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 翌朝。私とロナはいつもより早く宿の部屋を出ると、まだ誰も来ていない私たちの店に行ってノエラさんとリザさんが来るのを待っていた。


 過去はどうしようもないから考えないとしても、これからの事は考えなくてはいけない。

 

 ということで私はまず、ノエラさんとリザさんに私たち事情を話す事にした。勿論、口止めはするつもりだが、漏れたら漏れたで仕方がない。

 

 もう既にモンテシエラの敵対者から漏れ広がっていてもおかしくないので、正直、そろそろ隠す事を諦める時かもしれない。

 

 箱テーブルとイスを出して並べ、暫く待っているとノエラさんとマーシャさん、リザさんが揃ってやって来た。来るときに会ったらしい。そしてマーシャさんは今日も心配でノエラさんについて来たようだ。何か申し訳ない感じがした。

 

「あれ?ミラさんロナさん、おはようございます」


「おはようございます」


 3人は私とロナが居るの気付くと挨拶をしつつ近づいて来た。


「皆、ちょっと座って下さい」


 私がそう言って、ノエラさん達3人に座ってもらい、私とロナも座った。


「――昨日は怖い思いをさせて、すみませんでした」


「そんな、ミラさんのせいじゃないですよ」


「私もそう思います」


 私が謝るとノエラさんとリザさんが即否定してくれた。有難い気持ちになった。だが、確かに私のせいではないが、奴らを引き寄せた原因は私であり無関係ではないのだ。


「ありがとうございます。でも、本来、2人にここで働いてもらうと決める前に言っておくべきだったです。それなのに言ってなかったのは、私とロナの抱えている事情が原因です。それをお話したいと思います」


「お二人の事情、ですか?」


 ノエラさんもリザさんも、マーシャさんも不安そうな顔をしている。


 そんな3人に私は出来るだけ簡潔を心がけつつ説明した。

 

 私とロナが元モンテシエラの貧民街にいた元孤児であり、元探索者であり、ある日魔法石を拾って魔法使いになったせいで、その魔法石を貴族の魔法使いから狙われ、戦って結果的に殺してしまい、リヴァーディアに逃げて来た事。


 リヴァーディアでも魔法使いと揉めたせいで犯罪組織に狙われているかも知れないこと。

 そんな私たちに領主が声をかけてくれて、「リヴァーディアの客分」という身分にしてくれたこと。


 私の話を聞きながら、ノエラさん達は3人とも目を丸くし、ついでに口もぽかんと開いていた。


「――という訳で、私たちには結構、たくさん敵がいるかもしれないので、残念ながら今後も同様のトラブルが起こる可能性があるんです」


「――やはりそう言った事情がお有りでしたか」


 マーシャさんは驚きつつも納得と言う表情でそう言った。ノエラさんを助け出した時点で普通ではないのは分かっていたと言う。まあ確かに普通は自力では救出できないだろう。


 ノエラさんも今では私の弟子でもあるし、既に魔法の事は知っている。ただ、モンテシエラでのことは知らなかったのでそこだけビックリしたようだ。


 そして、やはり一番びっくりしているのはリザさんだった。雇い主が実は魔法使いで、その雇い主の敵に自分も襲われたのだから無理もない。


「なので、もし2人が辞めたいなら遠慮なく言ってください。商人ギルドにも辞めるのは2人のせいではなく、非常にまじめで有能な働きぶりだったことを証言しますので――」


「あ、私は続けさせてください」


「あの、私も続けたいです」


 驚きから立ち直ったノエラさんとリザさんは即座に続けると言ってくれた。それは嬉しいが、ちゃんと考えたのだろうか?怖くないのだろうか?


 私の疑問を感じたのか、ノエラさんが言葉を続けた。

 

「――怖い目に遭う可能性は分かりました。でも何処で働いてもそれは同じですから――それにここなら師匠が守ってくれる可能性もありますよね。むしろ他所より安心かもしれません」


「――私もそう思います。まともに気を配ってくれる職場自体が既に珍しいですから」


 ノエラさんに続けてリザさんまでそんな事を言った。あまりに高すぎる評価に逆に私の方がビビってしまう。


「あの、ホントに良いんですか?」


 私がしつこく聞いてみても、2人は頷くばかり。私は「他人からの信頼の重さ」というものを初めて感じていた。


「分かりました。ありがとうございます。可能な限り頑張って守ります。よろしくお願いします」


 同時に二人から寄せられる信頼が妙に照れくさい。


「良かったね、お姉ちゃん」


 ロナが急に「お姉ちゃん呼び」でニコニコ笑う。表情は爽やかで悪意なんて全く無さそうに見えるが、これは確実に揶揄われている。


「ありがとうロナ」


 私も精一杯の笑顔で礼を言った。ここで恥ずかしそうにすればロナの思うつぼだ。そう簡単に揶揄わせない。むしろ妹が姉に揶揄われていれば良いのだ。

 

「じゃあ、私たちは準備に取り掛かりますね」


 私とロナの水面下での静かな戦いをよそに、ノエラさんとリザさんは立ち上がり、開店準備に取り掛かった。今日はマーシャさんも手伝うようだ。有難いけどタダで良いのだろうか?

 

 その後、私はノエラさんにカレー粉を渡し、店を出てロナと2人、領主館へ走った。一応、領主にも説明を、と言うより筋を通すべきかと思ったからだ。

 

 既に領主には事情は全部知られているだろうし、いちいちくだらない事で煩わせるべきではないのでは、とも思ったが、やはりモンテシエラと揉める可能性がある事は私の口から言っておくべきかもしれない。

 

 と言うか、これもやはりノエラさん達に対するのと同様に揉める前に言うべきだった。今更言っても言い訳にしかならないが、言わないよりはマシというくらいか。

 

 領主館に着いて、私は門の兵士にトルストイさんに取り次いでくれるよう頼んだ。いきなり領主はマズいと思ったのだが、考えてみればトルストイさんも領主の側近。格で言ったら十分、上の方の人かもしれない。

 

 一応、いつでも呼び出してくださいと言う意味で泊っている宿屋の名前を告げて帰ろうとすると、兵士に止められた。やはり呼ばれるまで待ってろということだろうか。

 

「お二人がいらっしゃった場合は通せとの事ですので、ご案内いたします」


 これはもしや、特権乱用的な何かをやらかしてしまったのかもしれない。


 私は、「やっぱり貴族とか儀礼とか苦手だわー」と思いながら応接室に通された。ロナも黙ってついて来た。


 前回と同じく、お茶とお菓子をご馳走になっていると大して待つこともなく、トルストイさんが現れた。

 

「ミラ様、ロナ様、ようこそお越しくださいました」


 私は思わずお茶を噴き出しそうになり、必死で我慢した。

 

 いつの間にか名前に様を付けられている。短期間でえらい変化具合だった。いや、マーシャさんにも時々様付けで呼ばれた気もするが――マーシャさんには悪いが、トルストイさんは貴族で領主の側近、気安さの格が違う。


「突然すみません」


「とんでもございません。ミラ様、ロナ様のご訪問はいつであろうと我々の喜びでございます」


(褒め殺し的な~?まあでも悪意はないからね~)


 ヨーコの声がして、少し落ち着いた。要するにこれはトルストイさんが私とロナに対して「隙を見せないぞ」と言ってる感じだと理解した。


「えっと、今回、私たちの店でモンテシエラの貴族が暴れた件で、姫様に助けて頂いたと聞いてお礼を言いたくて来ました。あと、以前、客分にしてもらった時、モンテシエラでの色々を話しておくべきだったかと思ったので――」


「なるほど、左様でございましたか。賊の件につきましてはご心配には及ばぬかと存じます。ミラ様、ロナ様には何の落ち度もございませんので。アンネリーゼ姫様にお会いになる件は、既に知らせが行っていると思われますのでじきに姫様がこちらに来られるかと――」


 トルストイさんがそう言いかけた時、廊下に闊達そうな足音が聞こえて来た。すぐに応接室の扉が開き、長く美しい金髪を靡かせた男装の美少女が飛び込んでくる。

 

「やあ、ミラ、ロナ、よく来てくれた」


 おそらくマナー的に、あまり良くないのかアンネリーゼの後ろで側近が頭を抱えていた。


「こんにちわ」「やほ~」


 私とロナも挨拶を返す。先ほど以上に側近たちが眉をひそめている。一方トルストイさんの表情は微動だにしない。それを見ると、トルストイさんの顔面の防御力がいかに高いか、とても良く分かったのだった。



読んでくれて、ありがとうございました♪

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