街が牙を剥く時
ここからはシルの狼姿が目立つとのことでシルは人型になり、
紛れるために、
私と二人互いにマントをまとい布を被ることで、
髪色や姿を隠すことにした。
シルが言うにシルの銀髪は珍しく、それだけで目立つこと、疑われかねないことを教えてもらった。
道中は険しく、持っていた食料や水もつきかけていた。
私たちは途中まで人目を避けるように進んでいたが、補給のため人里にでなければいけないのは必然であった。
余所者、それだけで煙たがられる存在になる。
すれ違う街の人たちの視線が痛かった。
私たちの一挙手一投足さえ観察されていると感じ、緊張感から固唾を飲んだ。
用を済ませたらこの街からはすぐに立ち去る──それがシルとの約束であった。
市井のものの姿や形はより様々であった。
完全な獣の姿をしたもの、シルと同じくほぼ人に近い姿をしたもの、半獣半人のもの。
彼らはこの町で確かに生きていた。そこには彼らの生活が息づいていた。
その最中で私たちだけが異質で浮いていた。
店の主人は私たちを見ると舌打ちした。
シルが慣れたように言葉を口にする。
わたしはただそれを目線で追っていた。
明らかに法外な値段をふっかけられているとわかりつつも、シルは言葉で抵抗しない。
それが当然のことで、そして、最善の手段と知っている。
彼は知っていた。
──知りすぎているほどに
もしここで口論になれば騒ぎになる。それがわかっているからだ。
そうじゃなくとも目立っていて、いつ私たちは狙われるか時間の問題であった。
『早く去るぞ』
シルが私の手を引き、その場を後にしようとする。
その時だった。
私の腰あたりにぶつかった人影。子どもだろうか。
「ごめんね」
私が謝ると、その子供らしき人物はチッと舌打ちする。
そして、私とシルの間をすり抜けようとした。
寸前、声を上げた。
『いてっ、離せよッ!』
私は振り向く。そこには子どもの手を捻り上げるシルがいた。
持ち上げられた子どもはジタバタと足をばたつかせる。
それを気にせず、シルは力を込め、一喝した。
『その袋を返せ──ガラス玉の入ったそれだ』
「シルッ」
『返すッ、返すよ!』
ほらっとそう言って私に押し付けると、
ようやく解放された子どもは再び舌打ちすると走り去る────
そう思っていた。
偶然ちらりと見えたのだろう。
シルの銀髪が。
それを見てニヤリと少年は笑った。
『コイツ、聖女の犬だ!』
少年がそう叫んだ。
一斉に周囲の視線がこちらを向く。
冷たい視線。
街を行く人々は足を止めて、私たちに目を向けていた。
その言葉により火蓋は切られた。
その瞬間、はっきりとわかった。
——この街は、私たちを“敵”と見なしたのだ。




