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ぬば玉  作者: しんげつ
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十ニ、余興

綾人は宴を見回っていた。政の要人との会話ははまだ、父の麻継に任せればよかった。帳簿や計算は得意だが

歌など読めと言われた日にはどうしたら良いかわからないのだ。

ただ、要人の動向や、飲みすぎて、無礼を働くヤツや、酒や料理の具合を見ていた。



先ほど、舞妓たちが舞った舞台は御付きの部下たちが座り込んで

酒や食事に騒がしい。

天府の帝は御簾の向こうで席を動くことなく、

食事をとられている。

御簾の向こうには、月の根国の王が同席している。

確か、王子も来ていたな。5男か6男だが、正妃の子であり帝位継承第一位の

王子だ。

御簾の向こうは椅子も机もそなわっており、

料理も特別だった。厨で料理を見ていたが、鮑に鯛に、川魚の鮎や山菜がならぶ。

猪の干物は帝の好物らしい。山の民から買い付けたものだ。


御簾の隅から、宰相の克勝と天府の大臣らしき人物画出てくるのが見えた。

数歩のところで何やら話し込んでいた。


綾人は近くにいた門番をしている兵士から槍を借りて、話が届く程の近くに待機した。


「それで折り入って話とは?」

「舞手が大変美しく、神々も御喜びであろう。

 実は、帝も大層お悦びでな。」


克勝は大臣の友野の顔を見た。


「帝は最後の一人で舞った娘をご所望だ。」

克勝は目を見開いた。


「最後か?」


「ああ、通常はたくさんの舞手の中で抜きん出るものを

天府の舞手に引き抜くが、

今回はあの娘を後宮へと願われた。」


「いやあの娘は。」

「ん?何かあるのか?」


しばらく間があった。

お前の縁者か?

「いや、まあそうだ。

詳しくは言えんが、あの娘は次回御山に行くかもしれんのだ。」


友野を見据える。

「御山?御山の斎宮か?」


「今お勤めをしている斎宮は

まだご健勝であり、すぐにではないがな

しかし、今はあの娘以外、年頃の三毛が一族にいない」

友野は長年天府に支えてきただけの才があった。

言わんとする状況を理解できたらしい。


「ふむ。三毛の聖ならば致し方ない。

しかし、帝にはなんと報告を。。。。」


「友野。舞手の献上ではなく献上舞ではどうか。

後宮には権力をお持ちの和仁さまがいらっしゃる。

和仁さまにも見ていただきたく。

天府へ舞い一行を派遣し、全員返していただきたいが。」


目で、手を出すなと言う合図を送る。

「うーむ。

帝を前にしてか?」


「舞手の中に天府に残りたいものもいるであろう。」

天府の領以上に活気のある里は見たことがないのだ。

天府そのものも、常に拡大をして繁栄ということばそのものだった。

若い者達には魅力的で領に住み着いてしまうものは多い。


「なるほどな。あ。いや。あの娘はどうなるのだ?」

「帝には御山の神に使える三毛でありますれば

不可能でございます。

そうお伝え願う。」


友野は「至極残念。」

と言うと、御簾の中の嬌声と共に戻った。



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