86 エピローグ
私とロナは領主館の馬車で送ってもらい、やっとのことで宿屋に帰って来た。
もうすでに夜になっているにも拘らず、宿屋のある通りは夕方の事件の余波の影響か、まだ人通りが多くあった。
私たちは挨拶もそこそこに、定宿の部屋に入り、ご飯も食べず爆睡した。ロナがお腹減ったと文句を言うかと思ったが、ロナも色々疲れているらしく、私とほぼ同時に眠ったらしかった。
☆
明けて翌朝。
朝食と朝のいつもの儀式各種を終わらせると、ロナが私のベッドに乗ってきて座った。これからお楽しみタイム――魔法石の分配の時間だ。ロナの意見を聞きつつ基本的には私が決めていく。
まず2つある「飛礫」の魔法石と「隠形」の魔法石は1つずつ分ければ良いので簡単だ。「隠形」の魔法石は既に私は持っているのでロナが1つ持ち、もう1つは私の「異空間収納」の魔法の中に入れておくことになった。いずれ、売ったり交渉とか何かに使えるかもしれない。
次に「氷礫」の魔法石はロナが「氷の礫」の魔法石を持っている。おそらく同じ物なので私がもらい、ロナには「氷槍」の魔法石を渡す。
「炎弾」の魔法石は私が持っている「炎の玉」の魔法石と同じ感じだろうという事で、ロナに渡す。代わりに私は「集音」の魔法石を貰った。
ここまでで残りは3つ。「透明化」の魔法石、「認識阻害」の魔法石、「擬態」の魔法石。「擬態」の魔法石は1つ持っていて、今はロナに渡してあるので私が貰う。
そして残り2つは今回の目玉といえる強力な魔法石。効果も似ている。「認識阻害」の魔法は自分の存在が人の注意を引きにくく、記憶にも残りにくくなる魔法。対する「透明化」の魔法は文字通り姿が透明になる魔法。
私は「認識阻害」の魔法の方がやや強いと思う。「透明化」の魔法は強力だが、姿が見えないだけなので、魔力探知や音、匂い、接触など色々な方法で気づかれる可能性がある。
一方で「認識阻害」の魔法は対象と目を合わせたり、目の前で激しくアピールしたりしない限り、そもそも意識に上らない。気付かれる可能性もあるにはあるが、ミスをしない限り、よほど強い魔法使いが強固な意志で捜索した場合くらいだろう。
ロナと希望を出し合うと、ロナは「透明化」の魔法石を選んだ。「認識阻害」の魔法というのが説明されてもいまいちイメージ出来ないらしい。
そんな訳で「認識阻害」の魔法石は私が貰う事になり、魔法石分配が終わった。
それにしても手に入れた魔法石が相当増えて来た。これ程たくさんの魔法石を持っている魔法使いはどれくらいいるのだろうか?それを考えると、ますます気を付けなくてはいけないと思う。
ちなみに今の私達の能力値はこんな感じだ。
□ ミラ(人族)(10)
□
□ 筋力 6 (23)
□ 瞬発力 9 (47)
□ 持久力 6 (20)
□ 耐久力 5 (19)
□ 精神力 10(18)
□ 魔力 18
□
□ 棒術 LV.10(UP)
□ 剣術 LV.1
□
□ 魔力感知 LV.10(UP)
□ 魔力制御 LV.8(UP)
□ 魔力探知 LV.10(UP)
□ 魔法制御 LV.12(UP)
□ 身体強化 LV.14(UP)
□
□ 敏捷力 LV.12(UP)
□ 瞬発力 LV.12(UP)
□ 精神力 LV.8(UP)
□ 筋力 LV.2
□
□ 発火 LV.1
□ 異空間収納 LV.4(UP)
□ 洗浄 LV.3
□ 短距離転移 LV.7(UP)
□ 雷撃 LV.3
□ 隠形 LV.1
□ 剛力 LV.1
□ 慣性力 LV.1
□ 炎の玉 LV.1
□ 粘着 LV.2
□ 凝固 LV.2
□ 透明な防壁 LV.3(UP)
□
□ 解体術 LV.2
☆
□ ロナ(人族)(10)
□
□ 筋力 9(28)
□ 瞬発力 8(32)
□ 持久力 7(17)
□ 耐久力 6(16)
□ 精神力 12
□ 魔力 10
□
□ 棒術 LV.3
□ 剣術 LV.2
□ 拳闘術 LV.1(NEW )
□
□ 魔力感知 LV.7(UP)
□ 魔力制御 LV.5
□ 魔力探知 LV.4(UP)
□ 魔法制御 LV.4
□ 身体強化 LV.10(UP)
□
□ 敏捷力 LV.7(UP)
□ 瞬発力 LV.7(UP)
□ 筋力 LV.4(UP)
□
□ 発火 LV.1
□ 剛力 LV.2(UP)
□ 氷の礫 LV.2
□ 剛体 LV.2(NEW )
□ 剛腕 LV.1(NEW )
□ 解体術 LV.1
魔法石は私が「ヨーコ」「炎の玉」「氷礫」「雷撃」「剛力」「隠形」「擬態」「認識阻害」「短距離転移」「慣性力」「透明な防壁」「透明な腕」「集音」で13個。
ロナが「発火」「小雷撃」「氷の礫」「氷槍」「炎弾」「剛力」「剛体」「剛腕」「斬撃」「隠形」「擬態」「透明化」で12個。
2人で共用しているのが「粘着」「凝固」「脱色」の3個という配分になっている。戦力が偏らないように分けているつもりだが、やっぱり私が好みの魔法石を優先的に取っちゃってる感は多少ある。ちなみに「雷撃」は戦闘後、ロナに返してもらった。
☆
今回、まず私の目を引いたのは基礎能力値の魔力が一気に増えた事だ。やはり「枯渇しそう!?」という危機感を感じた事が関係しているのだろうか。
能力値補正も非常によく育っている。前回の鑑定時からそれほど経っていないが、これ程上がるというのは、今回の戦闘がそれだけ危険だった――今までよりさらに命を脅かされた、という事だろう。
そして「異空間収納」がまた上がっている。今のところ色々考えても試しても、変化は全く見られない。レベルが上がっている以上何かが向上していると思うのだが――。まあ引き続き試していきたい。
一方、ロナも能力値がかなり育っている。もうすぐ瞬発力以外は追いつかれそうだ。というか筋力は補正込みでもう追い抜かれているし、全体的にはもうほぼ追いつかれたと言ってもいいのかもしれない。
そしてやはり、厳しかった今回の戦闘由来のスキルが伸びている。剛体がいきなりレベル2で表示されているし、剛腕と拳闘術も生えている。相変わらずロナは成長が早い。
だが私もロナも大幅に成長出来て、魔法石もたくさん手に入って良い事も多かった反面、大きな課題も見えてしまった。
この先、領主一族を襲った例の組織が襲って来る場合、今回の戦闘の結果を踏まえて魔法使いの数をさらに増やしてくる可能性がある。
実戦が可能で、非道な任務を嫌がらない、そんな危険な魔法使いを例の組織がどれほど抱え込んでいるかは分からないが、5人送り込んでダメだったのだから、それでも襲撃をあきらめないなら普通は大幅に人数を増やすか、より腕の良い魔法使いを使うかだろう。
正直、腕の良い魔法使いを用意するより、魔法石を用意して適当に訓練して魔法使いの人数を揃えるほうがまだ簡単だと思う。て言うかそもそも魔法使いがこんなにたくさんいるとは思っていなかったし、出会った魔法使いの半分以上が悪人だったのには唖然とするが――。
ともかくそうなると、次襲われる時は魔法使い10人とかそれ以上で囲まれて不意討ちで一斉遠隔攻撃とかも普通にありそうだ。
それをたとえ咄嗟に「透明な防壁」の魔法で防御出来ても、魔力を喰い潰されて訳も分からない内に死亡、って事になる可能性が高い。
この、多数の魔法使いと戦う際の魔力切れをいかに防ぐか、という問題。
単純に考えたら、「透明な防壁」の魔法で防がず、別の何かで防ぐ、という事だろうか。
魔力を相殺する戦い方では人数で負ける。なら、岩や建物や頑丈な何かで攻撃を受けるのが1つ。だが、常に都合のいい盾があるとは限らない。
2つめは、逃げる。そもそも攻撃を受けない防がない。だがこれも私とロナだけならともかく、誰かと一緒の時は難しい。
3つめは誰かに任せる。魅力的だが今のところ領主家くらいしか頼れる人はいないし、常に頼るわけにはいかない。
第一領主家の魔法使いは領主家優先だ。養子縁組を断った以上、お互い守り合うという範囲を越えてまで守ってもらう資格は無い。
それにやっぱり、私たちは魔法使い。出来ればこの問題も魔法そのもので解決したいところだが――。
☆
――数日後、リヴァーディアの領主館の執務室。
「ご領主様、気になる報告が――」
「そうか。では人払いを」
「は。只今」
側近のトルストイ以外、護衛の騎士も執務室から出される中、トルストイが一人の男を執務室に招き入れた。
「報告を」
「は。私は先日まで西のプリヌディアに間者として潜入しておりました。あるパーティで偶然、例の組織の関係者と思われる人物と遭遇しましたので急ぎご報告のため戻りました」
「何、本当か!?」
領主は驚いて思わず椅子から立ち上がった。そしてその事に気づいてすぐに座り直した。
「――は。確度は低いのですが、何しろ例の組織の情報はこれまで殆ど噂や流言といった類のモノしかありませんでしたので――」
「そうだな。それで?」
頷きつつ領主が急かす。
「は。プリヌディアの貴族が多数参加されるパーティ会場で諜報活動中、部下と雑談を装っていたのですが、たまたま例のカレーなる珍奇なメニューを話題にした際、ミラ様とロナ様のお名前に反応した人物がおりました」
「――それだけか?」
「は。それも一瞬の事で、危うく見落とす程の小さな反応でした」
「――アンドリュース様、カレーの話題は我領の平民の間でこそ広まりつつありますが、貴族はまだまだ下賤な物と忌避する者も少なくありません。まして他領の貴族です。商人ならいざ知らず、貴族で知っているなら、その方はなかなかの好奇心をお持ちのお方と思われますが、だとしても隠す必要はありません。それも反応を示したのはカレーではなくお二人のお名前に対してですし、そもそもお二人は公式にはラミナ商会のラミラ様、ラロナ様と名乗っておいでなのです。ミラ様、ロナ様というお名前は知る人ぞ知るというところですので――しかも反応した事など無かったかのように振舞われたとの事です」
先に報告を受けているトルストイが怪しいと思われる理由の数々を列挙する。
「――なるほど、小さな疑いもそれだけ集まると些か気になるな。カレーの噂は広まったとして店主の普段使いの名前などは親しい知人かよほどの物好きか付き合いのある商人以外は知らぬだろうな。そして、確かに知っていたとして隠す必要などない」
「はい。本来は知らぬ事にしておきたかったのではないかと思います。ですが、咄嗟の事ですし、最近受けた報告でお二人の名前を聞いていたので、思わず反応してしまったのではないかと」
トルストイが頷きつつ言うと、領主も目を光らせた。
「なるほど、例の組織の関係者が最近受ける報告と言うと、先日の襲撃についてだろうな」
トルストイと間者が無言で頷き肯定する。確度が低いとしても確かに無視できない情報だった。
「――それで、その者の名は?」
「は。トライドール・プリヌディア様。プリヌディア領主家の継嗣たるお方です」
「――大物だな。それに、寄りによってプリヌディアとは……」
領主は苦々しい表情で呟いた。何故ならプリヌディアはリヴァーディアにとって親戚とも言える領地だったからだ。
☆
同じ頃、とある豪奢な一室。
「――だから手を出すなと言ったのに」
「は。申し訳ございません」
その部屋の主は長椅子にもたれながら本を読んでいたが、ため息を吐きながら顔を上げた。
「まあいい。処理はまかせるよ。あと、もうこれ以上手を出すなよ?」
「は。肝に銘じて」
「――ああ、うん、でもそうだな。代わりに噂など流してみるか?」
「は?噂でございますか?」
「ああ。やられっぱなしと言うのも気分が悪いものだろう?ふふふ、そうだな。社交界の悪党どもにそれとなく、『物凄い数の魔法石を持つ魔法使い』の噂を流してあげたらいい」
「は。かしこまりました」
側近らしき男が慌てて豪奢な部屋を退出していった。
「――さあ、どのくらい釣れるかな?」
一人残った豪奢な部屋の主はまた本に視線をもどしつつ、両の口角を吊り上げるのだった。
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ここまで読んでいただいて、ありがとうございます♪
嬉しい事に累計1万PVを越えることが出来ました。とても喜んでおります♪
このまますぐに第4章を投稿したいところですが、ストックがついに切れてしまいました。
私は結構修正しまくるので、今日書いたものを明日投稿するとかは無理だとすぐに気づきました。
なので、今後は章ごとに書き終えてから1日1話投稿という感じになると思います。
前作品はとにかく「書いて投稿して完結させる」ことだけを目標にしていましたので、書き上げてから投稿することで簡単に達成できました。
そして今作品の目標は「投稿しながら完結させる」ことです。
無理かもしれませんが頑張ります。よかったら続きも読んでもらえると嬉しいです。
長文失礼しました。
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読んでくれて、ありがとうございました♪
もし続きを読んでも良いと思えたら、良かったらブックマークや評価をぜひお願いします。
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