選ばれた聖女
ここは荘厳な白亜の大聖堂。
神杖を掲げる私の姿を、ステンドグラスから差し込む光が
まるでスポットライトのように照らしていた。
その前に列を成した民衆は、順番が来ると膝をつき、祈りを捧げる。
「神様と、聖女様に祈りを」
「そなたらに、加護を」
杖を振るえば、淡い光が舞い、膝をついた民へと降り注ぐ。
────私は、間違っていない。
民は歓喜し、私に礼を述べる。
────私は、正しい。
それを見た、ずらりと並ぶ民たちの悩める表情が、ひとつ、またひとつと晴れていく。
私は目を閉じる。
すると、昨夜の王の言葉が脳裏によみがえった。
「民には、それらしく見せておけばいい。
今回の礼拝の目的は、あくまで不安の鎮火だ。
街に現れ始めた魔物への不平不満を、祈りで覆えばいい」
……これは、偽りの加護。
いや、加護ですらない。
ただ、“そう見える”ようにしているだけ。
「それより、偽物と狼の噂はあるが、行方はまだ掴めていないそうだ。
だが、この礼拝を続ければ、より一層、聖女を信奉する者は増えるだろう。
献金も集まる。国も、我々も潤う」
王は笑っていた。
民を、祈りを、嘲るように。
それでも──
なぜ、私は自問するのだろう。
私に間違いなどないはずなのに。
私こそが、聖女。
それは紛れもない事実だ。
皆が私に傅き、祈りを捧げる。
必要とされている。
求められている。
……ならば、なぜ迷う。
私は聖女なのだから。
そうでなければ、ならないのだから。




