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7 盗難

 お皿やグラスについてロナに聞かれた私は、とっさに森で拾ったと嘘を吐いた。ロナに自分にも場所を教えてくれと言われたが、悪いと思いつつ断った。

 ロナが残念そうな顔をするので良心が咎めたが、そもそもそんな場所は無いわけだし、さすがに魔法石の事は誰にも話すつもりは全く無かったから。

 

 我ながら、すぐバレそうな嘘だと思うが、とっさには上手い言い訳が思いつかなかった。

 

 ……やっぱ、持って帰るのやめよ

 

 私は今後はお皿やグラスは持って帰らないと決めた。そして今、拠点にある分も少しずつ森に運んでとりあえず何処か、狩場の近くに置いておこうと思った。


 売りたいけど、やっぱり色々、聞かれたら答えられない。そこは秘密って事にすれば良いのかもしれないけど、私は貧民街の駆け出し探索者なので何処かから盗んで来たと思われても困るし、そうじゃなければ森で遺跡か何か発見して隠してるとか思われて大事になりそうだ。

 

 そうなると、独り占めしようとしてると思われて、面倒なことになる。発見者が独り占めしたって何も悪くは無いと思うが、後をつけられたり脅されたりしても、本当は遺跡なんてないので命と引き換えに差し出せる秘密がない。


 何か良い言い訳は無いかと考えつつ、引き続き、発雷鼠の巣穴が多いと目を付けた、幾つかの場所を毎日巡り、戦った。何匹狩っても魔法石も魔石も1つも発見できなかった。


 そんなある日、いつも通り夕方になって街に戻り、探索者ギルドで発雷鼠の素材を売って拠点に戻ってくると、ロナが意味ありげな顔をして私を見た。

 

「――どした?」


「いや、ウチが帰ったらアレが無かったからさ――?」

 

「アレって何――?」


 そう思って、広くも無い、何も置いてない部屋を見回した。

 

 ……ん?あれ?お皿がない……グラスも?

 

 良く見ると、いつも私が寝る側の壁際に集めて置いてあったお皿とスプーン、グラスがきれいさっぱり無くなっていた。

 

「え、ロナは触ってないよね?」

 

「うん」


 一応聞いたけど、最初から疑ってない。単なる確認だ。というか考えてみればいつ盗られても不思議じゃなかったのかもしれない。

 私だって売ろうかどうしようか、考えていたくらいだ。貧民街には似つかわしくない艶々できれいなお皿と金属のスプーン、透明で傷一つないグラス。どう見たって、お宝だ。むしろロナが今まで、良く手を出さないでいてくれたと感謝するべきかもしれない。


「今まで盗みとか無かったのになー」


「うん――ん?いや、だって今までは盗まれる物が、なかったじゃん?」


 私は今まで、それなりに安心?して眠れてていたので、以前より物騒になったと感じた。

 けどよく考えてみたら、元々、安心できる場所じゃない。単に人攫いの標的になりにくくなっただけだった。


「ん、そういやそうか」 

 

「そうだよ。ウチらもちょっと緩んでたかもね」


 確かに。安心できる実力も備えもないのに、一応、拠点があって、一応、仕事があって、いつの間にか油断してたらしい。


「――まあ、邪魔な物がなくなったと思えばいいか」


「高く売れそうだったけどな?」


「大人とか物騒な奴らに目を付けられそうだし、売りに行くか悩んでたから」


「確かにそれはあるかも?」

 

 それきり私もロナもスッパリ忘れることにして、お互い、買ってきたパンを食べて寝た。私たちは暗くなったらすぐに寝る。灯りが無いので夜更かしはしない。

 

 

 ☆

 

 

 一方、とある屋敷の一室。

 

「――どう?綺麗だろ?」

 

「なるほど、物は良い。形は変わっているが縁取りの銀の装飾も品が良いし寸分たがわず同じ物がこれだけ揃っている――一つだけある模様も小さいが細かく精緻だな。何より、この質感が良い――」 

 

 ガッチリとした体格の良い男が深めで楕円の皿を品定めしていた。ひとしきり検分すると、今度はグラスに手を伸ばす。

 

「こちらも素晴らしいな。傷一つない。薄く軽い。透明度が高い。その上、良く見れば宝石のような細かい模様が付いている。そしてこちらも数は少なめだが寸分たがわず同じ形だな――」

 

 そのガッチリとした体格の良い男が満足げにグラスを弄ぶのを期待を込めて見ながら、襤褸を着た少年が2人、じっと待っていた。

 

「――で、いくらで買ってくれる?」


「ふむ……確かに物は良い。だが、これ程の物をどこで手に入れたのかね?もちろん自分達で作った訳じゃないだろう?と言って君たちの懐具合いではとてもじゃないが、どうにかなるような代物ではないと思うのだが――森で遺跡でも見つけたのかね?」


「それは、別に、いいだろ……?」


「まあ、興味はあるが、君たちが言いたくないなら構わんよ。ただね、そうなるとこの街では売れん。そうすると、他の街へ運んで売る必要がある。そうなれば輸送費も馬鹿にならん。この皿もグラスも普通の品より遥かに繊細だ。破損せんように運ぶには相応に費用が嵩む。それにいくら良い品と言っても所詮、日用品だ。そこまで売値は高く出来ん。諸々考え合わせると、全部で小銀貨5枚が良いところじゃないかね?」 

 

「こ、こんなにあるのにか?」 

 

「嫌ならかまわんよ?他の店にでも持って行きたまえ」

 

 2人の少年はお互いの顔を見合わせる。そして交渉役らしい少年が頷いた。

 

「――分かった、それでいい」

 

「そうかね?おい、払ってやれ」 

 

「はい、旦那様」 

 

 ガッチリとした体格の良い男の傍で、無言で直立していた姿勢の良い痩せた男が少年に無言で小銀貨5枚を手渡す。

 

 金を受け取って帰ろうとする少年達を恰幅の良い男が呼び止めた。

 

「ああ、君たち、また何かを売りに来るならもうちょっと身形みなりに気を付けたまえ」

 

 少年達は顔を顰めると、無言で屋敷を出て行った。 

 

「――どう思う?」 

 

「どう考えても盗品でございましょう」 

 

「それはそうだろうが――数は半端だが揃いも揃って傷一つ無い高品質。今までに見たことも無いデザイン、材質――この近辺で作られた物ではあるまい?」 

 

「さあ、わたくしでは分かりかねますが……」


「この私が噂一つ聞かんのだから間違いないだろう。だとすればあの子供達は一体どこで盗んだのだ?」 

 

「――見張らせますか?」 

 

「――そうだな。何か出れば儲けものだ」


「畏まりました」


 そう言うと頭を下げ、細身の男は部屋を出て行った。その気配を背後に感じつつ、恰幅の良い男はパイプに火をつけた。


 やがて白い煙を吐き出すと、恰幅の良い男は別の使用人から渡された紙束をめくって読み始めた。

 

 ☆

 

 同じ頃、意気揚々とねぐらに帰って行く少年達の後を追って2人の男が歩いていた。

 

 早々に少年達のねぐらを突き止めた男2人は、数日間、少年達を監視し、少年達の不在時には彼らのねぐらに侵入して捜索までしたが目ぼしい発見は何も得られなかった。

 

 ただ、付近の少年達の会話から、最近稼いでいるらしいミラという少女の事を知ったのだった。



読んでくれて、ありがとうございました♪

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