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50 貴族街

 ダン、ロブ、エドの3人はとんでもないことになったと思っていた。特にダンはまた少しパニクッていた。

 

 ミックさんについて来いと言われて、ついて行った先に居たのは彼らの命の恩人である少女たちだった。

 

 ミックさんの命令は彼の周りで人垣を作って市場の人々の視線を遮り、中に誰も入れるな、と言うものだった。その時点で何かヤバそうなことの片棒を担がされるのだと気づいたが、やりたくないとは言えない。

 

 そんな事を言えばどういう結果になるか、だいたい想像はついたからだ。

 

 ダンもミックさんがまともな人とは思っていない。なので金を貯めて実力を付け、いつかはこの街――というよりミックさん達から逃げるつもりだったのだが――。

 

 ダンがパニクッている間に、ミックさんといつも周囲にいる取り巻きの数人が、ダン達の恩人の少女と揉め始めた。と言うか店に乱入しようとしたミックさんがいきなり叩きのめされていた。

 

 声も出ないダン、ロブ、エドは一番後ろで固まっていたが、ミックさんの命令で長屋に住む少年達が一斉に突入していった。

 

 あっという間に店の中も外も大乱闘状態になってしまった。

 

 一瞬、ミックさんではなく恩人の少女たちを心配したが、少女たちは恐ろしく強かった。10人以上の自分より年上の少年達が一斉に襲い掛かってくるのを凄い速さで躱し、急所を蹴り上げて行く。

 

 おかげで少年達は次々と悶絶し、地面に転がって行った。

 

「ヤバ……あの子達強すぎ……」 


「強すぎってかエグ過ぎでしょ、あの〇〇蹴り……」


 ロブとエドは股間を押さえながら顔を青くしてボソボソ呟いている。ダンも股間がキュッとなっていた。

 

 一方ミックの取り巻きの男達はなかなか強く、粘り強く抵抗して乱闘を長引かせていた。

 

 暫く粘った後、彼らも少女たちに股間を蹴り倒されたが、気絶しているふりをして、隙を見て乱闘の外に退避し、外側から厨房に侵入して見知らぬ綺麗な少女を攫って行った。

 その事に乱闘中の者達は誰も気づいていない。正直、凄い根性だと感心してしまったほどだ。

 

 すぐに叫んで恩人の少女たちに知らせようかと思ったが、それだとダン達の裏切りが今すぐミックさんにバレる。そこらに転がっている連中がチクればどの道バレるが今すぐバレるよりは断然、良い。

 

 襲い掛かって行った連中を全員叩きのめし、縛りあげた後、周りを見回してようやく恩人の少女たちは、彼女達の身内の少女が攫われた事に気づいた。

 

 少女たちは襲撃者達を片っ端から尋問して行くが、彼らはダン達と同じでタダで長屋に居候しているだけの少年達だ。少女たちが知りたい情報を口にする者はいなかった。

 

「――恩を返すぞ、いいか?」


 ダンはロブとエドを見て言った。2人は少し蒼い顔で頷いた。ミックさんが怖いのだ。そしてギースさんが恐ろしい。だが「命を救われた」という大きすぎる恩を返す絶好のチャンスだった。 

 

「――あの、オレたち多分、分かります、居場所――ギースさんの……」 

  

 震える声でそう言ってダンはロブとエドを従え、少女たちの前に進み出たのだった。

 

 ☆

 

「――ああ、アンタら、森で……」 

 

 何やら気まずそうに進み出て来た3人の少年を見て、ロナが、彼らを見たことがあると気づいた。ほぼ同時に私も思い出していた。彼らは助けてあげたにも拘らず、何か色々喚きたてていた少年達だ。

 だが、そんな事は今はどうでも良い。重要なのは彼らがギースと言う男の居場所が分かると言っている、という事実だった。

 

「すぐに助けに行きたいので教えてください」 

 

 私が3人の中で一番年上の少年に応じると、彼は訥々と話し始めた。要領を得た話しっぷりとは言えなかったが、まとめると――。

 

 彼らはダン、ロブ、エドと言う3人兄弟。彼らも襲撃者の少年達と同じでミックとは長屋の一室に住まわせてもらっているだけの関係らしい。

 

 ただ、彼らはミックを疑い、兄弟3人で協力してミックを尾行した事があるという。その時、ミックがとある屋敷に入って行くのを確認している。そして、ギースらしき人物も目撃したらしい。

 

「――それでその時ミックが入った屋敷というのが……?」


「はい。貴族の屋敷です」 

 

 街のチンピラだと思ったらまた貴族の仕業だったことに、私は少しショックを受けた。だがそんな事を言っている場合じゃない。

 

 私が年上の少年――ダンに案内を頼めるか聞くと、彼は快く引き受けてくれた。だが、貴族の屋敷という事は目的地は貴族街。平民が気軽に立ち入ることは出来ないが――。

 

 ダンにそう聞くと、方法はあるという。まあ、最悪、私が魔法を使うしかない。その場合、彼らには何があろうと私の秘密を守ってもらう事になる。拒否するなら――まあ、それはその時考えよう。ともかくノエラさんの無事には代えられない。

 

 私とロナは取るものもとりあえず、ダン達3人の後を追って彼らの長屋の部屋に向った。

 

 店と倒れている襲撃者達はマーシャさんに任せた。縛ってあるとは言え少々心配だったが、マーシャさんが大丈夫というのでお願いした。

 

 ダン達の暮らす長屋の一室に着くと、私とロナは少し大きめの服を渡された。

 

「オレたちが情報収集でよく使う方法で、商人の見習いが良く着てる感じの服です。弟たちの分なのでちょっと大きいかもですが――」

 

 先日、私たちに喚き散らしていたダン少年が今日は何故か丁寧な言葉遣いで接してくるので妙な感じだが、とにかく今は構っていられない。

 

 ダンから受け取って自分達の服の上から見習い商人風の服を身につける。言われた通り大きめなので私もロナも問題なく着ることが出来た。

 

 その後、自分も着替えたダンに案内されて貴族街へ急いだ。貴族街は街の中央から東寄りの広い範囲。平民街との間には壁があり、門があり、門には兵士が詰めていて用の無い平民は通してもらえない。ので壁を越えて忍び込むことになる。

 

 ちなみにどこの街にもよくある歴史だが、このリヴァーディアの街でも貴族街と平民街を隔てる内壁は元々外界と街の中を隔てる外壁だった。街が景気が良い時代に拡張され、外壁の外側に更なる外壁が設置されて内壁になったからだ。

 

 おかげでそこそこ高くて頑丈な壁が見渡す限り続いている。何せ貴族街は広大で街全体の3分の1~4分の1ほどもある。以前はその中だけが街だったのだ。

 

 ダンの後をついて行くと、ダンは貴族街の門から随分離れた位置で止まった。その位置で壁を乗り越えるという。

 

「貴族街も外縁部は比較的、あまり裕福でない貴族家の小さい屋敷が多いんですが、そういう家は敷地が狭くて隅の方まで家人や使用人の目が届きやすいです。でもここの壁の向こう側は子爵家の敷地で結構広いので隙が多くて入りやすいです」 

 

 貴族街の屋敷で雇われている使用人はそれ程多くないらしい。人を雇えば金がかかるからだ。敷地が広ければ広い分だけ使用人が配置されているかと言えばそれもない。という事で広い屋敷の近くの壁を越えるらしい。

 

 ダンの理屈には期待が多く含まれてそうだが、実際このやり方でこれまで何度か貴族街に入ってるらしい。――以前、何の目的で入ったのかは気になるが今は置いておこう。

 

 一応私とロナが魔力探知で壁の付近に人が居ないことを確認したので大丈夫だろう。

 

 ダンが先端に鉤のついた縄を壁の向こうに投げて引っ掛け、体重をかけて安全性を確かめる間に私とロナは壁を蹴って跳び越えた。

 

「ちょっ……何メートル跳ぶんですか!?」

 

 暫くして壁を越えて来たダンは動揺していた。小声だが目を丸くして迫って来る。が、そう言われても私達は訓練の結果、出来るので仕方がない。

 

「ザッと3~4メートルくらい?」

 

「普通無理でしょ!?」 

 

「いや、私達、鍛えてるので……」


「き、鍛えてるからって……いや、すみません、ちょっとびっくりして」


 どうやらダンは信じられない物を見ると突っかからずにはいられない性質らしい。

 

 気を取り直して、ダンと私とロナは服の乱れを整え、商人のお使いのように普通に貴族街を歩いた。

 

 貴族街は平民街より道が広くて綺麗だったが人通りは少なく、歩いているのは恐らく使用人と思われる人ばかりだった。貴族はたまに通る馬車に乗っているのだろう。あと、通るのは兵士だが、それも貴族階級の兵士らしく装備が立派だった。

 

 そんな見物をしつつ私たちは、暫く歩いて目的の大きな屋敷の前に到着した。



読んでくれて、ありがとうございました♪

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