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51/86

51 発見

 貴族街を歩きながら、道すがら私とロナはダンから、以前ダン達がミックを尾行した時の話を聞いた。

 

 ミックは貴族街の門の兵士と顔見知りらしく、挨拶だけでスッと通されたらしい。その後、暫くして大きな屋敷に到着したミックは屋敷の門番とも何か話をして門の中に入って行ったという。

 

 そして、屋敷の中に消える前にミックはゴツイ体格の大男と合流し、その大男に向って「ギース」と呼びかけたそうだ。

 

 その後、どうやってかダンはその大きな屋敷がガリオス子爵家の屋敷だと知ったらしい。――いや、ダンこそ何者だよ?

 

 流石?のダンも敷地の中までは調べられなかったようだが、ともかくギースはこの屋敷の関係者だとダンは見ているようだ。

 

 もしダンの考えが正しいならギースは確実に貴族。ただのチンピラのボスだと思っていたギースは実は予想外に大物だったらしい。しかも子爵家の敷地としてはかなり広大だという。その屋敷や庭園から見てもかなり権力がある家の関係者――少なくとも半端ないお金持ちだ。

 

 敷地の周りをぐるっと見て回るが、広すぎて中の様子はうかがえない。

 

「よし、ダンは帰って。念のため平民街でノエラさんを探してくれると嬉しい」 

 

 私は侵入してみる事に決め、ダンを帰すことにした。

 

「いや、オレも行きます。君たちミックさんの顔は分かるかもだけど、ギースさんの顔は分からないでしょ?」 

 

 そう言われて私は迷った。体格の良い大男と言う話なので、分かる気がするが、絶対ではない。けど、侵入したら魔法をたくさん使うのでダンは邪魔だ。

 

「――どうしよ?」


「まかせる~」


 ロナに小声で相談したが任されてしまった。ヨーコにも意識を向けてみたが(ミラ次第ねぇ)という返事が返ってきた。

 

 ホントにどうしよう?ダンが信用できるかどうか?そんなの私に分かるはずがない。仕方なく私はダン本人に任せる事にした。

 

「ついて来るなら、今から見聞きする事は何があろうと一切、口外しないでください。もし誰かから少しでもその話を聞いたら、何があっても必ずダンを殺します」

 

 そう言ってダンを見ると、目を丸くしていた。これはどういう表情だろうか?ちゃんと分かってくれたと思って良いのだろうか?それとも「何言ってんだ?」と言う感じだろうか?

 

「――それでも良ければ同行を認めます」 

 

「行きます。喋らなきゃいいんでしょ?」 

 

 軽い。そのあまりに軽い言葉に私は一気に不安になった。ダンがどう考えているにせよ、約束を破ったら必ず殺す。それは私の誓いで絶対だ。彼は自分の命が掛かっているという自覚はあるのだろうか?

 まあ、でも彼の言う通り喋らなきゃ良いのだ。それで良いか。良いという事にしよう。

 

「了解。じゃ、ダンはここに」 

 

 私は人通りが無いタイミングを見計らって子爵家の塀の前に素早く移動し、ダンを私とロナの間に立たせた。そしてロナと手を取りあい、反対の手でダンのズボンの腰辺りを掴む。察したロナがズボンの反対側を掴んだ。

 

「はっ?えっ!?」 

 

 困惑するダンを放置して、私は「隠形」の魔法をかける。これで、私とロナとダンはジッとしていればまず視認されない。

 

 そのままロナとタイミングを合わせて、ダンを吊り上げながら一気にジャンプして子爵家の塀を跳び越えた。

 

「~~~~~……ッ!?」 

 

 幸い、驚きすぎたダンはジャンプした勢いで海老反りながらも叫び声は上げなかった。そのまま3人固まって子爵家の広くて豪華な庭園を通り抜け、幾つかある建物の内、小さい建物の方へ移動した。

 

 勿論、小さいと言っても私から見れば全然大きいし、それ以外の屋敷は物凄く大きい屋敷とかなり大きな屋敷しかなかった。

 

 小さめに見える建物は全て使用人の作業小屋のようで、外からざっと見て回った感じ作業場と雑多な道具やら肥料なんかがあるだけだった。建物の中は従業員用の宿舎だろうか。見張りも居ないしそもそも人の気配がしない。魔力探知も反応なし。ここではないっぽい。

 

 やはりいるとすれば屋敷か。その屋敷も本邸と思われる物凄く大きい屋敷が1つと、かなり大きい別邸らしい屋敷が2つあり、判断がつかない。

 

 だが、たとえギースがここの当主だとしても家族がいるはずで、本邸に平民の手下や攫って来た人間なんかを連れ込むだろうか?

 

 私は念のため3つの屋敷に近づき、魔力探知で内部を探ってみた。ノエラがいるかどうかは分からなかったが、別邸らしい2つの屋敷のうちの1つに大きくて強い魔力反応があった。

 

 これがギースかもしれない。ロナも感知したらしく小さく頷いている。

 

(これはけっこう強いかも) 

 

 おまけにヨーコが警鐘を鳴らしている。間違いなくギースだろう。とすればノエラも居るならここだと思われる。

 

 上階を仰ぎ見ると、開いている窓もあった。私は上から侵入することにして、まずダンに鉤付きの縄を借りた。

 

「しゃがんで小さくなって出来るだけ動かないで待ってて」 

 

 ダンが無言でコクコクと頷く。その目は丸く見開かれている。頭の中は真っ白になってそうだが今はどうしようもない。騒がないで言う事を聞いてくれたらそれでいい。

 

 ダンがしゃがんで丸くなると、私は鉤付きの縄を使い、まずロナを連れて壁を駆けのぼった。別邸らしい小さい方の屋敷は2階建てで屋根にも窓があったので屋根裏部屋があるのかもしれないが、ともかく屋根までは10メートルほど。ロナは私の肩に手をかけただけで殆ど自力で登ってくれたのであっという間に屋根に上る。

 

 ロナを屋根に置いて、勢い、地上に飛び降りるとかなりの高さを感じ、さすがにヒヤリとした。念のため両手両足で着地するとかなりの衝撃だったが問題なかった。これくらいなら出来る自分になったと実感し、また少し感動したがそれどころではないので気を引き締める。

 

 続けて今度はダンを背負って壁を駆けのぼった。多少重いのと腕が首に巻きついているのでちょっと動きにくかったが、ダンが硬直して微動だにせず居てくれたおかげで然程苦労は無かった。

 

 屋根の上を移動しつつ、魔力探知でギースと思われる魔力反応を探り近づいていく。庭園を見下ろすと数は少ないが使用人の姿も見えた。

 向こうからも丸見えのはずだがまあまあ距離があるのと私が「隠形」の魔法を使っているので発見される心配はほぼないだろう。

 

 そろそろギースらしき魔力反応の真上に来るというあたりで、下の方――多分2階?――から騒がしい笑い声が聞こえて来た。

 

「ブハハハハハッ!其方ともあろう者が何たる有様か!ブハハハハハハハッ!」 

 

「――面目ねぇ」 

 

「プッ……クハハハッ。良い良いミック――ミッカディオよ。貴様は俺の望みを叶えたのだ。少々無様であろうと……ブフッ……クックックッ……!」


 声の主はこらえきれないようで暫く忍び笑いが続いた。


「――ふぅ。まあ良い。其方の骨折りに対して……プックククッ……たっぷり支払ってやろう。金が好きな其方のことだ。それが一番の労いになるだろう?」


「……ああ」


「クックックッまぁ良い。じゃあもう戻りな」

 

「了解」 

 

 そんなやり取りが聞こえた後、かすかな足音と扉が閉まる音が聞こえた。

 

「――さて、久しぶりだなぁノエラ。元気でやってたのか?」 

 

 そんな声が聞こえたあと、ノエラさんの返答は聞こえなかったが、魔力探知では確かにギースらしい強い魔力反応の近くに小さな反応が1つあった。これがノエラさんの魔力反応らしい。部屋を出たらしいミック達の魔力反応が徐々に遠ざかっていく。

 

「貴様との話は手下共には聞かせられんのでな――まあ、ミック辺りは察してるんだろうが……」 

 

 ノエラさんが返事をしないのでギースらしき声だけが聞こえていた。屋根の端から階下を覗き込むと、窓が開いている。おかげで声が良く聞こえる。

 

 今、ギースらしき男は一人。襲撃とノエラさん奪還のチャンスか?だが、ノエラさんを戦いに巻き込んでしまうと怪我をさせてしまう可能性が高い。最悪、人質にとられる恐れもある。

 

 私が突入のタイミングをうかがっていると、さらにギースらしき男の声が聞こえてくる。

 

「これまでは上手く躱してきたんだろうが――貴様の腕では俺から逃げるのは論外としても、ミッカディオすら欺き果せねぇだろうよ」 

 

 何の話だろうか?ノエラさんがギースとミックを騙すの逃げるのと――?私は少し興味が湧いて、一旦、突入を思いとどまった。

 

「――ふん。身体検査をした使用人の話では、貴様は例の物を身につけておらんかったそうだな?ミッカディオの腕を蹴り折ったという例の護衛を余程信頼していたようだが、当てが外れたな?クックックッ!」 

 

 聞いているうちに私の話まで出てきた。そしてギース(仮)はノエラさんの持つ何かを欲しがっているらしい。

 

「……良い加減、諦めて俺に差し出したらどうだ?無論、俺からもたっぷりと報酬をくれてやるし、他にも望みがあるならば叶えてやるぞ」 

 

「――お、お断りします」 

 

 ノエラさんの声だ。震えているが間違いない。やはり一気に突入してギースを倒し、ノエラさんを奪還するか!?それともノエラさんが1人になるのを待つか!?私がどちらを選ぶか考えていると、またギースの声が聞こえた。

 

「――強情な。そもそも貴様の様な平民が持っていて良い物じゃねぇんだ。俺の様な由緒正しい貴族が持ってこそ相応しく輝く。分かるか?――それが魔法石という物だ」



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