(6)一つの終わり3
ユキトが目覚めはたのは揺れる鉄道の車内だった。
何故か肩や腰や頭が痛い。
長椅子に眠らされていたようだ。
ユキトは起き上り周りを見渡す。
目、目、目、と沢山の視線がユキトに向いていた。
家族とホーエイの使用人たちが部屋にいた。
「おはよう?でいいのかな……まだ首都に着いてなかったんだ」
周囲の視線に耐えかねてユキトは取り敢えず適当な話題を選んで喋った。
いの一番にユキトの父がユキトの顔を掴み、引き寄せた。
「ユキト!大丈夫か、俺の声が聞こえるか!」
「め、目の前で叫ばなくても聞こえてるよ」
ユキトは声の大きさに驚きながら、少し目を回して答えた。
「旦那様。私が診ますので少し下がっていただけますか」
ミリアは有無を言わさぬ固い声を出して父を退けた。
ミリアは瞳孔や脈、体温を確認し、頷いた。
「どうやら異常はないようですね」
ミリアのその言葉に部屋の中にいた人たちは安堵のため息を吐いた。
いつの間にかユキトの傍らにはナディアがいて、目元を服で強引に拭ったのか目が真っ赤になっていた。
「星辰」の世界にいる間、ユキトの体は昏睡状態におちいっていた。
痛みに反応する条件反射もなくなり、体をしたたかに打ち付けても目覚めることなく。
体温も一時的に下がっていた。
体の状態から見れば冬眠に近い。
ミリアがナディアの声を聞きすぐに駆けつけ、ユキトの生体反応を確かめたため全員取り乱すことはなかった。
しかし急に昏睡状態になった原因に心当たりが誰もなく、部屋には重苦しい空気が流れていた。
ユキトはそんな時に目が覚めたようだ。
時間にして半刻ほどだ。
大事をとって病院に掛かろうとユキトは両親から提案され、首都について初めての目的地は満場一致で病院となった。




