憎悪の輪廻
あけましておめでとうございます!!
本日もかわらず投稿していこうと思いますのでよろしくお願いします!
忍耐強く話を聞き出そうとすると、
子どもたちはぽつりぽつりと言葉をこぼし始めた。
この子たちは様々な理由でここに流れ着いたらしい。
魔物に襲われ、親と逸れた子。
親が病死した子。
もともと生まれついて捨てられた子。
そんな三人がなぜ一緒にいるのか、ここまで生きて来れたのか正解はすぐに出た────彼らを拾った人がいたからだ。
そこではこの子たちだけではなく、他にも種族間の戦災で親や家族を亡くした子たちが集っていた。
彼らはその場所を"家"と呼んだ。
よくよく見ればこの遺跡の一部、人の手により修復された場所があったのだ。
雨風を凌げる場所で、
そこに向かえば、大人の女性の獣人が出迎えた。
『やっと帰ってきたと思ったら────こちらの方々は』
そう言って私と人姿に戻ったシルを見る女性。人型でありつつもどちらかと言うと、獣に近い見た目をしている。
私の世界で言うとウサギなどの草食動物に近い生き物の獣人なんだろう。
黙る子どもたち。
そのうち、先ほど怪我を負って私が手当した子が徐に口を開いた。
『そこのお姉ちゃんやお兄ちゃんに、助けて……もらった』
そういうと、残り二人の男の子が、『誰が聖女の犬なんかに!』と口を揃えて言った。
すると、彼らの保護者的存在だろう女性が叱った。
『こらっ、助けてもらったんだろう!
恩人に使う言葉じゃない、それは!』
『なんでだよ!もともとはコイツのせいで……』
『それでも!助けてくれた事実は変わらない』
『そ、それは……』
言葉に詰まる少年たちは下を向いてしまう。
「ま、まあ」
私は女性と少年たちの間に入り、女性を取り持とうとする。
だが女性はそれを止めた。
『謝るんだ』
『ご、ごめん』
『心がこもってない!』
『ごめんなさい!』
少年たち二人が声を揃えて、頭を下げた。
シルも『もういい』と呆れ気味であった。
獣人の女性はマリアと言った。
"家"の保護者的存在らしい。
家族は他に大きい子がのこり二人いるらしい。その二人がどうやらマリアを手伝い、下の子たちの面倒を見ているらしい。
マリアさんがどうして子どもたちを拾うことになったのかはわからなかったが、
彼女が本当に彼らの保護者──つまり親代わりなのだということは先ほどの光景を見たらわかった。
『すまないね、やんちゃ坊主どもが。
でも許してやってくれ。
この子らはみなこの世界が、この世界の仕組みが産んだ孤児たちだ』
「いえ、私は──それにきっとシルも」
『問題ない。慣れているからね』
『そうかい』
マリアさんは悲しそうに目を伏せた。
『そう言えばそちらのお嬢さんは人界から来たのかい?』
「はい。正確にはこことも人界とも違う世界からですが」
『なるほど、"聖女"と同じ召喚者ってわけか』
「たぶん」
『聖女ではないんだな』
「そんな大したものじゃありません」
『いや、言葉が通じているから少し不思議に思っただけさ。
それだけで十分特別だ』
マリアさんはこの異界や彼女自身のことを少し話してくれた。
異界には獣人、漂泊の民、隷属種そして鬼人がいるそうだ。
ここは獣人国のはずれで、流れ着いた者たちが住まう場所らしい。
マリアさんもまた戦争に嫌気が差し、逃れてきたのだという。
『そうだ。今夜くらいはここで休んでいくといい。すまないが、長居はさせてやれない』
私が少し残念そうにしていることに気がついたのか、マリアさんやシルがフォローを入れる。
『気を落としなさんな。こちらも生きるためだ』
『そうだな。マリアさんの言う通りだ、ことは────もし、俺たちが留まっていることが知れれば迷惑をかけかねない』
『それだけさ』
たしかに──二人の言っていることが正論だった。
マリアさんは悪意はない。
なぜだろうか。
私は彼女に尋ねた。
『簡単な話さ。ここには"憎悪の輪廻"が渦巻いている。
せめて私や子どもたちにはその中憎悪を繰り返してほしくないだけさ』
彼女もここに来る前に何かあったのだろう。
彼女の言葉には相応の重みがあった。
夜、小さな暖炉のそばで休んでいると、
少女がひっそりとこちらを見ていた。
シルが気づくと、私に言った。
私はなるべく少女を怖がらせないように、優しい声音できていいよと話した。
すると、少女は控えめな足取りで私たちの方に来ると、少し距離をとって横にちょこんと座り話した。
「怪我は大丈夫?」
『怪我はマリアさんの魔法で、少しは軽くなった……それより』
「どうかした?」
『ごめん、なさい』
「どうして謝るの?」
『お姉さんの言葉、否定しちゃった。本当は治るってわかったのに、怖くて。
でも、お姉さんがやっぱり"聖女"かもって思うと……』
「仕方ないよ。
それほどに君たちが抱える恐怖や憎しみが強いことがわかるから」
私の心からの言葉だった。
私だって少女と同じ立場だったら、同じように考えていたかもしれない。
少女がそう思うことは必然なのだ。
私は再び祈らなかった。
祈りは受け入れられないときっと届かないのだ。
少女が来てくれたのはきっと歩み寄ってくれたからだ。
それも恐怖に足がすくんだ一歩。
決して私たちは強くない。
十分だった。
少女が去るとシルは私に大丈夫かと尋ねた。
私はシルの体に体を傾けると、寄り添うようにして眠りについた。




