第6話
この蛇!? 俊敏な動きで不細工の竜の火球の有効範囲に誘導してくる。
だが火球はそれ程大した威力はなく斬って落とせている。手持ちの剣で裂けてしまうレベルで助かるよ。
だが刀身が赤く発光している。あと斬れたとしても2回が限界だろう。
「さて。この手の魔物とやり合うのは2年前のキマイラ以来か」
獅子と蛇の混成魔物。過去にもキマイラによる連携に苦戦を強いられた。だがこの1体で2体分の体を持つ奴の弱点は決まってる。複雑すぎる動きは取れない事だ!
「【フォイス・グラーフラ・フェイゼ!】」
私の手から特大火球を放つ。その魔術で蛇の方の視界を埋め尽くし熱で動きを封じる。
竜種に炎は効かないが……。たった一瞬。この隙さえあれば!!
私は通りすがりに蛇の首元を引き裂き大きく傷を刻み込む。こっちは不細工の方よりも鱗が柔らかい。地中で身を捩らせて動く為に発達させていないのだろう。
好機!
飛び上がり蛇の口先に剣を突き立て、足で柄を踏み込み地面に打ち付ける。
これで動きは封じた。まずは不細工の遠距離攻撃を潰す!
私の接近に尾である竜は体を振って蛇竜を振り回し始めた。突き刺さる剣を引き抜き、まるでハンマーのようにぶん回してくる。
「本体の方をそういう風に扱うか!?」
この仲間を武器として利用する攻撃はキマイラにはなかった。今後の学習になったな。
振り回された蛇竜本体が口を開く。一瞬見えた口内、上顎に噴射口のような小さな穴が2つあった。
「毒の噴射口か!?」
確信したと同時に黄色い液体が奴の口から噴射された。
それが地面に降りかかるたびジュワッと音を鳴らして鼻をつく酸味の強い香りが辺りに広がった。
酸だ!
ジャイアントスイングのように振り回される蛇竜が酸を振り撒く光景はまさに地獄絵図。
当たれば瞬時に体は溶けてスケルトンの仲間入りだろう。
「【グラン・バルス・ルグレド!】」
地面に手を叩きつける。
その魔法がリオンの周りの地面に作用し、彼の周囲を岩のドームで囲った。
これでリオンは酸から守れる。
私は振りまかれる酸を身のこなしでなんとか掻い潜り、ポーチからナイフを2本取り出し逆手に構える。
尻尾の繋がりを断てば、尾の竜は動きを止める!
そう信じて、尻尾にナイフで斬り刻んでいく。
同じ箇所を何度も何度も、傷が大きくなる程に!
「【リーア・カッファールタ・ルフラ!】」
ズパンッ!!
【裂傷魔法】が刻んだ傷を大きく引き裂き、尻尾を切断することが出来た。
振り回されていた蛇の本体が途中で千切れて壁に放り投げられ激突する。
予想通り尾の方はグッタリして地面に倒れ込んだ。これで後は蛇だけだ!
壁から蛇が突き抜けて私に迫ってくる!?
だがその動きに余裕は微塵も感じさせない。尾を切断されたことに対する怒りで我を失っているのだろう。
こうなれば最早ただの雑魚だ。
蛇が口を開く。酸の噴射口が大きく肥大化した。
「同じては食わない!!」
逆手に握っていたナイフ2本を投擲し噴射口を埋めるように突き刺さった。
噴射されるはずだった酸が行き場を失い、奴の口内で暴発。結果蛇竜の顔はドロドロに溶けて地に倒れた。
「哀れだな。最後が自分の酸でやられるなんて」
噴射口以外、体が酸に適応していなかったのだろう。地中で生きる本体なようだからな。そこまで進化する必要が無かったのかもしれない。
腕時計を見るとダンジョン攻略から25分経過していた。
「まあまあだな」
とは言ったものの……かなり苦戦した。
痛む体に回復薬を掛けて傷を癒した。
回復魔術は私も使える。だがこの場で使うには勿体なさすぎる。余裕はあるんだ。アイテムで補えば良いだろう。
ひとしきり体を癒し終え、リオンのいる岩のドームへと向かう。
そこには既に穴が空いていて、リオンの姿は無かった。
自力で掘って抜け出したのか? 逞しい子だ。
「せんせ〜い! こっちこっち〜」
「ん?」
振り返るとリオンは尾であった竜の亡骸の側で手を振っていた。いつの間にそこまで移動を……。
私と仕事を共にした結果かなり俊敏に動けるようになったということか……。レベルは低いのに逃げるスキルに関してはかなり高レベルだな。これは成長が楽しみだ。
「見つかったのか?」
「うん! ここに……ほら!」
そう言ってリオンが持ち上げたのは華奢な一本の腕だった。
断面から見るに恐らく食い千切られたのだろう。かなり抵抗したのか爪が剥がれて指先が血で真っ赤に染まっている。ふむ……そうなると中々酷い死に方だ。
まあ。蘇生した時にはそんな死の記憶は無くなっているのだから安心だろう。
「よしこれで全部揃ったな」
「1.2.3――うん! 全部揃ってるよ!」
「なら早く帰ろう。できるだけ記憶を残して蘇生した方が何かと楽だからな」
「あいあいさー!」
そうして私はリオンとダンジョンボスの亡骸に目もくれずグライカンへと戻る事にした。
あとは報酬の問題だが……。まあ間違いなく事を起こすだろうな。
貴族と言うのはどこまで行っても保身に走る生き物だ。
破産が目に見えた額の支払いなど、無資格の私に払うものか。
踏み倒し、無資格でダンジョンに潜った事を糾弾して有耶無耶にする可能性が高いだろう。
「先生?」
リオンが私の顔を見上げる。その顔はこれから起こる事を想像もしていない無垢な顔をしていた。
「ああ。すまない。考え事をしてただけだ。早く行こうか」
人間は面倒臭い……。こんな事を考えるぐらいなら魔物を30日間討伐し続ける方がよっぽど楽だ。
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