0.彼女は彼らを愛し
そうね、あなたには理解できないことでしょうね。だけど、あなたしかきっと、理解できないのでしょうね。理解できるのにできない、ふふ、とてもすばらしい矛盾の花だわ。
でもそれがいいんじゃないの。
わからない?
そうね、あなたは一人と一つしか選べないものね。
わたしはいくらでも選ぶわ。
それがわたしに必要なものであれば、わたしが必要だと思うなら。
もちろん、最終的に捨てたものは山のよう。
ヒトもモノも、必要があるうちが花よ。要らなくなれば価値などないの。
その点、あの二人はとても素晴らしいわ。
わたしは彼らをこの腕に抱くことを、この上ない誉れだと思うの。二人に愛されてわたしは幸せなのよ。これでもう少し身体がマシなら、もっともっと先に進めたのに……残念だわ。
だけど眼前に傅かれることも、素足に触れられることも、髪に触れられることも、このドレスをゆっくりと剥がされて脱がされることも、湯船で四肢を洗われることも。
たったそれだけのこと、だけど、わたしはとても充実しているのよ。
それ以上は望めない身体だけれど。
そもそもそれ以上など叶うはずがない彼らだけど。
わたしはね、そんな緩慢な触れ合いにこそ、幸福を見出すの。
わかる?
わかるわよね。
あなただって同類だもの。
わたしはこれまで、理想と、狂信と、手を取り合って踊り続けた。
彼らと踊り続けることは、わたしだけの誉れでわたしにとっての誇り。
あなたが彼女の手を取って、踊ることと同じ。赤く熱く焼けた靴に死ぬまで踊らされた女王のように、あるいは足を飛ばされるまで呪われた靴で踊り狂っていた少女のように。
だけど彼女らと違ってわたしは自分の意志で、ずっと踊ってきたの。
だからわたしは、幸せなのよ。
理想に沈み、願いに溺れ、狂信と心中する。
――ねぇ、あなたやわたしという存在に、これ以上の『誉れ』があるの?
わたしは幸せなの。
今すぐ彼らに殺されたとするなら、きっと絶頂してしまうわ。




