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ぬば玉  作者: しんげつ
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十八、三毛の斎宮

「病が癒えぬと?」

宰相の克勝は聞き返した。

「はい。」

仮面をした男が片膝をついたまま答える。

まだ寒い時期に御山の斎宮が高熱が続いていると聞いた。

その後は熱が上がったり下がったりで、

妻の雅と心配していた。


御山は麓の者を向かわせることはできない。薬を届けることはできても

行者たちの住む天狗の里の女たちに任せるしか無かった。

行者中には調薬に優れたものも多い。


「深刻という事だな?」

「はい。ここ3日は熱が下がらず、お食事が取れないのです。

支えている侍女達もかなり心配をしています。

薬師は、息が弱く色々施しても気が中々戻らない。

と申しております。」


月の根国の神祇家では三毛の女子が時々生まれる。

三毛は、ある程度の歳で御山に登り、

神に仕えるしきたりがあった。何故か男子には三毛は出現しずにそれがいつの間にか

御山を男禁の聖域にしたと言っても良い。

御山は広大で中腹までは石の階段が作られていたが、

途中からは獣道を行かねば、

禊ぎを行う御室堂まで行けない。

そのあとは天に召されるまでは戻らないものもいたし、

途中で、政局が代わり、麓の生活にもだされるものもいた。

雅は元、斎宮だった。今の斎宮は雅の娘で、麓では伊吹いう名で、

十六年前に御山へ登りずっと暮らしていた。


「伊吹以外に、年頃の三毛の女子はいませんね。」

雅に言われて、克勝は言葉が無かった。

「離れた歳ならば少しはいるのですが。私より年上の宗さまと

 遠縁の赤子の、名前は香です。」

三毛は一部の血縁にしか生まれないし、血縁者全員が三毛ではない。

遠縁でも血の繋がりがなくては生まれず、雅もその中の一人だったが、雅のもう亡き母親ですら、三毛では無かった。


月の根国の安寧には、三毛の斎宮が必要だった。天府が月の根国を侵略して来ずに

自治を認めているのは御山の斎宮の存在が大きい。


少し日が傾きかけた部屋で、克勝も雅も最善の方法を分かっていた。

あの子を連れ戻す時なのかも知れないと。


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