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第一章「接触」NPO「寄り添いネットワーク」の日々
東京、新宿。
高層ビルの谷間に建つ古びた雑居ビルのワンフロアに山川悟が勤める
NPO法人「寄り添いネットワーク」の事務所はあった。
田舎の自然豊かな環境で育ち、関西の大学院で社会学の修士号を取得した悟は「世の中で役に立たい」
という純粋な向上心から寄り添いネットワークへの就職を決めた。
優しさ、思いやり、誠実、責任感。彼の中に満ちているのは人間が持つポジティブで肯定的な側面ばかりだった。
「山川くん、いつも通り頼むよ。この地域なら君が一番聞き込みに慣れているから」
上司の松本が穏やかに声をかける。松本の声には彼の誠実な仕事ぶりに対する確かな信頼が滲んでいた。
悟が受け取ったのは近隣の高齢女性から寄せられた飼い猫「ミケ」の捜索願だった。
「お任せください。猫ちゃんは必ず僕は見つけ出します。」
悟の調査方法はシンプルだ。AIやデータ分析だけでなく、人の話に耳を傾けること。
彼の誠実さは警戒心の強い街の人々の心を自然と聞かせる力を持っていた。
猫はそう遠くにはいっていないはずだ。
一時間後、悟は歩道の脇で怯えるミケを発見した。
「本当にありがとう。山川さんみたいな優しい人がいてこの街も捨てたもんじゃないね」
依頼主の高齢女性は涙を流して感謝した。
この「小さな問題解決」の積み重ねこそが、悟のモチベーションだった。




