9 魔法石2
連日、狩りで戦闘訓練しつつ、素材を売ってお金を貯める毎日が続く。
狩り始めて数日で硬貨がズボンのポケットに入れておくには多くなったので、ヨーコ曰く「タケノカワみたいな素材」の紐を買って数枚ごとにまとめて縛って、音が鳴らないようにして持ち歩いていたが、さらに溜まってくるとポケットが膨らみだした。さすがにそろそろ限界だった。
ちなみに布で包まず紐で縛ったのは安いからだ。
同時に、一度、誰かに盗まれてきれいさっぱり無くなったお皿とスプーン、グラスの3点セットがまた相当な数になってきた。
勿論、今はもう拠点の部屋には持ち帰っていない。発雷鼠の狩場の近くで、根元付近に虚のある巨木を見つけたので、こちらも数個ずつ紐で縛って虚に放置してあった。
☆
そんなある日。最早、小さくてそこそこすばしっこい発雷鼠より断然、楽に狩れるようになった発火蜥蜴を見つけ、魔法を使わせてから頭を殴り、一撃で仕留めた私は、上機嫌で解体に移った。
今日はすぐに獲物が見つかったので、時間はまだ昼前。発火蜥蜴を狩れたからもうこれで帰っても良い。ただ、訓練の意味もあるのでいつもは夕方まで狩りを続けている。
そうして多く狩れた時は、もったいないが解体後、木に吊るした状態のまま置いて帰る。まあ、他の魔物が食べるだろうし無駄にはならない。事実、いつも翌日には無くなっていて、紐だけ残った状態になっている。
ちなみに吊るして解体するのは血抜きしやすいのと、地面でやると汚くなるからだ。まあ一応、「洗浄」の魔法があるので地面で解体しても平気なんだけど、それは人前では出来ないので普通に吊って解体しているのだ。
発火蜥蜴は意外にも木の上の方で活動する魔物で、当然、上から襲って来るのだが、そのせいで割と何処にでも居るイメージだ。
そんな発火蜥蜴を枝に吊るして腹を裂き、木の根元に掘った穴に、掻きだした内臓を捨てる。近くに小川もないので流水に晒す代わりに、「洗浄」の魔法で洗うだけだ。肉焼けを防ぎ、味にも気を配って処理したらもっと高く買ってくれるかもしれないが、これでも十分高いので文句は無い。
その時ふと、捨てた内臓の形がいつもと違う気がして「洗浄」の魔法で洗って手に取って見てみると、微妙な凹凸で気づかなかったが魔石らしいふくらみがあった。
そのふくらんでいる部分を切ってみると、魔石が入っていた。取り出して「洗浄」の魔法で洗い、シャツの裾で水気を拭うと、魔石に魔力を流し込んでみる。
自分の意思で流し込むのは初めてだが、既にやり方は分かっていたし、自然に魔力を注入する事が出来た。
ヨーコによれば、ここで何の反応もなく魔力を吸収するだけならただの魔石。そして普通は、ほとんどの場合がただの魔石だ。そして内部の魂が反応して魔法を準備すれば魔法石である。
そのため、魔力の注入は落ち着いてゆっくりと少しずつが原則だ。いきなり勢いよく魔力を注ぐと、万が一、危険な魔法を持っていた場合、目標も定められずに魔法が放たれ自爆する事になる。
そして――初めて手に入れた魔石から、魔法の反応が返ってきた。
「おっ!?」
私は慌てて、魔力注入を止めた。
そんな私に反応して、ヨーコが声を弾ませる。
(その反応は、ついに……?なのね!?)
「うん、魔法石みたい♪」
(やったわね!おめでとう、ミラ♪)
ヨーコが心から嬉しそうにそう言ってくれたので、じわっと湧き始めていた喜びが、一気に溢れ出した。
「やっ……とだよ!」
ヨーコが言うからやってたけど、そもそも魔石が出なかったので正直、魔石よりレアな魔法石なんてホントに出るのか?と半信半疑になっていた。
でも、ホントに小さい魔物でも魔法石って出るんだ――そう思ってヨーコに言うと、普通の探索者はいちいち確かめたりしないし、魔力注入が出来ない人は普通に多いから、ただの魔石と思って見逃すことが多いらしい。
だけど、持ち込まれた石がクズ魔石と呼ばれるほど小さくても1個ずつ検品するまともな魔石屋なら、魔法石を発見する事もある。結果、探索者が知らずに二束三文で売った弱い魔法石は貴族にかなりの高値で売り捌かれるという……真面目な魔石屋の一人勝ち状態だけどイカサマとまでは言えないので仕方がない。
という事は、貴族なら魔法石を持っている人も結構いるってことかもしれない。
(まあとにかく、よかったわぁ~♪ねぇねぇ、早速、使ってみてよ♪)
ヨーコが浮かれた感じでそう言うので、私も一瞬冷めかけた喜びが再燃し、やってみたくなった。
いつもヨーコが「洗浄」の魔法や「レモンティー」の魔法、「カレーライス」の魔法を使うのを感じているのでやり方は分かる。
そして、何十匹と戦ったので発火蜥蜴の魔法がどんなものかも目に焼き付いている。
私は自然、左手を前に突き出して手を開くと、掌から吹き出し目の前に放射状に広がる炎を思い描き、右手に握った魔法石に勢いよく魔力を込めた。
その瞬間、私の掌の少し先から炎がブワッ!と瞬間的に放射状に噴き出して消えた。発火蜥蜴の「発火」の魔法の場合は開いた口の少し前あたりから噴き出していたが、それ以外は全く同じだった。
(お見事、ミラ。魔法ゲットと魔法習得、いっぺんに達成できて良かったねぇ♪これでミラも正真正銘の魔法使いねぇ♪)
ヨーコにそう言われると、実感が湧いて来る。自力で獲った魔法石、自力で発動する魔法。確かに、これでやっと魔法使いになった感じがした。じんわりと喜びも湧いて来る。
「ありがと、ヨーコ。もちろん、全部ヨーコが教えてくれたおかげだよ」
(えぇ~そんなことないわよ~♪)
そんな風に言いながら、ヨーコはまんざらでもない雰囲気を出していた。
実際、魔法の情報をくれたのもヨーコ、練習できたのもゲットできたのも全部ヨーコのおかげで間違いない。
(ただ、まあ大した魔法じゃないから、無敵には程遠いわ。だからあんまり調子にのっちゃだめよ?)
そして釘を刺すのも忘れない。ヨーコはまるで私の親か師匠みたいだ。そして私はそれが嫌ではないと感じている。
私が素直に頷くと、ヨーコは鼻歌混じりで上機嫌な雰囲気を醸し出した。
(あとは同じ要領で魔法石を集めながら、同時に武器の練習や他の色んな知識を身につけて行けば、ミラは賢いからきっとすごく強くなれると思うわ。そしたらいずれは堂々と「魔法使い」と名乗れる時が来るかもしれない。まあ別にわざわざ名乗る必要はないけどね)
「分かった――ねえ、ヨーコ」
(ん、なぁに?)
「そういうの、これからも色々、私に教えて欲しい――だから、ヨーコが私の師匠になってくれない?」
(え、なに、そーいうの好きなの?良いわよ別に。でも「師匠!」とか「先生!」とか、堅苦しいのはイヤよ。その辺は今まで通りでね♪――でも、そうは言ってもだいたい教えちゃったし、さすがにもう秘密なんてないわよ?)
私はちょっとだけ緊張してお願いしたけど、ヨーコはいつも通りのテンションで軽くオッケーしてくれた、というかちょっとだけ流された感じもする。
もしかしたら既に実質、師匠みたいなもんだからわざわざお願いする必要なかったとか、そういう事だろうか?何だか私は急に恥ずかしくなった。
そんな私の気持ちを察したのか、ヨーコが――
(そうだわ、ミラは今日まで一所懸命、頑張って魔法石を自力でゲットして、いつの間にか魔法も習得しちゃってたわ。そんな頑張り屋の弟子にわたしからお祝いをしましょう♪)
――と、優しい声で言った。
「お祝いって、何かくれるって事?うわ~っ♪めちゃ嬉しいんだけど!」
(そういうミラの素直なとこ、大事よ~何でもしてあげたくなっちゃう♪)
私は期待に胸を膨らませて、うきうきしながらヨーコの言葉を待つ。
(お祝いは――「取って置きの魔法の秘密」よ♪)
「おぉ~♪…………ん?取って置きの『秘密の魔法』じゃなくて、取って置きの『魔法』の『秘密』なの?」
(う~んもう、ミラったら、するどいわ~♪その通りよ。「レモンティー」の魔法や「カレーライス」の魔法には秘密があるの!)
「まだあったの……ヨーコ、秘密ばっか」
(ふふふ。それが女ってものなのよ♪)
ヨーコが何やらドヤっている空気感だ。こーいうときは突っ込まないほうが良い気がする。
「それで、秘密ってどんなの?」
軽くスルーされてヨーコはちょっと残念そうな雰囲気を滲ませたがすぐに応じてくれた。
(それはね――)
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回線トラブルでネットが使えず少し遅れました。すみません。
代わりという訳じゃないけど今日は連続2話アップしたいと思います。
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