(3)辿りついた場所
この世界のミニシーア大陸は、大小様々な国がある。君主制、民主制など国のあり方にはばらつきがある。だが魔物という外的の影響があり、国の殆どは王政を設けていた。
僕の属する国は「オルリアン州国」という。多くの州国からなる連合国家の一つだということらしい。
まず国の頂点、国王を含む「王族」。一番偉い人たち。
それから領地を持たないが政治に関わる事のできる等、様々な特権持つことを許された「華族」。ただし、華族はオルリアン州国にはいないらしい。理由はあると思うが、僕はまだ知らない。
最後に地方領地を治め、防衛戦力を持つことを許された「氏族」。民には名称などはない。
僕の家は氏族に属し、ホーエイ地方という領地名になる。大都市を抱えており鉄道網が敷かれた地方であるため、かなり栄えていることが伺える。
お父さまも領地の政だけでなく、富国強兵に努めているため治安もいい。
僕の名は名乗るときには「ユキト・ホーエイ・ジルグランツ」と、名と氏の間に領地の名前を入れる。華族ならば、名と氏の間に階級を入れて名乗る。
まだ5才の僕にはこのくらいの知識しかいない。大人の話に聞き耳を立てて覚えたのだ。5才児が世界や国のことを質問するのは、僕でも不自然に思うし遠慮している。字の読み書きができれば本が読めて色々調べられるけど、まだまだ本が読めるほどに字は覚えていない。
僕の肉体は5才児で間違いないが、頭の中はそうとは言えない。
僕には、僕とは別の記憶がある。前世と言っていいのかは分からない。こことは別の星なのは間違いない。僕の住んでいた世界にはミニシーア大陸も、オルリアン州国も存在していなかった。
僕はその星で家族に囲まれ、友人もいて、ここでいう学園にも通っていた。そして成人をする前に、原因不明の病で死んだ……。父さん、母さん、兄に最後まで励まされた。
断片的な記憶しか残っておらず、固有名詞は自分の名前さえ覚えていない。
でも、僕はこのほんの少しの記憶がとても大切で忘れたくないのだ。
僕は、鏡に映る自分の顔が嫌いだ。今の顔を見るほど、自分の持つ記憶が薄れてしましそうで怖い。
僕は家族の優しさが怖い。掛け替えのない家族はどこかで生きているかもしれないのに、それが取って代わろうとしているようで。
僕の持つ記憶は少ないが精神や思考、価値観は前世の引き続きになっている。だから子どもらしさはまるでない。できる範囲で子どものふりをしているが、正直両親や使用人たちは違和感に気付いているだろ。まっさらなまま、この世界に生まれることができたのなら、やさしい家族のなかで心の底から笑い合えていたのに………。
何で、僕には前世の記憶があるのだろうか。




