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64 遭遇2

 箱の扉を開けて外に出てみると、扉の横に縄が垂れていた。これを伝って上に上ったらしい。

 

 私とロナが箱の上の人影を捕まえる際、逃がさないように左右から同時に飛び上がろうと小声で相談していると、箱の上から人影が覗いた。


「やあ、君たち!一体どうやって中に入ったんだい?ああ、ちょっと待って、今降りるから」


 声の感じは若い男で、縄を伝って降りて来るのを見ると、なかなか長身のようだった。男は地面に降り立つと振り返った。


「初めまして、こんにちは、お嬢さんたち。私は探索者のアウレリアス。よろしくね」

 

 その言動からは一切の敵意も悪意も感じない。だからと言って、じゃあさようなら、という訳にはいかない。特に彼が探索者と名乗った以上、彼が見聞きしたものは探索者ギルドに報告される可能性がある。

 

「えっと、私はミラです」


「ウチはロナ~」 

 

「そうか、君たちがミラにロナか。それじゃ、このおかしな箱や巨大な角は君たちが作ったのかい?」 

 

「――何故そう思うんです?と言うか、何故、私たちの事を知ってるんですか?」


 私がそう聞くと、男はキョトンとして私を見ながら瞬きを数回、繰り返した。


「――ああ、名乗り方が悪かったね。まさか私を知らないとは思わなかったから。私は探索者で、リヴァーディア領主の第一子でもある、アウレリアス・リヴァーディアだよ。改めてよろしくね」 

 

「え、あ、よろしくお願いします?」


「よろしくっす~?」 

 

 まさか領主の長男とは思わなかった。私たちを知っている様子だったし、さすがに嘘でそんな名前を名乗ったりしないだろう。それが重罪なのは私でも知っている。

 

 改めて見るとさすがに領主の息子というだけあってかなりの美形だった。金髪碧眼で長髪の先をちょっと括っている。全体的に父である領主によく似ていて、若い頃の領主がこんなだったのでは、という感じだ。

 

「それで、秘密じゃ無ければ教えて欲しいんだけど、この箱、君たちが?」 

 

 アウレリアスはまだ箱について聞きたそうにしている。領主の息子という事は、私たちが魔法使いという事も知っているのだろう。実際、次男のアドレッドも知っていた。

 

「えっと、まあ秘密ですけど――作ったのは私たちで間違いないです」 

 

「おぉー!魔法使いってこんなことまで出来るんだねぇ!中を見せてもらっても良いかい?」 

 

 私やロナが良いと返事をする前に、既にアウレリアスは興奮した様子で、さっさと箱の扉に手をかけ、開けたり閉めたり試し始めた。

 

 普段なら、その時点でイラついている筈だが、私は何故か困惑しているだけだった。ロナを見ると同じく首を傾げているだけだ。

 アウレリアスの言動からは好奇心しか感じない。如何にもお坊っちゃまと言う感じで今まで誰にも拒絶されたり否定されたりしたことが無いような無邪気さがあった。

 

 そこまで考えると、やっぱりちょっとイラついたが、実際に文句を言う程ではなかった。まあこの箱は練習で作っただけでこの後解体するつもりだし。

 

 とは言えそれも一つの才能な気がした。自分で言うのもなんだが、自由に振舞いながら私のようなそこそこ気難しい人間にムカつかれないのはそこそこ凄い事だ。

 

 暫く、中に入ったり外に出たりしながら箱を見物してアウレリアスは満足したように笑った。

 

「いやーありがとう!魔法使いの家に入るなんて貴重な経験ができたよ。それで君たち、この後はどうするの?」


「私たちは街に帰ろうかと――後、この箱の事とか、人に言わないで貰えると嬉しいんですが……」


「ああ、秘密だって言ってたもんね。勿論、誰にも言わないと約束するよ」


「ありがとうございます」


「じゃあまた。今度評判のお店にも寄らせてもらうね~♪」


「はい、どうぞ」

 

「また~」 


 私とロナは、森の奥の方へ手を振りながら歩いていくアウレリアスを見送った。


 魔力探知でも分からないほどの達人が護衛していたのでもない限り、アウレリアスは一人きりに見えた。領主の長男が取る行動としては随分と無防備に感じるが大丈夫なんだろうか?

 

「何か変な人だったねぇ?」 

 

 ロナもあまり会った事の無いタイプに戸惑っている様子だ。私も同じだ。

 

「うーん。強そうにも護衛がいる様にも見えなかったけど――どこら辺まで行くつもりだろうね?」

 

 私たちには関係ないのに、何故か妙に気になる人だ。


 ただ、そうは言ってもわざわざ今から追いかけて行って「一人だと危なくないですか?」と言うのも、それこそ変な話だ。


 ともかくこの出会いで私の中に、領主の長男はちょっと変だけど嫌な奴じゃない、という印象が残ったのだった。


 私とロナは、私が作った小さい方の箱とロナが作った角っぽい箱にかかっている「凝固」の魔法を解除した。

 

 その際、試しにお互い、相手が作った箱を解除しようとしてみたが無理だった。一方、自分が作った箱は普通に解除され、一瞬で元の粘体に戻った。何か、作った後も魔力的な繋がりでも残っているんだろうか?


 そしてその後、二人で一緒に作った箱に練習として「開閉できる透明な窓」を作った。作り方は扉と同じように外開きに開閉できるようにして、扉部分を「脱色」の魔法で透明にするだけだ。


 そして、その内側に内開きの透明じゃない窓を付けて目隠しにしてみた。それで一応、最低限、望んだ機能はついた。


 ただ、人に発見されないようにするには箱自体を地面の中に作るとか、大きな遮蔽物の影に隠して作るとかする必要はありそうだ。


 その後も形を変えてみたり、色々練習しているといつの間にか昼も遅い時間になっていた。さすがに今日は帰らないと明日の分のカレー粉が間に合わない。

 

 私とロナは最後に色々試した3つ目の箱も粘体に戻し、粘体も「粘着」の魔法を解除して元の素材に戻した。

 

「それじゃ、帰ろうか」


「おっけー」 

 

 私たちはロナの8~9割の力で森の外に向って走り続け、森を抜けて北街門まで戻ってきた。その頃にはそろそろ夕方と言う時間帯になっていた。


 門を潜る時、微妙に門の兵士たちの視線が気になったが、特に止められなかったので宿屋に帰ろうと足を向けた、その時、私たちの名前を呼ぶ声がした。

 

「ミラさん!ロナさん!」


 聞き覚えのあるその声は、私とロナが昨日街を出る時、引き留めた商人ギルドの見習い職員の彼だった。決して、特別彼が嫌いな訳じゃないが、正直、嫌な予感しかしない。


「――どうしたの?」


 私がちょっと警戒気味に応じると、見習い職員の少年が近づいてきた。

 

「お二人のお店で起きたトラブルに関して、報告があるという事で商人ギルド会館に寄って欲しいとの事です。あ、お店は――」


 見習い職員の少年が「お店は無事です」と言い切る前に、私とロナは私たちの販売スペースに向って全力で走りだしていた。


 私がロナさえも置き去りにして店の前まで全力で駆け抜けて来ると、お隣や向かいで店を開いている店主たちが声をかけて来た。

 

「やあ、ミラ。大変だったね」


「まあ、しかし何事も無くて良かったよ」


 何があったかはさっぱりだが、一応大丈夫だったらしい。とは言え「何か」はあったらしい。正直、まだ全然安心できない。


 だが確かに見た所、特に販売スペースが荒らされているという事も無かった。


 私はお隣さん達に会釈を返し、来た道を逆走してロナを拾い、今度は言われた通り商人ギルド会館へ走った。


 ギルド会館に着くと、流石にロナはここまでほぼ全力だったので息も絶え絶えになっていた。私も結構ヘトヘトだったが、とにかく気になるので一刻も早く報告を聞くため、息が整うのも待たずギルド会館に入った。


 中で私たちを待っていたのはいつも通りのマーシャさんだった。



読んでくれて、ありがとうございました♪

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