40 遭遇その後
「――イヤ、お礼が先じゃない?」
憮然とした表情でロナが少年達にそう言うのを私は黙って聞いていた。実際、少年達のその態度に、私も「何だコイツら?」と思っていた。
彼らが殺されそうになっているのを見て思わず飛び出してしまったが、助ける必要は無かったかもしれない。
「お、おかしいだろ!?あれは『熊』だぞ!?ホントはこの辺じゃなくて、『中層』入口あたりからやっと見かけるくらいのヤバイ魔物だぞ!?それをお前みたいなガキが――」
「イヤ、でもアンタはそのガキに助けてもらって、今、生きてるわけだけど?だいたいその『中層』レベルの魔物って分かってて、こんな『浅層』の外縁部まで引っ張ってきて、巻き添えで他の人が殺されたらどうするつもりだったわけ?」
ロナが強めの嫌悪感を込めて言葉を叩きつけると、年上の少年は目を泳がせ、更に顔を青くして後退った。
「――あ、あの、すみません、ありがとうございました」
年上の少年が震えながらまだ何かブツブツと呟いている間に、魔物に殺されそうになっていた年下の少年がそう言って頭を下げた。そして年下の少年達2人で年上の少年の手を引いて逃げるように去って行った。
「――何だよあれ?助けなきゃよかったじゃん!?」
「まあ正直、私もそう思ったけど、考えてる暇なかったし」
「ちぇっ……まあねー」
ロナはまだ表情を険しくしているが、ロナが怒ってるのは私の為でもあると思うと、逆に私は頬がゆるんでしまう。少年達のせいで発生したイライラはロナによって消え去った。
「まあいいから、さっさと解体しちゃおう」
「ほいほい」
私はロナを促して解体を急ぐ。早いトコすませて寝たい。
ちなみにヨーコが言うには(少年も言っていたが)この魔物は「熊」と呼ばれる魔物で、昔は最強クラスの獣だったらしい。ちなみのちなみに獣と魔物は厳密には違うらしいが、私達にとったらどっちも肉だ。と言うかむしろ魔物化してない獣――家畜?――の肉のほうがレアかもしれない。実際、見たことないし。
ともかくコイツはその「熊」の中では一番小さい種類だったようだが正直、危険度が一線を越えると後はどれだけ危険でも私達にとってはあまり変わらない。どの道、遭遇したら死ぬだけだからだ。
要するに、ヤバイ魔物だという事だ。
少なくとも私達と同年代の探索者が遭遇したら絶体絶命だろう。そんな魔物に余裕で勝てるようになった事に、ふつふつと喜びが湧いて来る。
そんな私たちの今の能力値はこんな感じだ。
□ ミラ(人族)(9)
□
□ 筋力 6 (13)
□ 瞬発力 9 (30)
□ 持久力 6 (13)
□ 耐久力 5 (12)
□ 精神力 10(13)
□ 魔力 12
□
□ 棒術 LV.9(UP)
□ 魔力感知 LV.6
□ 魔力制御 LV.3
□ 魔力探知 LV.5(UP)
□ 魔法制御 LV.6(UP)
□ 身体強化 LV.7(UP)
□
□ 敏捷力 LV.6(UP)
□ 瞬発力 LV.8(UP)
□ 精神力 LV.3(UP)
□
□ 発火 LV.1
□ 異空間収納 LV.2
□ 洗浄 LV.1
□ 短距離転移 LV.2(UP)
□ 雷撃 LV.2(UP)
□ 隠形 LV.1
□
□ 解体術 LV.1
☆
□ ロナ(人族)(10)
□
□ 筋力 9(11)
□ 瞬発力 8(16)
□ 持久力 7(9)
□ 耐久力 6(8)
□ 精神力 12
□ 魔力 10
□
□ 棒術 LV.3(UP)
□ 魔力感知 LV.2(UP)
□ 魔力制御 LV.2(UP)
□ 魔法制御 LV.2(UP)
□ 身体強化 LV.2(UP)
□
□ 敏捷力 LV.3(NEW )
□ 瞬発力 LV.3(NEW )
□
□ 発火 LV.1(NEW )
□
□ 解体術 LV.1(NEW )
短期間で身体系、魔法系のレベルが上がり、能力値が大幅に伸びていた。特に瞬発力は既に普通の大人の男の人のほぼ3倍になった。
単純に考えて普通の人が最速で足を1歩踏み出す間に3歩、体格差を考えると3歩以上飛び出しているという事だ。
目の前でフェイントをかければ、相手からは身体ごと消えたように見えるかもしれない。だってそういう時、私自身も相手の姿が霞んだりぼやけたり消えたように見えたりするからだ。
これ以上速く動けるようになるなら眼も鍛えないといけないのかもしれないが、今のところどうやったら良いか全くわからない。
瞬発力以外は普通の人よりちょい強いくらいだが、瞬発力との相乗効果か自分より大きい魔物でも杖で簡単に撲殺できるほどになった。
おかげで心に余裕が出来て、慌てる事が減った気がする。
そしてロナも着実に強くなっていた。私と一緒に練習しているせいか、やっぱりロナも敏捷系の能力値が急速に伸びている。
魔法は、と言えばやっぱり普段の狩りでなるべく使うようにしている「短距離転移」の魔法と「雷撃」の魔法が伸びていた。一方でロナに魔法石を預けているせいで「発火」の魔法は使ってないので当然、伸びなかった。新しい表示もなし。
一方ロナも狩りで「発火」の魔法を使いまくったのでしっかり能力値に表示されるようになっていた。
そしてやはり戦闘以外の魔法は、特に「異空間収納」の魔法は頻繁に使っているのに伸びなかった。戦闘系の魔法と何が違うのだろうか?真剣味、というか生命の危機感、だろうか?
それが正解なら、なるべく危ない場面で使うと伸びやすいという事だが、そうなると練習しづらい。だって危険だし。
色々考えている間も解体は着々と進んだが、何と「熊」からけっこう大きな魔石が出た。念のため確かめてみて魔法石じゃなかったのは残念だが、これは売れば結構な額になるんじゃないだろうか。正直、金欠の私たちにはかなり嬉しい収獲だ。
ホクホクしつつ魔石と肉と毛皮は「異空間収納」の魔法に仕舞い、骨や内臓は穴を掘って捨てて、埋めた。
流石に「熊」の肉は量が量だけに、背負い籠に入る訳も無く「異空間収納」の魔法に仕舞った。
いつからかは分からないが既にロナには「異空間収納」の魔法の事はバレてるだろう。だけどロナが聞いて来ないのでそのまま曖昧なままになっていた。
ヨーコの魔法石はロナにでもあげたり貸したりするつもりはないので、このままでも良いとは思っているのだが、もはや秘密にする必要性もそこまで感じていない。まあ、なので何れ近いうちに話すだろう、多分。
そんな感じで作業を全て終えると、私とロナはハンモックに乗り込んであっという間に眠りについた。
ちなみにハンモックなのは「這う虫」対策だ。森の地面に直で寝ると這う虫を避けられないから。
でも実のところヨーコが見張ってくれているので、近づく虫は小雷撃で消し炭になるし、致命的な虫などが知らぬ間に近寄って来る事も基本ないので地面に寝ても平気と思うのだが。
ちなみのちなみに魔力探知を使いながら寝れば、寝てる間に接近してくる魔力反応に気づけるとヨーコは言うが、未だに寝ている間に魔力反応を探知して目が覚めたことはない。
なので、寝ている間の警戒はヨーコに任せているのだが、ロナは私がその「眠っている間の魔力探知」をしているのだと思っているらしく、その話をする時はちょっと尊敬の視線を感じる。
いずれ全てをカミングアウトする時には色々、謝らねばなるまい。まあでも、今は眠いのでさっさと寝よう。
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