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Servant×Survival  作者: 長門葵
出会いと真実
27/28

26

 突如現れた美麗な女性。


 自身を大罪の魔女と称し、総司に舞美まみと呼ばれた女性の後ろに控えるように現れる六人の男女。


 この世界にはあるはずのない高校の制服を着てぷりぷりと怒りながら地団駄を踏む少女。


 同じく学ランを着崩して、金髪に耳にピアスと不良の典型のような見た目で気だるそうに欠伸をする長身の少年。


 棒つきのキャンディを咥えながら、ノートパソコンをいじる男の子。


 豊満なスタイルを強調するかのようにピッタリとしたスーツを着こなし、総司に手を振る女性。


 黒い下地に金や銀の糸で装飾が施されたきらびやかなローブを羽織るダークエルフ。


 上半身裸で、下にはジーンズに似たズボンをはきながら、怒りに肩を震わせるオーガ。


 ちぐはぐで一貫性にかけるように見える六人。

 

 オーガを除いてた他の面子は歴戦の猛者というよりかは、へんな格好をした貴族の家族旅行のようにしか見えない。


「七つの大罪」


 しかし、その六人を見て、誰かが呟いた。その呟きは戦士たちの心に恐怖を運ぶ。足を震わせ、涙する者。嗚咽を吐き、うずくまる者。多種多様だが、戦士たちの戦意は次々と折られていく。


「魔女と七つの大罪。確かに、まだ姿を見せない強欲以外は話に聞く見た目とあってやがる」


 武器をかまえ、そう呟くグリズベア。隣にいるはずのエレアノールにはその言葉が聞こえていない。ただ呆然と一点を見つめていた。


「サクマ……どういうこと」


 エレアノールが思考を巡らせる中、一つの黒い影がその集団に近づく。


「我が……愛しき君……嫉妬の女神……紗奈(さな)さま。どうか……やつらに天罰を。私めに御慈悲を」


 体の大半をこがしながらも、なんとか一命をとりとめたマキシが、這いずりながら、制服姿の女子(紗奈と呼ばれた少女)に手を伸ばした。


「なにこいつ」


 紗奈はその手を足で蹴り飛ばし、知らん顔で総司に視線を戻す。


 その行動に唖然とするマキシ。だが、すぐに激昂して紗奈に叫ぶ。


「あなたのご命令に従った私をお忘れか!あなたの命じるままに混沌を産み出したのですよ!ならば、なればこそ!ワタクシに御慈悲を」


 その叫びに紗奈はうんざりした表情で耳を両手で塞いでいたが、マキシが言い終わると微笑みを浮かべ、しゃがんでマキシと目線を合わせる。


「思い出したよ。マキシくん。成り上がりのトカゲくん」


「そうです!貴女に忠誠を誓ったマキシです」


 嬉しそうに呼応するマキシに紗奈は微笑みを浮かべたまま言った。


「私の命令に逆らって、ソウちゃんに手をだした裏切り者だ」


「ち、ちがう!まー


 マキシが弁明しようとしたが、その言葉をいい終える前にマキシは氷の中に閉じ込められた。


 紗奈はすっと立ち上がると、その表情から笑みは消え、目の前の氷のように冷たい視線でマキシを見つめる。


「嘘つきは嫌い。私からソウちゃんを奪おうとする人はもっと嫌い」


 そういって紗奈が指をならすと、マキシごと氷は無惨にくだけ散った。


 その惨状を眺めていた兵士たちの背中には、氷よりも冷たい汗がこれでもかというほど流れた。


「我が王の敵!」


 兵士たちが心身ともに膝をつき、絶望にくれている中、一人の獣人が剣を振りかざして舞美に飛びかかる。


 ジョン・ベルフである。


 決死の覚悟が見てとれる。総司を巻き込むことなど意に介さず、思いっきり剣を振るう。


 しかし、その剣は見えない壁に阻まれた。


「今、デート中なのだから、邪魔は無粋ってものよ」


 舞美がそう言って、指をならすとジョンは馬に蹴り飛ばされたかのような衝撃と共に弾き飛ばされた。


「ぐっ!」


 その衝撃に耐えながら、なんとか着地を成功させるとジョンは声をあげる。


「戦士たちよ!あいつを倒せば全てが終わる!平和を勝ち取るために立ち上がれ!」


 そう叫んで、ジョンは再度突撃を試みる。


 その鼓舞に一度心の折れた戦士たちももう一度武器をとる。


 ジョンを援護するかのように矢が飛び、魔法によって生み出された火や水が全てを清算しようと舞美たちに牙を向ける。


 だが、その全てが無に帰した。今度は見えないなにかではなく、見えてる人によって。


「なにを……しているの。サクマ」


 エレアノールが惨状を見て、ちいさくこぼした。


 総司が舞美を庇うように立ちふさがり、大剣へと姿を変えたアストレアを一振りした。その風圧でジョンも含め飛びかかる全ての攻撃を弾き飛ばしたのだ。


「なにをしてるのよ!サクマ!」


 泣きだしそうな叫び声に総司は答えず、アストレアを義手に戻して、舞美と向かい合う。


「ふふ、優しいのね。私以外にも」


 舞美は首に抱きつくように腕を絡め、総司にそう呟く。


 総司は困ったように笑顔を作りながら、答えた。


「それはずるい言い方だよ。なんて答えても怒られるやつでしょ、それ」


 舞美は子供のような笑みを浮かべ、自分の唇を指で触れる。


「なら、しゃべらないのが正解じゃない?」


「本当に卑怯だよ、それ」


 総司は導かれるように舞美の唇に、自身の唇を重ねる。


 それから数刻後、離れた唇を嬉しそうに指で押す舞美。その姿に総司は照れ笑いを浮かべる。


 周りの戦士たちは混乱した。


 先ほど窮地を救ってくれた人が、破滅を目論む敵の親玉と親しくしている。


 その理由を教えるかのように舞美は総司から離れて、総司を呼ぶ。


「やっぱり総司は優しいね。私の騎士さま…いいえ、ここでは強欲の騎士と呼んだ方が正しいのかしらね」


 あたりは更に騒然とする。


 七つの大罪と呼ばれる魔女の配下が一人、謎に包まれていた最後の一人が自分たちの目の前に現れたのだから、無理もない。


 しかも、それを味方だと思いこみ、仲間たちが自ら命を捧げたのだ。怒りや悲しみなど混沌とした負の感情がどろどろと沸いてくるのを感じた。


 エレアノールは信じきれず、瞳に貯まった粒をぽろぽろとこぼしながら、問いかける。


「嘘よね?嘘って言って。さっきまでみたいにお茶らけて、冗談でした~って。ねぇ、サクマ…サクマ!!」


 エレアノールの叫びに総司は答えることはなかった。


 しかし、少しだけ寂しそうに見えるその背中が答えを語っているようだった。


「裏切り者め!」


 一人のエルフが激昂しながら総司に切りかかる。


 総司はそれを義手で受け止めようとした。だが、総司が止めるよりも先に、そのエルフの上半身は霧散していた。


「ったく、だりぃな」


 学ラン姿の男がいつの間にか、総司の隣にたっていた。


「てめぇもいつまでもくっついてんじゃねぇよ」


 その男が拳を振り上げ、総司の顔面を殴る。総司は避けるでもなく、防御するそぶりも見せず、その拳を受けた。自分でもらったのにもかかわらず、総司は涙目でその男の学ランに掴みかかった。


「おい、相棒!そこは軽くぽんっと拳を頬に触れさせて、少年漫画のような感動的な再開を喜ぶシーンじゃないのか!なんで本気で殴ってんの鬼ヶ島晃佑(きかじまこうすけ)は何時から情緒のわからない男になってしまったんだ!」


「意味わかんねぇし、俺は元からこんなんだ」


 晃佑と呼ばれた男は面倒そうにそう答えると、金髪をかきむしりながら、総司の手を払いのけ、もといた位置に戻ってく。


「あーずるい、晃佑おにぃちゃんもそうするなら、僕はつまみ食いしちゃお」


 そう言ったのはノートパソコンを持った子供だった。その少年がノートパソコンのキーボードをカタカタと押すと、その子の影から豚の頭をした巨体の生物が現れた。


「エルフってどんな味なんだろうね」


 ぺろりと下を出す少年。


 エルフたちは未知の敵に攻撃を放つも、それは意に介す様子もない。


 その豚頭の怪物が口を開いて、エルフを食べようとした瞬間。その怪物は真っ二つに切り裂かれた。


「やめろ、良太(りょうた)


 総司がその怪物をアストレアで切り伏せていた。


「えー。なんで邪魔すんのそう兄ちゃん。ぷー」


 唇を尖らせ、不服そうにする良太を舞美が楽しそうに微笑んで、その頭を撫でる。


「久々に挨拶も出来たし、用事を済ませましょう」


 舞美は兵士たちの方へ振り返り、総司を指差す。


「大罪の魔女はここに宣言する。これよりこの世界の全てを滅ぼすと

。この七つの大罪が順々に貴方たちを蹂躙していくわ」


 舞美がそう宣言すると、空に七つの宝玉が現れ、総司を含めた七人の手元に浮遊していく。


「私を殺す騎士、強欲の罪を背負った総司。この宝玉を全部集めれば私のところまで来れるわ。貴方に素晴らしき死が来ることを祈るわ」


「ソウちゃん!舞美さん以外と……舞美さんでもちょっと嫌だけど……舞美さん以外とそういうことしちゃダメだよ!」


「ちっ、だりぃ」


「もう、お腹ペコペコ」


「ふふふ、その時が来たら先生と一緒に楽しい時間をすごしましょうね」


「私一人で、この場で、世界を滅ぼすことはできるが……私が出るまでもないのでいいだろう」


「ああ、ムカつくぜ。この怒り、必ずてめぇで発散するから待ってろよ、強欲」


 舞美の言葉に続いて、大罪と呼ばれていた六人はそれぞれの言葉を残して、その場から全員姿を消した。


 残った舞美は最後に総司に向かって言った。


「あ、そうだ……総司くん。約束、忘れないでね」


「ああ、必ず、あんたを殺すよ」


 それを聞くと舞美は嬉しそうに、だけどどこか寂しさを感じさせる笑みを浮かべ、その場から消えた。


 静まり返った戦場。


 しかし、エルフの兵士たちは次が来るのではと臨戦体制を解かず、未知の存在へ敵意を向けた。


 武器と殺意を向けられた総司は困ったようにはにかみ、義手(あいぼう)に助けを求める。


「どうしたもんかね」


Self-emp(自業自得です。)loyed』


 拗ねたような返答に総司は両手をあげて、空を見上げるのだった。



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