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ぼくと彼女と一ヶ月

作者: 白樺 小人

『ぼく』は学生、『彼女』は成人女性。


 彼女と過ごした一時

 一月足らずの時間

 でも一生分を過ごしたようにも感じられた時間


 ぼくにとって何物にも変えがたい時間となった


 絶望に押しつぶされそうになっていたときに出会った

 自らの命を絶つことも考えたほどの時に出会えた奇跡


 共に過ごした時間


 共に笑い、共に泣き


 共に怒って共に楽しんだ


 彼女と出会えたことは、ぼくにとって本当に幸せなことだった

 彼女と共に過ごせた時間が一番幸せだった

 本当に笑えるようになった

 心のそこから今が楽しいと思えるようになった

 昨日とは違う今日を楽しむ事を知った

 今日とは違う明日を望むようになった

 一日たりとも同じ日は無い

 そう教えてもらった

 それがようやく分かった

 だからこそ明日を待ち望めるようになった

 うれしかった

 そして楽しかった

 彼女と過ごせる時間が

 一日の半分足らずの時間が待ち遠しかった

 共に過ごせる時間が大切だった

 だからこそ、ぼくを救ってくれた彼女に一言だけ言いたかった言葉がある


 ありがとう


 そんな単純な言葉だったけれど

 照れくささもあったせいか、どうしても言えなかった

 でも時間はたくさんある

 いつか言おう

 そう思って過ごしていた

 でもあの日

 いつもと違う別れの日

 いつも『また明日』と言って別れていたのに

 あの日だけは『またね』と言って別れた


 またいつか


 そんな風に言われた気がした

 何故あの日に限ってそう言われたのか分からなかった

 それでも信じていた

 いつかきっとお礼を言える日が来ると

 勇気が持てたら、素直な気持ちで言おう

 そう考えていた


 でも……できなかった






 いつもの待ち合わせ場所に、彼女はそれ以降、来なかった

 来る事は無い彼女を待ち続け、そしてある日

 向かった先は、知っている彼女の住んでいる場所

 そこで知ったのは信じがたい……

 信じたくない出来事


 彼女が、もう、何処にもいないという事……


 彼女の死を知った日

 これまでに味わったことの無いほどの絶望を知った

 ぼくの心が奈落に落ちていくかのような感覚を味わった

 でも彼女が残してくれたものが自分をまた救ってくれた

 共に過ごした記憶


 そして『ありがとう』という言葉


 彼女と一緒に住んでいた女性が、彼女の最後の言葉を教えてくれた

 ぼくが一番言いたかった言葉

 言いたかったのにいえなかった一言

 思わず溢れそうになる涙を歯を食いしばってこらえる

 本当は彼女自身がぼくに救われていた

 そう、その女性から教えてもらった


 幸せそうに笑いながら


 彼女は逝ってしまった


 彼女の死に顔は本当に幸せそうに微笑んでいた

 そう告げられた瞬間もう我慢ができなかった

 溢れ出す涙をこらえることができなかった

 恥も外聞もなく大泣きした




 最後に彼女と別れた公園に来たとき

 何故か彼女がいる気がした

 じっとその場所を見つめ続けて

 小さく呟くように


『また、明日』


 その言葉は風に消えたけど、きっと彼女にも届いたに違いない

 どこかで彼女が『また会いましょ』と言って笑っている気がしたから



 失った痛みは拭いきれない


 でも、暖かい何かは心の中に残った


 大切な思い出と共に



 いつかまた

 あなたに、会いに行きます




 新しい、恋を見つけた時に……






本来これは小説として書こうと思っていたお話です。

詳細として、彼女は病気であと云ヶ月という設定で。(フィクションなのであまり突っ込まないで)


自分の終りを知った彼女は、それまで出来なかった自分のしたいことをし、そして最後に思い出したのは幼い頃よくお世話になった女性の事。

その女性の家でお世話になって過ごしていたある日、堤防の上に座り込んでいる少年を通りすがりに見つけます。


というのが、書こうと思っていたお話の導入部です。

この短編は、だいぶ前に中途半端に書いてたものを今回、チョコチョコいじって投稿してみました。

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― 新着の感想 ―
[一言] この詩の儚い雰囲気が気に入りました。 これから少年はどう生きるのだろう。強く生きてほしいです。
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