雨ノ日
顔をたたく雨粒が、彼の体から熱を奪う。
地に溜まった水たまりが、歩く先で小さく跳ねる。
傘を忘れてしまった彼は、不幸にも帰る先で大雨に降られてしまった。
帰る宿はすぐ先で、あとちょっとというところだったのだが、天候など誰にも操れないのだから。
頭をさえぎる物はなく、滴る水が服にだんだんと張り付いて、動きづらくなって、
もうそこまで濡れてしまうとだんだんと心は熱を持ち、むしろ生き生きとし始める。
歩きは走りに変わり、呼吸は荒くなり、周りの目など気にしなくなって、だんだん胸躍り始める。
むしろ雨に濡れることに楽しさすら覚える、雨の日が楽しく感じる。
ああ、今生きているのだと