37 カレーの材料
カレーを食べながら今後の相談をした後、ロナはミラに連れられて宿を出た。
ちなみにミラは食べ終わったカレーやレモンティの食器をロナから素早く回収し、「洗浄」の魔法でサッと洗って背負い籠に仕舞ったが、そこに食器が入っていないのをロナは知っている。
てか、あんなお皿をホントにいくつも籠に入れて背負って歩いたらカチャカチャ音がするはずだし、割れてしまうと思う。
ミラは最初に特別な魔法石を手に入れたと言っていたのでそう言う事も出来るのだろう。そしてその事をミラが内緒にしているらしいので、ロナは突っ込まなかった。
秘密なのはそれでいい。ただミラは色々抜けているのでロナはそこを心配していた。だってミラはそういう内緒の魔法がロナにバレてないと思っているのだ。そんなわけないじゃん。ずっと一緒に居ればイヤでも分かる。
ただ、ミラの抜けている部分は自分がフォローすれば良いと思っていた。
「――けどさ、一冬ずっと宿に泊まるとかぜーたくじゃん?貧民街で空き家探せばタダだし」
「いや、貧民街だと森とそんなに寒さは変わらないし――雨露は凌げるけどね――まあ、どうしても宿屋暮らしが無理ってなったら探してみよう」
ロナの意見はサラッと却下された。どうやらミラはもう貧民街に戻る気はないらしい。ロナも別に貧民街に戻りたいわけじゃないが、貧乏節約暮らしが当たり前になってしまっているので一冬分の宿賃を考えてちょっと――かなりビビっていた。
そうこうしているうちに、ミラとロナは大きな建物に着いた。
「ここが商人ギルド会館か」
ミラが呟くのが聞こえた。どうやらミラは前もって調べていたらしい。宿屋の女将さん辺りに聞いたのかな。抜けてるとこもあるけど、そーいうとこはしっかりしている。
ミラについて入ろうとしたら、ミラが振り返ってロナを止めた。そして小声で話し出す。
「――ミラとロナって名前は内緒にしたいから、商人ギルドにはラミラとラロナって名前で登録しようと思うけど、いい?」
どうやらミラは前もって色々考えて来たらしい。ロナはすぐに頷いた。
そんな感じで軽く打ち合わせをして商人ギルド会館に入ったミラとロナは受付で登録料を払い、商人として登録した。
まだ売る物が無いので登録だけだが、実際に何かを売ることにした際には改めて商材の登録と審査があるらしい。まあ審査と言っても、何を売るのか、商材に問題はないかを確認し、何処で売るのかを決めその許可を受ける――というか許可を買うだけだ。
とりあえず商人ギルド証を貰って2人はギルド会館を出た。これで街の出入りの度にいちいち「入街税」とかを取られたりしない。勿論、代わりに商人ギルドに取られるわけだが、まあそれはしょうがない事だ。
いずれミラが言ってた凄い魔法使いになれれば、踏み倒せるかもしれないが――いや、それはなんかセコいな。と言うか多分そんなすごい魔法使いになれば金くらいいくらでも持ってるだろう。
ロナは自分の考えを笑って否定した。
☆
とりあえず作れるかどうか試してみる為に、とりあえず材料を集める事にした。ヨーコが「念話」で教えてくれるので私は小さく頷いて了解を示す。
そのヨーコが言うには、一番大事な材料は身体に良い草木の茎、根、葉、樹皮、実などを乾燥させて粉にしたものを混ぜて作るらしい。それプラス肉や野菜。そうして出来たカレーを、パンかご飯と一緒に食べるのだ。
ちなみに私もロナもカレー1杯で足りない時、廉価パンを千切って、カレーの皿に残っている僅かなカレーをつけて食べたりする。カレーはパンで食べても美味しいと知った。
それはともかく。ヨーコによればそれらの草木は原産地は分からないし、この辺では普通に自生しておらず、昔は誰かが栽培して販売していたらしい。
そして今はそういう栽培農家が有るかどうかも不明だ。と言うか平民向けに作っている農家は多分いないという。まあ主食の麦や芋さえ満足にいきわたっていないのだから当然かもしれない。
じゃあ、ダメじゃないかと思ったが、当然、代わるものがあると言う。そして今、私達はその材料となる草木の代用品を採取するために森に向っていた。
街の門は商人ギルドで手に入れたギルド証を見せ、問題なく通過する。
(要するにカレーって漢方みたいなもんだから、わたしも昔、生きてた時、結構研究してねぇ)
ヨーコが言う「カンポウ」は分からないがヨーコがカレー作りの材料を色々試したらしい事は分かった。
(――漢方、つまり薬草よ。じつは薬効が弱くてポーションの材料として認められていない、ギルドが買い取ってくれないような薬草でもカレーには十分、代用できるのよ♪勿論、探索者が普段、採取してギルドに売ってる薬草でもカレーの材料に成り得るんだけど、そっちはそこそこの値で売れるんだから売らないのはもったいないでしょ?そこでわたしはギルドが買い取ってくれない薬草の中から成分の似ている物を探して色々試したことがあるの。そういう売れない薬草は今は雑草扱いで結構いくらでもとれるからお得でしょ?)
久々にヨーコがふんぞり返っている雰囲気を感じる。勿論、ドヤるだけのことはあるので私は超感謝した。
(――そして、少しだけレア素材もあるけど、それも代用品を森で採れるのはギルドの資料で確認済みだし、まあ無いなら無いでも作れないってわけじゃないわ)
という事は、パンとご飯以外は全部自分でとれば材料費タダで作れるということだ。私はそれなら結構、儲かるかもと思った。
そういう説明を聞きながら森に着いた私とロナは、ヨーコの説明を聞いた私の指示で次々と雑草――薬草を採取して歩いた。
「――なあミラ、これって売れないやつだけど良いの?」
「もちろん。売らないよ?これカレーの材料だから。そう言ったでしょ?」
「えぇ?けど臭いよこれ?全然カレーっぽい匂いじゃないじゃん?」
「いや、このまま食べたりしないからね?」
私が指示する雑草――薬草を集めながらロナがブツブツ文句を言ったが軽くあしらう。これでいいかどうかなんて私も分からないが、ヨーコが作れると言うならコレで良いのだ。
私達はレア素材以外の雑草――薬草を集め、肉は「魔力探知」で適当な獣を探して狩った。
森には様々な獣が生息していて、そのほとんどは魔物だが、森の外縁に生息するような魔物はそれほど強くない。少なくとも今の私とロナにとってはただの肉だ。
そんな風に言えるなんて、私も強くなったものだ。まあ、強くなったと言ってもほんのちょっとだけど――。
夕方までかかったが、とりあえず材料が集まったので適当なスペースを探して籠を降ろした。暗くなってきたのでまず軽く木を組んで火をつける。
これはロナにお願いした。既にロナも発火の魔法を使えるし焚き火用の木は私が出すのであっという間だ。
次に「乾燥」の魔法で材料の薬草を乾燥させて粉にしていく。もちろん初めて使う魔法なので私が使う振りをしてヨーコが魔法を発動する。
と言うか、自分達でカレーを作るという話になるまですっかり忘れてたとかで、これまでヨーコが教えてくれなかったのだ。ヨーコの中での扱い的には、いつもの「取って置き魔法」なのかもしれない。
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