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蒼の誓約  作者: 毛井茂唯
第1章〈ユキト〉
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(2)残酷な世界


 僕は誰だろう。


 それが一番最初に考えることが出来た事柄だ。

 視界に入ってくる、誰だか分からない人たちや、知らない部屋。頭に浮かんでは消える人たちの映像。

 

 あまりにも意識が混沌としすぎていて、全く整理させてくれなかった。定着するまで恐ろしいまでの苦痛の繰り返しを味わった。

 自分の体にしては小さく感じる、この体は幾度となく悲鳴を上げた。

 どれくらいの時間が経ったか分からないが、現状は少し見えてきた。

 僕に顔を見せていた人たちは僕の両親となった人やその周囲の人たちだった。

 そして僕のこの小さな体は赤ん坊だった。


 意味が分からない。狐に化かされたとはこういう状況を指すのだろうか。

 何にしても取りあえず現状を確認しよう。思い出せる範囲で。

 僕は、恐らくまた生まれたのだろう。それは間違いないと思う。

 ここにいる僕は生きている。それも間違いはない。

 小っちゃい体になっているが、生きている。

 そしてここからだ。僕の今の状況。

 一番考えられるのが、生まれ変わり。

 だが、輪廻転生が存在しているのだろうか。さらに言えば例え魂があったとして記憶があるのはおかしい。

記憶があるといってもその断片だけだ。

 思考や精神などは、僕が死んだ瞬間からの引継ぎのようだった。さすがに肉体的な本能は押さえられないため、よく泣くし、トイレも漏らす。というか全然我慢できない。それが赤ちゃんクオリティー。

 それはいい。もっと大事な問題がある。


 僕の感覚だ。

 恐ろしいことに、僕が前世(納得はしていないが、これからは前世と呼称する)で死ぬ前に感じていた、体の重さや感覚の鈍さを僕の体が持っていること。

 赤ん坊だからではない。それとは違う不自由さ。


 一日のほとんどを、曇り硝子越しに世界を見聞きしているように感じてしまう。

 肉親を見分けることがいつも出来る訳じゃない。言葉が意味のあるように聞こえないし、自分に話しかけられているようにも感じない。あー、うーといった音だけの返事さえ上手くできない。

 たぶん無愛想な子どもに写っていることだろう。

 何とかしないといけない。

 いつまで見知らぬ彼らに養ってもらえるか分からないから。

 



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