プロローグ
元々シリーズ名で一括投稿しようと思っていたのですが、お話の流れがぐちゃぐちゃになると判断し分ける形にしました。その影響で一部構成に変更があります。
これは前日譚
戦場に生まれ紆余曲折を経て民間軍事会社に保護され、行く当てもないためそのまま就職をすることとなる。これが戦場生まれPMC育ちのカール・J・ミラーの生い立ちである。
試用期間という名の基礎訓練、一般訓練を経て私の所属部署が山岳部隊に決まった。
ここで普段はフロント企業に登山ガイドとして勤務し堅気相手に登山ガイドの仕事をする傍ら「戦」に陰ながら介入し誰かの都合のいい結果へと誘導していくそれが彼のよく知る組織の仕事だ。別のやつともドンパチやっているらしいがどうせ経済とかそこらへんだろう。管轄外のことはよくわからないし知る気もない。
そういえば仕事で使うからと「国際山岳ガイド」とかいう資格まで取らされたがこいつはなんだかんだ役にたった。
登山道のない「バリエーションルート」…道なき道…を開拓したり
「雪山登山」や「高度なクライミング」に「山岳スキー」などあらゆるスキルを完璧に備えることができた。
チームで山に登って他部署やつらがスムーズに使えるように開拓、整備、保全などを行うのが我々の仕事だ。
その何気ない仕事のうちの一つに従事したことにより私の人生は予想だにしない方向へと狂いだして行く。
まるで歯車が機械から放り出されて別の機械にはまったかのように。
今回は初対面のやつと組んだため私おなじみの自己紹介を披露した。
「私の名前はカール・J・ミラー、38歳。186cm,74kgというすらっとした長身に肩胛骨のあたりまで伸ばしたサラサラの黒髪、色白の肌に黒のトレンチコートがトレードマークの男。趣味はチェスと将棋で好きな酒はマティーニ。
親の顔も名前も知らない。どうぞよろしく」
親の名より言い慣れた自己紹介の決まり文句。まぁ顔も名前も知らないんだから当たり前だ。これで一笑い起きてアイスブレイクは終了ってわけ簡単だろ?
今回の仲間も「そりゃそうだ」「覚えやすくていいね~」「カールが開拓した道には沢山助けられたよ~」だのと言われ今回も握手を交わし肩を組み笑い合い関係をほぐしたことで私の自己紹介は役割を十分に果たした。
初日は犬ぞりで快適に3000mまで進み幸先のいいスタートを切ることができた。今思うと我々はこの霊峰にまんまと釣られたのかもしれない。
2日目 3000~4000m
途中で犬ぞりを引く犬たちが「グルルルル……」と唸り声を上げ立ち止まった。犬達にとって酸素が薄いのかはてまた魔物でも住んでいるのか?
犬を見れば足がすくんでいる。何かに怯えているようだ。全く…
1時間ほど掛けて宥めてみたが相変わらず山脈に向かって吠え続けている。
埒が明かないので万が一救助隊が編成された場合を考慮し「3000m地点を過ぎると犬ぞりが使えなくなる」とメモに書き記しリーダーの首輪に挟み比較的マシな奴らとともに帰還させる。
こいつが冷静で助かった。
しかし犬ぞりが使い物にならなくなったのは痛いな。
4000m地点までなんとか辿り着くことができた。
犬ぞりを失ったのは痛いがトラブルには慣れっこだ。
夕飯の後片付けと寝床の準備を済ませ、珈琲を淹れて美しい夜空に掛かるオーロラのカーテンを肴に星々を眺めた。
水は雪を溶かし適切に処理したものを使用している。
犬ぞりが使えない以上明日からは目標地点まで1000mずつを目途に一歩一歩踏みしめていこう。
3日目 4000m~5000m
おいおい目覚めたら猛吹雪かよ。この天候で進むのは自殺行為でしかない。
食料は30日分しかないがここは停滞するしか無いだろう。
昨日はあんなに美味かったコーヒーが苦いとしか感じない。
4日目 4000m~5000m
昨日とうって変わって快晴だ。特にトラブルなく5000m地点に到達した。
遠くの山肌で雪崩を観測したが、天気がいいってのも考えものだな。
5日目 5000m~6000m
今朝仲間の一人が悪夢を見たそうだ。
痰が絡んだような咳を数回していたが本人は悪夢とこの風のせいで体調は大丈夫なんて言っているが高山病じゃなきゃいいんだが…
停滞することで話がまとまったがやつには大事とるためなんて言えないな。
6日目 5000m~6000m
標高 5000m 付近……事前に第一の関門であると言われていた地点に到着した。
通称“不定形乗越”
ここは到達しなければ岩肌が露出している黒の世界なのか雪面の白の世界なのか地面のコンディションが不明な難所だ。
簡単に言うならいわゆる峠と呼ばれる場所で、ここでは一度稜線に出るため気流の関係上常に爆風が吹いておりこれが雪を吹き飛ばすか否かで世界が変わるのだ。
風に何度か攫われそうになるもこの関門を無事突破。残りの工程も雪が多少降る程度でトラブルなく超えることに成功する。
標高 6,000mを超え、“不定形乗越”を越えた頃、山はその姿を大きく変えた。
あまりの強風のためか、はたまたその特殊な地質の影響か
今までは純白の世界であった山脈がここから先は漆黒へと姿を変えた。
視界の果てまで目もくらむような高峰群が続いている。
我々はこれら無数の山頂や尾根上の最高点を迂回しながら、漆黒の山脈の最高峰と推定されるピークの取り付きまで移動していかなければならない。
その夜夢を見た。
そうあれは夢のはずだ。
夢でなければならないはずなのになぜこんなにも鮮明に記憶しているのだろう?
漆黒の山脈を無数の人影が列をなして登っているように見える。
山が鳴動した。
ズルリ、と山が身じろぐと、ひとり、またひとりと、まるで山に飲み込まれるように登山者たちは消えていく。
漆黒の山脈に無数に空いた「うろ」から、飲み込まれた人たちが無残な「残骸」と成り果てて、吐き出されていく。
漆黒の谷があっという間に虹色に染まっていった。
あれは虹の谷と呼ばれるものだ。
その一部となりはてた登山者たちの中に私は見つけてしまった。
――「私自身」 の姿を。
7日目 6000m~7000m
目が覚め周囲を見るとみな、脂汗をかき酷い表情で目を覚ましていた。
どうやらみな全く同じ夢を見たようだ。そんなことありえるのか?
最悪の気分で起床したことが祟ったのか、二日前に仲間の心配をしたくせにまさか自分が高山病にかかってしまうとは情けない。
途中にクレヴァスを発見したが幸運にも落下することなく7000m地点に到着。
食事を速やかに摂りしっかり休息を取り翌朝には完治させることができた。
8日目 7000m~8000m
朝ゴゥンゴゥンという風の音とテント襲う雪の音で目が覚めた。
外の様子を確認すると最悪なことにただの吹雪ではなくホワイトアウトだった。
この状態では一歩も先には進めるわけがない。
私の高山病は完治したが本日も停滞だ。
9日目 7000m~8000m
起床時刻になったが1名食事に参加しないためテント内を確認したところに見当たらないため捜索を開始。
数時間後近くの崖より転落しているのを発見。
死亡しているのは明らかだった。
現場調査の結果夜の暗がりで足元がよく見えなかったことによる転落死と判断。
付近に洞窟を発見する。
後続隊のセーフティエリアになる可能性があったため、洞窟内に侵入すると鍾乳洞のような様相を呈していた。
内部の壁はうねうねとヒダ状になっており、鍾乳石が随所に見られる。
比較的暖かく、そしてじっとりとした湿気を感じる。
さらに奥へと続いていたため調査を続行することとなった。
洞窟の先に出口らしき明かりが見え、その地点まで歩を進めるとそこは谷になっており行き止まりだった。
谷底へとヘッドライトを向けるとそこには虹の谷が存在した。
は?ここは登山計画書なんてほぼ届けられていない未開拓の山脈だぞ?
なんでこんなもん拝むことになんだよ。ほかの山から流れてきたのか?
まさか「山が人をおびき寄せているとでもいうのか?」ハハッ冗談きついぜ。
気味が悪くなったので残りの仲間とテントに帰還後、本日は休養日とした。
10日目 7000m~8000m
あの洞窟は前半部のみならセーフティエリアとして活用できるのでは?という結論が出たため今回の作戦通りこのまま登頂ではなく下山することとなった。
はずなのになぜ我々は山頂へと歩みだしているのだろう?
HAHA何を言っているのだ?山は登るためにあるものだろう??ならばこんなところで下山することこそ山に対する侮辱ではないか。
??日目 ????m~????m
ついに山頂だ!私は成し遂げたのだ!これで私は初登頂の栄光と作戦完遂を報告できる!
誰に?何を?我々の任務はセーフティエリアの構築のはずなのになぜここにいるのだろう?
任務の放棄などあってはならないと総括に言われているのに…
だが目の前に広がる神殿を発見できたことに引き換えればそんなこと些細なことのはずだ。
神殿を調査するため近づくと声が聞こえた。
なんだ私が初登頂ではないのか?のんびりし過ぎたか?
「誰~?騒がしいなぁ~あー人間かーじゃ!そういやちょっと前に約束てたっけ?じゃ特典あげるね~」
「じゃ別世界へいってらっしゃーい!」
以上が作戦行動中行方不明となっていた部隊の昨日発見された遺留品と思わしき物から得られた情報をまとめたものです。
彼らの担当区域は未開拓地域なため何らかの事故にあったものと思われます。
目的を達成してもなお登頂しようとする不可解さ。
これを我々は「登頂への切迫性の狂気」と断定。
なお隊員を別世界へ飛ばした未確認生物の足取りはいまだに掴めていません。
本作戦の指揮は私ジェーン・ドゥが取り仕切ります。
「カール待っててね。私次元の壁を壊してでもあなたを必ず見つけ出すから」




