0.黄金色の情景
ずっと、探していた。
失ったものを、光を探し続けて、見つからずにもがいている。遠い昔に失ったものを探す行為の無意味さをわかっていながらも、もはやそれ以外の存在理由が消し飛んでいたから。
いっそ、音が失せていればいいと思う。音も失せればいいと思う。
そうすれば雑音も聞かず、まやかしでも充足感を得ることができたのに。
探し、得て、しかし常に間違いで。
ないと知りつつも諦めることも許せないままに、また新しいものを探して回る。
あぁ、今も目に焼き付いているあの人の姿。
緩やかな曲線を抱く、金色の――。
■ □ ■
古今東西、誘拐されるのは非力でか弱く可憐なお姫様並びに、それに順する存在であると決まっているとカティは認識している。だからこそ、世の中にはそういう少女や女性が、悪の側に立つ何者かに誘拐されるなどする話が溢れているのだ、事実でも、虚実でも。
まぁ、実際に絵図的にもやはりうら若き乙女の方が似合う。
と、カティは思っていた。
目の前で、お姫様よろしくみぞおちに一発をくらい、女装しているわけでもないいつもどおりすぎるほどいつもどおりのセドリックが、影のような物体にかっさらわれてしまうまで。
――意外と似合っていましたね。
ぼんやりと影が去った方向を見つつ、カティは思う。
周囲の人々も唖然としたまま、同じ方向を向いて固まっていた。確かにセドリックは華奢で少女のように見えなくもない美貌を持つとはいえ、誘拐対象になるほどではない、はずだ。
だがあの影はいきなり出現し、周囲の少女らを無視し、カティも素通りしてセドリックをさらっていった。あれはそちらの世界の住民、と思うしかないのかもしれない、と考えて。
――そもそも、あれに性別などあるのでしょうか。
どう見てもただの影だ。
それほど大きくはない雲の塊が黒くなった、という感じだろうか。魔物、などと呼ばれる空想上の存在に、ああいうのがいるかもしれない。少なくとも現実では、初めて見たと思う。
「災難じゃったなぁ……あれに連れて行かれたら、もう二度と戻ってはこれんよ」
近寄ってきた老人が、気を使ったのかそんなことを言ってくる。どうやらあの影による誘拐はこの辺りでは有名な話らしく、被害者は二度と帰ってこないという定番のアレのようだ。
とはいえ、だからといって引き下がることはできない。
割りとわがままで、自分の理想が第一で、おそらく普通の人からするとお近づきになりたい類の人物ではないだろうセドリック。正直カティも、時々ついていけないと思うのだが。
――それでも、大事な人ではありますので。
色んな意味で大事だから、このままにはしておけない。彼に何かあっても困るし、彼が何かやらかしたらそれも困る。黙って誘拐されたままでいるとは、とてもではないが思えない。
助けるしかない、とため息混じりに決意した瞬間。
『助けてあげましょうか、可愛いお人形さん』
そんな声が、誰もいないはずの前方から聞こえてきた。




