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最近、友人と見やすさについて語って、今回は少し多めに間を開けるために改行してます。
赤き鮮血が祝福を送るように戦場に降り注ぐ。
眼帯に隠されていた悪魔の契約が刻まれた紅い瞳が賛美歌を送るように鈍く重い輝きを増す。
それに呼応するように、総司の顔には残酷さと幼稚さを併せ持つ笑みがしっかりと映し出されていた。
「おやおや、壊れてしまいましたか」
龍魔道士のマキシが総司に哀れみの台詞を送る。この時、マキシは思った。自分が使える主が欲しがった男はあまりの状況に壊れてしまったのだと。この考えが、一瞬の油断を生んだ。
「お前、自分でいうほど魔族軍では強くないな」
総司は未だに降り注ぐ血の雨を眺めながら、そうつぶやいた。
「いきなり何を言い出すかと思えば。世迷言は死んでからにしていただきたい」
マキシは苛つきを隠さず、最後のトドメを刺そうと手に持つ杖を総司に向けた。ゾンビたちも続々と総司を目標に血の雨の中に入り込んでくる。
「そう怒るなよ。これは真実だ。大罪の奴らはもちろん、ある程度のやつならこの瞳の紋章を見て怯えるか嫉妬すべきしろものだ。そうならなかったお前は、お前だからこそ、この場から逃げ出さなかった」
「ま、まさか」
その瞳の奥に刻まれた紋をマキシは見逃していた。
自身が敬愛し、敬服し、神とまで崇めた彼女の足跡をマキシは見逃したのだ。
それが油断である。
そして、自分に襲いかかる違和感にマキシは気づいたのだ。
よく見ると血の雨が地面に落ちると、何かに導かれるように動き、円陣を作り上げていく。気づけば、そこには巨大な魔法陣が描かれていたのだ。
マキシは離れようとするが、足を何かを掴まれている。血がまるで意志を持った生物のように足に絡みつき、マキシの足を引っ張る。
ゾンビたちをとにかく壁にしようと指示を念思で出すが、一向に動く気配がない。よく見るとゾンビたちも自分と同様に足を掴まれていた。
「気づいたか。でも、もう遅い」
総司が指を鳴らすと、鮮血の雨が止まる。
そして、首を切られた三人のエルフの体は魔法陣に溶け落ちて、その地に波紋を起こした。これは比喩ではなく、本当に地面に波が起きたのだ。それを合図に総司の右目は魔法陣を浮かべながら、紅く光り輝いた。
『愛するものは死に、鳥かごに閉じ込められた姫は孤独の闇に。ならば全てを情愛の炎に閉じ込めて、忘れぬ一夜を過ごしましょう。その灯火が燃え尽きるまで』
総司の声が、反響してその魔法陣に響く。
そして、魔法陣が一気に真っ赤な血でうまる。まるで鼓動するかのように波を打ちながら、その中にいるマキシたちに巻き付く。
そして、魔法陣の中にいなかったゾンビたちもなにか誘われるかのようにその血溜まりの中に入っていく。
そして、マキシを含めた奇襲者が全員、その水面に光り輝く魔法陣が現れる。
『吉原イグサニア』
最後の詠唱で魔法陣は三つの光の点に変わり、それが血溜まりに落ちると同時に周りは炎の壁に包まれる。そして、その光の点は炎となり、その炎は球体から女性のよう形に姿を変える。
そして、その炎が血溜まりに口づけをすると、血溜まりは炎へと姿を変えて、奇襲者に絡みついていた血は女性の形をした炎の化身へと姿を変える。
気づけばそこには何人もの炎の女性が男を魅了う牢獄と変わっていた。
「くそ!放せ!なぜ、実態のない炎が私を引き止める。クリエイト・ウォーター!なぜ消えぬ。くそくそくそがああああああああ!」
マキシが先程までの余裕など捨てて必死に炎の化身から逃げようとするが、炎の化身は殴られても、水をかけられても、すぐにもとに戻り、マキシや他のゾンビたちに抱きつく。その姿はまるで愛する男に抱きつく乙女のようだった。
「体が、燃える。やめろ!放せ!暑い!こんなところで死にたくない!俺はもっと上に行くはずの男だ!」
マキシの思いとは別に鱗は焦げて剥がされていく。その間をまるで舐めるかのように炎がちろちろと撫でていく。されは次第に範囲を広げ、足から順に血管を沸騰させ、筋肉を動かぬ炭へと変え、そして、崩されていく。
「最後まで死ねると思うなよ」
その総司の言葉を最後にマキシの視界は炎でうまる。
(なぜだ。なぜ私がこんな目に。私はただ我が主に寵愛を受けるこの男を許せなかっただけなのに)
マキシの心の中の声は誰にも届くことなく、マキシは断末魔と共に、全身がついに炎に飲み込まれた。
ゾンビたちも炎をに包まれ、あとはその炎の舞台に残るのが総司と灰のみとなるのを待つだけだった。
「お久しぶりね」
とても優しく、温かく……そして、恐怖を形にしたような重圧が襲いかかってくる声がその場にそよ風のように凪いだ。
その瞬間、炎はすべて蝋燭の灯火のようにかき消え、炭に貸したゾンビたちと下半身を失い上半身を焦がしながらも瀕死な状態で息をするマキシの姿が現れた。
周りの兵士たちは驚いているが、総司だけが困ったような笑みを浮かべて、声の主を見ていた。そして、その視線の先にいる黒尽くめの女性に向けてこう言うのだ。
「本当に久しぶりだよ、舞美さん。………いや、ここでは大罪の魔女って言ったほうがいいのかな」
今回、主人公が使った魔法のカタカナ部分はラテン語で火を意味するイグニスと狂気を意味するインサニアをあわせて、狂気の火を意味しています。




