8 成果
毎日毎日、飽きもせず、私は発雷鼠を狩り続けたが、依然として魔法石も魔石も1つも出なかった。
ただ、1か月以上ヨーコが私の魔力を使って「レモンティ」の魔法、「カレーライスの魔法、」「洗浄」の魔法を使い続けたおかげで、体内で魔力の動く感覚をハッキリ感じられるようになってきた。
それにより、発雷鼠との戦闘も進化した。
☆
ある日、ヨーコが昔の事を少し思い出した、と言って、1つの話をしてくれた。
それは瞬き(まばたき)よりも速く「タマ」を撃ち出して敵を殺す「テッポウ」という武器の話だった。
弓から撃ち出された矢なら距離によっては目で追える場合もある。ところがその「テッポウ」の「タマ」は速過ぎて音が聞こえた時には標的に当たっているほどで、とても人が目で見る事は出来ないと言う。
私が「じゃあ狙われたら終わりなの」と聞くと、「外れる事もあるけど、基本、狙われないようにしなくてはいけないのだ」とヨーコは言った。
私が顔を青くしていると、ヨーコは笑いながら、今度はそんな「テッポウ」より強い戦士の話をしてくれた。
その戦士は、勿論、普通の人よりメチャクチャ強いけど、人である事には違いないので、「テッポウ」で撃たれたら同じ様に傷つくし、目で見て避ける事も出来ない。
だけど、その戦士は「テッポウ」を使う者より速く反応して動く事ならできたので、相手が「テッポウ」を撃とうとしたその瞬間を感じ取り、撃たれる直前――ほぼ同時――に回避する事で、逆に相手の隙を突いて必殺の機会とし、常勝無敵の存在となったという。
私はその戦士の戦いを想像して凄く興奮した。そんな、誰も敵わないほど強くなれたら、犯罪者に怯えず、言いたい事が言えるのに、と思ったのだ。
ちなみにヨーコは「まあアニメの話なんだけどね」とか何とかボソボソ言っていた。
ただ、その話を聞いたときから、私は発雷鼠の小雷撃をかなりの確率で回避できるようになった。
魔力の動く気配に敏感に気づけるようになった私は、発雷鼠が魔法を使う瞬間、魔力を動かした瞬間を察知して思い切り飛び退く事で、小雷撃に当たらなくなったのだ。
さらに小雷撃の魔法を使った後、発雷鼠は一瞬、固まってしまって動かないので、小雷撃を避けながら発雷鼠に向って斜め前に飛び込めば、ほぼ確実に致命の一撃を入れることが出来ると気づいた。
こうなると、もう発雷鼠狩りに殆ど緊張感はなくなった。敵ではなく、ほぼ確実に安全に狩れるただの獲物になったのだ。
ますます私の稼ぎは安定し、毎日カレーライスとレモンティーを食べて飲むおかげでガリガリではなくなり、少しずつ力もついて来た。
そんな私に、ヨーコは満足そうな雰囲気だった。ヨーコは思い出したと言ってたけど、何となく、私に発雷鼠との戦い方のコツを教えるために「テッポウ」の話をしてくれたような気がする。
私はヨーコがしてくれる話を聞くのが楽しみになった。
ヨーコは魔法だけでなく「棒術」も教えてくれた。
ただ、「ネット」で見た「ショーリンジ」とか「ナギナタ」から「ヒント」を得て独自に考えて「サイコーセー」した「オリジナル」だ、とかなんとか説明は相変わらず謎だらけだった。
それでもその「オリジナル」の「棒術」を意識して自作の木製の杖を振ることで、私の一撃は着実に鋭さを増して行き、戦いに自信もついて来たのだった。
そういう私に気づいたヨーコが「最強無敵に上り詰めたのに寝込みを襲われてあっさり死んだ戦士の話」をしてくれる。
他にも「最強無敵に上り詰めたのにあっさり毒殺された戦士の話」や「最強無敵に上り詰めたのに『ハニートラップ』に引っかかって死んだ戦士の話」などを話してくれた。
私は「最強戦士の倒し方」の話と思ってワクワクして聞いていたが、「最強になっても油断したら殺される」という話だったらしく、ちょっと不機嫌になったヨーコに割としつこく注意された。
同じ頃、ヨーコが突然、こんな事を言い出した。
(ミラにもっとやる気と高い目標を持ってもらうために、今現在のミラの「能力値」を教えてあげるわ)
「『ノーリョクチ』って?」
(ミラの今の強さを数字で表したものが「能力値」ね。自分の強さが目で見えたらもっと増やしたくなるでしょ?)
「えー、凄いね!」
私が喜ぶと、ヨーコは満足そうな雰囲気をだしながら私の「ノーリョクチ」を教えてくれた。
□ ミラ(人族)(9)
□
□ 筋力 6
□ 瞬発力 9
□ 持久力 6
□ 耐久力 5
□ 精神力 10
□ 魔力 12
□
□ 棒術 LV.2
□ 魔力感知 LV.3
□ 魔力制御 LV.1
□ 魔法制御 LV.1
ヨーコの言葉と同じように頭の中に文字と数字が浮かぶが、私は数字はかろうじて読めはするものの、文字は読めない。
なので全てヨーコが解説してくれた。それによって全部の数字についている文字の意味を知ったのだが、一番意外だったのは私が9歳だったと言う事だ。
私自身も自分の年齢を知らないのに何故ヨーコに分かるのか?そう聞いてみると樹木と同じく私の魔力に刻まれた「ネンリン」のようなものを読み解けば判るらしい。
ちなみに樹木の「ネンリン」って何?って言うと私の自作の杖の断面にある「しましま模様」の輪っかがその「ネンリン」であり、輪っか1本で1年分だという。
ちなみのちなみに私の杖は私より年上の11歳だった。
それはともかく、おかげで私は頭と魔力の成長が早いと分かった。
ヨーコによれば、能力値の数字は「大人の男の人の中で、強くも弱くも無い人を大体、能力値10」として、それと比較して私は「どのくらい強いか弱いか」という事を表しているらしい。
後半は身につけた技術力の段階評価で数字が上がる程、熟練していて腕が良い、という意味だという。
確かにヨーコの言う通り、この数字が上がれば自分が成長して強くなったとハッキリ分かるので、やる気が出て来る。この数字を早くもっと上げてやりたいという気持ちが溢れて来るのが分かった。
「――にしても、『取って置き魔法』とか『能力値』とか、ヨーコって秘密多すぎない?」
(やぁねぇ、忘れてただけよ~♪関係ある事を見たり聞いたりすると、忘れてた事を思い出したりするじゃない?そんな感じよ)
なるほど、そう言われればそうかもしれない。ともかく、ヨーコが教えてくれる事は全て役立つことばかりなので、「忘れてた」というのがホントでも嘘でも別にいい。ただちょっと思っただけだ。
その頃から、私はもう一つの標的だった「発火蜥蜴」も狩り始めた。
吐き出す炎が広がるので、最初は少し戦い難かったがその分、射程距離は短いので慣れるまでは十分に距離をとることで対処出来た。
違いはその程度で、発火蜥蜴も発雷鼠と戦法自体は殆ど同じなのであっという間に狩りの獲物がもう1種類増えたのだった。
そして発火蜥蜴は発雷鼠より少し見つけにくいが、身体が大きいので仕留めると売却報酬が美味しかった。
発雷鼠は5匹で小銀貨1枚だったが、発火蜥蜴は1匹丸ごと売るとそれだけで小銀貨2枚も貰えるのだ。
そうして森を駆け巡りながら狩り続け、気づけば約2か月ほど経っていた。
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