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拒絶された祈り

 私が番をしている時、不意にシルの耳がピクリと動く。

 シルは起きあがると、地に響くように低く唸った。


『魔物が現れた』

 私は咄嗟に目配せをする。

「行こう」

 シルの背に乗り、魔物の現れた場所へと向かった。


 そこには昨日シルを罵倒し、石を投げた子どもたちがへたりこんでおり、魔物が襲いかかる寸前であった。

 シルが割って入るとがるると威嚇した。


 魔物から声が聞こえる。

『僕たちに近づくな』

『あっち行って!』


 声と共に黒い粘性を帯びた黒がシルに襲い掛かろうとする。

 シルは吠えると、そのまま魔物に齧り付いた。


『やだ、やめて、痛い────』

「シルっ」

 シルを制止しようとするが、言葉に詰まる。

 どうしたらいいか、わからない。


 私じゃ、救えない。


 飛び退いたシルは後ろへ後ずさる。

 そして、風を巻き起こすとその竜巻を魔物へとぶつけた。


 魔物は『いやだ、消えたくない』、そう言って、風に霧散した。

 私たちの元に静かな夜が戻ってくる。


 私がシルの背をおりた。

 すると、容赦のない言葉が投げかけられた。


 それは獣人の子たちの言葉であった。

『助けたつもりかよ……もともとはお前たちが!』

『聖女の犬がッ!』

『私たちは助けてなんて言ってないのに!』


 その言葉にシルは珍しく皮肉を言う。


『そう言うのは抜かした腰をどうにかしてから言ってくれるかな?

 君たちを助けたつもりはこちらも毛頭ないとも』


 罵倒にまったく気にするそぶりもないシルに子どもたちは苦々しそうに舌打ちをする。

 しかし、子どもたちは悔しさにその場から逃げ出すのかと思ったが意外にもその場を動かなかった。

 まるでその場に止まらざるをおないそんな表情を浮かべていた。


 私は注視した。

 そこでようやく気づいた。

 その場を去ろうとするシルを制止する。


「ちょっと待ってシル」

『どうかしたかな』


 私たちはその子たちに駆け寄った。

 そしてその中の女の子の手を取る。残りの二人は慌てて私を威嚇した。

 そう女の子は──


「怪我してる……」

 

 どれくらい深い傷かを確認すると、彼女の腕からはひどく出血していた。


 さきほどの魔物にやられたのだろう。

 この子たちは、女の子が怪我をして、その場から離れられなかったのだ。


「いま手当するから!」

『放して!』

「どうかこの子の怪我が"治りますように"」


 すると淡い光がその患部に集まり出す。

 怪我が治る。そう思った瞬間、『いやッ』という叫びとともに光は弾け飛んだ。


『こいつ、もしかして──聖女なのか』


 するとその表情は驚きから憎しみへと変わる。

 そして私に悪意の牙を剥こうとした。


 その時シルから殺気が発せられた。それは私にでも感じられるほど強烈でその場の誰もがシルに畏怖を向けるには十分であった。


『その人に触れてみろ────子どもでも容赦はしない』

「ひっ」


 その子たち剥いた牙を隠し、私から距離を取るった。


『ことは。ここは放っておけばいい』

「だめ。この子が怪我してるせめて、手当だけでも」

『──わかった』


 殺気に圧倒されながらも、力強くひかない私に、シルは渋々、了承してくれたらしい。


 私は持っていた清潔な布で女の子の傷を止血した。


「これでよし。えっと、君たちの親御さんは?」

『──いない』

「じゃあせめて安全なところまで送るよ」

『ことは』

「ね?」


 私は何か言いたげなシル宥めて丸め込む。

 シルは仕方ないと、私に渋々付き合ってくれた。


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