人の持つ力〜ありがとうの気持ち〜
「80mコースを三周して来い」
また今日もこの日がきた
朝練のたびに走る。バレー部
部活の先生が変わってから『体力が無い』を理由に走らされていた
あたしは小学生のときからずっと運動が大好きだった
高学年になると色んな大会に出た
ハードル走や100m走、リレーなど、色んな競技に参加するほどだった
─でも…
中学校に入ってからは違った
小学校よりも生徒数が増え、周りのこはみんな自分よりも運動が得意な子ばかり
それに思春期からか、体重もどんどん増え、自分に自信がなくなった矢先の事だった
─顧問の先生が変わったのは…
ストレスと先生の精神的な追い込みから、朝ご飯は全く喉を通らなくなり、体重はしきりに落ちていった
朝練が嫌で、朝が嫌いになった
朝が嫌で、テレビで流れる音楽も嫌いになった
音楽が嫌で、番組が嫌いになった
番組が嫌で、生きる事が嫌になった
─死んでしまおうと思った
でも、そこで支えてくれたのは母だった
朝、私がしんどいから、と嘘をついて朝練を休もうとする
母はそれを疑いもせず学校に電話してくれた
「手を抜いてほしい」
って、一回顧問に電話してるところ見て、涙流して登校した事もあったな
「土日の練習は送り迎えしてあげる」
って、諦めかけてたあたしに一生懸命だった
「死んじゃいたい」
そう呟いたあたしの言葉を、責めも問いただしもしなかった
きっと、それが一番いい答えだって、分かってたんだね
同じ部活のこに言っても、皆根性のいい子たちばかりで相談しにくさがあった
全部を吐き出したら、自分が崩れちゃいそうで、母にも何も言わなくなっていったっけ
でも結局耐えられなくて、やめたいって本音言ったよね
そこで支えてくれたのは家族だった
「何もかも受け入れすぎ。もう少し力抜いたらいい」
って兄貴が言ってくれたり
「大丈夫?」
って弟が顔覗き込んでくれたり
ぐっと黙って父が話を聞いてくれたり
家族の大切さとか、絆とかって言うものが目に見えた気がした
先生と話し合った結果、転部、と言う結果に至った
その事を告げられた部員が朝、あたしの周りに集まってきた
皆が口々に言った
「相談乗れなくてごめん」
「やめないでほしい」
「○○ちゃんがおらんと部活楽しくない」
言葉と一緒に涙も流してくれた
いつもは泣かないあたしも、さすがにあれは耐えられなくて
一緒に涙流したっけ
あの涙はきれいすぎて反則だよ
そして違う部活に二年のとき転部した
途中から入ってきた人間を受け入れてくれるかとても不安だった
─でも、その不安はいとも簡単に裏切られた
「ほんまに?!」
「やったぁ!」
「○○ちゃんや!よろしく!」
先輩も同級生も、皆が笑顔で迎えてくれた
そんな先輩も引退に近づいた夏
「新キャプテンは○○ちゃん」
そう先輩からあたしの名前が呼ばれた
「卓球部には、○○ちゃんみたいな子がおらんから、頑張ってほしい」
その言葉を聞いてまた皆の前で泣いてしまった
あたしみたいな子…
こんな臆病で、根性なしで、1人じゃ何もできないような人間でいいの?
「○○ちゃんもめっちゃ上達早いからキャプテンできるって!」
同級生もみんな文句1つ言わないでついてきてくれた
「○○先輩なら大丈夫ですよ!頑張ってください♪」
一緒の時期に入った後輩たちも応援してくれて…
時間が過ぎるのはとても早くて
もう引退が近づいているわたしたち
ここまできたのは、私を支えてくれているひとがたくさんいた、ということ
一番の親友であってくれた母
温かい言葉をくれた家族
転部を惜しんでくれたバレー部員
転部を喜んでくれた卓球部員、先輩方
今思えばね
お礼、言ってないんです。最低ですね
でも、本当にありがとう
心から感謝します…
あたしはよく言われました
「○○ちゃんはもう少し強い子やと思ってた」
─きっと違うんです
あたしだけじゃない
強く見えるひとほど弱い心を持ってる人が多いんじゃないかな
だから…
側にいてあげてください
強く見えるからあの子は大丈夫、と、決めつけないであげてください
みんなにわらって過ごしてほしい
あたしみたいに『死にたい』なんて苦しまないでほしい
朝を嫌わないでほしい
家族の絆を感じてほしい
周りのひとのぬくもりを感じてほしい
あたしの願いは届くでしょうか…?
いま、あなたはやりたいこと、できてますか?
ときの流れに身を任せて生きていませんか?
それじゃダメとは言いません
でも
笑うことは絶対に忘れないでください
笑うことは絶対に、絶対に忘れないでください
今、あなたがそこにいるなら
あなたは1人じゃない
いままで1人でも支えてくれたひとがいるはず
その恩返しができる余裕を
あたしと一緒に
1つ1つ、手に入れていきましょう
ともに手を取り合って──