の痛い妄想ノートやろうか?」

 

「いるかー! でも、見てみたい」

 

 どっちなんだよ。あんなもの、奪われても誰も興味ないからどうでもいいでしょ。内容が僕のとは違うのかな?

 

「ラスト・ウィッシュの書は選ばれし者のみ読むことができる」

 

「なんか、選民思想みたいだね」

 

「ち、違~うぅ!」

 

『満、気の許した人しか見せたくないってことだろ。恥ずかしいだろうからな』

 

「そういうことか、エア子さん。僕自信が恥のようなものだから考えもしなかったよ」

 

『自虐ネタはやめな』

 

「そうだね」

 

 しかし、我空も小学生じゃないんだから、人の物を取り上げるのはないな……。教材なら買い直すことですむが梨園さんの自筆の書はな……。

 

「で、どうされたの? 奪われたって」

 

「そのままですよ。持ち逃げされたんです」

 

「ぅぅぅ~(泣)」

 

「過程がまったくわからないんだけど、強奪でもされたの?」

 

「この子、少しでも気が合いそうな人間がいれば布教していまして」

 

「その点は我空と同じだよね」

 

「一緒にするな! ぅぅぅ」

 

 まぁ、誰でもそんなもんでしょ。主張するのが突拍子ない人間とかもいるけど。エア子さんとか。

 

「皆、知っているんですよ。黒塗りの本」

 

「誰でも知っていれば目につくよね。大方、そのノートかっけぇぇ! とか言って近づいてきたのかな?」

 

「まぁ、そんなところです」

 

「ぅぅぅ~」

 

「そういうことで、杏と先輩の私物を取り返すために、作戦会議として私達と放課後カラオケに行きませんか? 先輩」

 

「嫌だよ、どうしてそうなるの? 実は心配してないんでしょ」

 

「私のネットワークからすれば案外容易く獲物は釣れますからね。ワイワイ楽しんで待ち構えますよ」

 

「どういうこと?」

 

「さあ? 我空さんのお兄さんより、興味があるというだけの優先です。満先輩」

 

「はあ……?」

 

 わけわからん。デス葛さんに考えがあるというより、適当な理由で遊びに誘われているだけにしか思えない。つうか、僕は音痴なので何としても避けたい。じゃあ、他の事をすればいいじゃないかとなるが思い付かない。

 

 唯一の友達、ブドさんとゲーセンか食事しか行ったことがない。ブドさんは昔から陸上部一本線で放課後は多忙である

 

 どうしたものか、エア子さんと2回カラオケを行ったけど、あれは辛い、監視されているわけではないけど端から見れば一人カラオケなのに誰かとはしゃいでいるように見られるので意識するとかなり痛い。

 

 エア子さんは歌唱力がある。僕にしか聞こえないのに……なんか、もったいない。当然、マイクから拡張した声などでることはない。姿が見えないから、マイクを使っているかさえわからないんだけどね。

 

「エア子さんって人も一緒ですよ」

 

『満、嬉しいねぇ。あたしは初めて他人の誘いを受けたよ』

 

「エア子さん……」

 

 僕は予感した。

  

 周りにとって妄想人物と思われているエア子さんとのやり取りカラオケの場で恥ずかしめ面白がるのだ。

 

 僕がそう思考しているのを察してかデス葛さんは言い繕う。

 

「いえ、馬鹿にしているわけではないですよ。先輩はエア子さんとのやりとりって、どこか本当な気がするんですよね」

 

「闇人格と讃歌か興味深い。ククク」

 

「杏はちょっと黙っていて」

 

「あう~」

 

「失礼承知でどうなるかな? ってね」

 

「本当に失礼だよね」

 

『満、四の五と言わずにさ、誘いを受けて遊ばないか?』

 

「いや、僕は音痴だから嫌なんだけど……エア子さんの歌声は誰も聴こえないのに歌いたいの?」

 

『場の雰囲気でそれぞれが楽しめばいいだろ。ちなみに満が音痴だろうが逐一聴いていないぞ』

 

「注目されないからいいけど、酷いな、それ」

 

『他人と比較するのは満の悪い癖だな』

 

「そんなつもりはないけど」

 

 デス葛さんじっと見ている。デス葛さんだけではなく全員だけど。

 

「先輩、その一人やり取りが自然ですよね。最初は演技か頭が壊れたのかなと思っていましたけど」

 

「いや、あれは闇人格との対話……」

 

「杏は黙ってなさい」

 

「ぅぅ~私も仲間にいれろ!」

 

 梨園さんはなんだか一生懸命に主張した。僕も自分を出すことは得意ではないので気持ちはわかる。必死になることはないけどね。

 

「満先輩は、闇人格を持ちながら一切支配される素振りはみえない。強靭な精神がある」

 

 何を言いたいのかわからないけど、僕は結構、エア子さんに指図されているけどね。人間が貧弱だと実体無き相手にもこうなる。言いたい放題で動かされている。

 

「満先輩が、暗黒の力を取り押さえているにも関わらず、闇の主をカラオケという、俗物の邪な儀式によって解放させてはならない」

 

 ようするに、この子もカラオケやりたくないのかな……? だとすると。

 

「音痴発見。僕と一緒だね」

 

「ククク、魔界の歌姫とうたわれる私が音痴などと……。ただ、私の甘美なる美声が低俗な機械で汚したくないだけのこと」

 

「満先輩、この子、歌は下手ではないけどアニソンばかりで……」

 

「いや、アニメソングなら、一般的に知られているのもあるから問題ないと思うけど」

 

 まぁ、偏見踏まえても趣味違いは問題ないと思う。面倒かもしれないけど。

 

「僕なんか、ちゃんと発音できないのに洋楽ですよ。ヘヴィメタルですよ」

 

 無論、趣味というよりかは兄さんの好みから影響されたというより、音楽が聴ければなんでもいいから経済的にうくので、お下がりでメタルソングを聴くというのが僕です。嫌いじゃないけどね。好物だけどね。

 

「意外な感じですね。なんというか新感覚なキモオタソングを趣味としていると見受けしていたのに……」

 

 わからんわ~、僕のイメージって何? 新感覚キモオタソングって何?

 

 そもそも、僕は妄想好きでオタクやマニアほどの熱中的(ハードコア)な知識はない。

 

 おとなしい、キモい、イコールで判断されても困るし、オタクと言われている存在の方々にも失礼である。

 

「でも、あまり洋楽メタルソングなんてカラオケにないから普通に流行り? の曲を歌うよ」

 

「まぁまぁ、持ちネタは楽しみに取っておくことにして、いつもの駅前カラオケ屋で皆いい?」

 

「強引だな~」

 

 これは、僕の台詞ではない、他の娘だよ。確かに強引というか決まったこととして進行されているな。行きたくないんだけど。駅前って少々遠いし。

 

 問題はよく考えて怖い初対面で学年下の女子グループとカラオケに行くことである。

 

 ここまでなんとか話せたのはモーゼが海を真二つ割った奇跡に近い物がある。適当に比喩したけど。

 

「あの……比率がおかしくない?」

 

「比率?」

 

「男女比率だけど」

 

「ああ、先輩の場合は友達がいないでしょうから付き添いで呼べる男子いないですよね」

 

 はっきりと決め付けられると心苦しいが、事実なので更に心苦しい。

 

「男っぽい友達ならいるけど……」

 

「いや、それは女子ですよね」

 

 う~む、ブドさんにその場の精神的な静養剤になってもらおうと考えたが……。

 

 どちらにしろ、放課後にブドさんを誘っても『わりぃ、今日も陸上だわ』で終了になる。

 

 ちなみに僕は帰宅部の暇人。結局断っても、エア子さんがグダグダ言わずに交友を深めろ! だろ、なんとか言われる。反抗しても自分が折れない限り続く。

 

「エア子さん行きたい?」

 

『コラー! 満、自分の意思できめな』

 

「じゃあ、行かない」

 

『本当にいいのかい? 後悔するぞ、後悔するぞ?』

 

「2回言わなくても……」

 

『あたしだけでも行くぞ。楽しむぞ。いいのかい。いいのかい?』

 

「エア子さんだけ行っても認識されないでしょ。いるのか、いないのかわかってもらえないからどうにもならないでしょ」

 

『満が中継役になるしかないな』

 

「つなぎ役じゃないんだけど……。コミュ力ゼロの僕が取り持ちなんて無理」

 

『満、さっきから喋れているじゃないか。考えすぎだろ、問題なし』

 

 ……確かに、初対面の連中に話せているな……。身内とブドさん以外は会話しない僕だけど、ここ一ヶ月はエア子さんと会話しているからリハビリにでもなっているのか? バカな……?

 

「でも、行きたくないな~どうしようエア子さん?」

 

「先輩は鈍くさいんですか? いるのか、いないのかわからないエア子さんですけど、確認しあわないと動けないですか?」

 

『ほら、満、言われているぞ! ここはビシーっと返事しな』

 

 なんか、嫌だけど……。

 

「行くよ! 参加するよ! 何処までも」

 

 たかだか、カラオケ行くかでこの有り様……。不様だな。

 

『よくやった! 偉いぞ、満』

 

 なんで褒められるのかわからないけど、初めてのおつかいをやらす親御みたいな世話焼きはやめてほしい。

 

「なんか、妙な言い回しですけど……決定ですね。集合時間は後で決めますのでメアド教えて下さい」

 

「携帯あまりつかわないから自分でメアドわからないんだけど」

 

「マジですか! 赤外線受信とかSNSとかわからないですか?」

 

「?」

 

「まぁ、いいです。放課後に使い(杏)を送ります。先輩のクラスを教えて下さい」

 

「2A、いや、Bだったけ?」

 

「何処までもバカですね。学年がわかれば問題ないです」

 

 じゃあ、聞かないでよ。

 

「杏」

 

「ふっ、何かしら 積極的な(アサルト)淫女(ウィッチ)よ」

 

 デウス・エクス・香美菜はどうなったんだ? 意外とどうでもいいことは覚えられるな僕。

 

「なにか、中二的発想でバカにした造語を隠語っぽくしたように感じるかな。気のせいかな? スルーしておくね。放課後、二年のバカ先輩で探しておいて。バカで通じるよ」

 

 なにそれ、酷すぎる。同学年共通のバカですか。

 

「いや、息野(いきの)(みちる)でさがしてよ~!」

 

 デス葛さんがにやけながら返してくる。

 

「息野先輩でもいいんですけどね。先輩、そろそろ昼休み終わりますよ」

 

 僕は目を写す。どっちで確認しても同じだけど教室の時計と携帯の時間を確認する。

 

「あと、五分か……不味いな」

 

「じゃ、先輩、放課後に」

 

 それを、言うのは使いの梨園さんじゃないかなとは思うけど進行役の流れかな。デス葛さん。なんだか、名前がよくわからなくなってきた。

 

「えい!」

 

 食べかけの弁当のオカズを僕の口に突っ込む。

 

 食事してないと思われての配慮からなのか、優しくしてくれるのはいいが恥ずかしいし、ハシごと突っ込むのはちょっと危険。

 

 向こうの食事時間を邪魔した関係もあるからお相子でいいけどね。

 

 屈託なく手をふってくれるが、よく考えたら昼食とらずに長話していたんだな。

 

 目的がなんなのか、話しがごった煮してしまった。空腹のせいか、あるいは気が抜けたのかはわからないけど廊下にでたら、倒れ込んでしまう。腹這いになってほふく前進した。

初、完結した連載型作品ですが、未練残して良かった。

エア子さんジャンル浸透するように。

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