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34 エピローグ

 ロナの誘拐事件から貴族邸侵入事件、貴族の家人殺害事件という事件があってその翌日以降、街がどんな様子だったか私たちは知らない。

 

 と言うのも、あのまま結局眠れなかった私達は早朝、街が動き出す前に街の外壁を越えて巨木の森に逃げ込んだからだ。

 

 何もかも私たちに都合よくいけば「犯人は捕まらないまま事件が風化し、謎の犯人が賞金首になる」くらいで済むかもしれない。

 

 だが、当の被害者であり殺害された魔法使いの男の雇い主でもある貴族は、犯人が私である事を知っているも同然なのだから、そんな風に都合よくおさまることはほぼ有り得ない。

 

 なので私たちは「兵士に囲まれて逃げ場がない!」みたいな状況になる前に街を逃げ出した。

 

 私はロナが誘拐される前、自分の逃亡生活の為に色々買い込んで準備をしていたし、街に心残りは殆ど無かった。強いて挙げれば探索者ギルド会館のいつもの受付のお姉さんに、挨拶も何もできなかった事くらいだ。

 

 では、巨木の森に逃げ込んだ私達が毎日何をしているかと言うと、勿論、魔法石探しと訓練だ。

 

 私はロナを魔法使いにすると決めた。

 

 私とロナの実力がかけ離れ過ぎた現状のままで、私がロナを護るだけの関係が固定すれば、ロナの事を負担に思う日が来るかもしれない。そんな自分には絶対になりたくなかった。

 

 今はロナ1人護るくらい何でもないと思っているが、将来の自分の事は分からない。それにロナだって性格的に護られてるだけなんてイヤなはずだ。

 

 そんな訳で今日も朝から私はロナを連れ、今まで私が回ったコースを巡り、ロナに魔法石狩りと魔物相手の戦闘訓練をさせていた。

 

 私が魔法石狩りと訓練を始めた頃の事を思い返すと、私は常にヨーコの魔法石を身につけていた。ヨーコが私の魔力を使って魔法を使う時の「魔力が動く感覚」を感じる事で、だんだん魔力が感知できるようになった筈だ。

 

 そこで私は発火蜥蜴から獲った「発火」の魔法石をサラシでロナの左手首に巻き付けて固定した。

 

 そして毎朝、狩りと訓練を始める前に魔法の練習の時間を設け、その時、補助という名目でこっそりヨーコの魔法石をロナに押し当てて「発火」の魔法を発動した。

 

 勿論、発動したのはヨーコで、ヨーコは私の時と同じくロナの魔力を使って「発火」の魔法を使って見せたので、ロナはすぐに魔力感知が出来るようになった。

 

 と言うかロナは魔力感知が出来るようになるのがかなり早い。私の時はたしか1か月くらいはかかったと思うが、ロナは10日かそこらだった。

 

 ちなみにヨーコの事はまだロナには内緒だ。いずれ話すつもりだが、今はこのままでいい。知らない事は洩らしようがないし狙われるリスクが減るからだ。

 

 初めて私の補助無しで――つまりヨーコによらず――ロナが自分で「発火」の魔法を発動した時には珍しくはしゃいだ様子を見せた。

 

「あっ!?出たよ!火が出た!」 

  

「うん。出たね。私は手を放してたからロナが自分で使ったので間違いないよ」

  

 いつも割と軽いけどクールに構えているロナが、目を細くして口角を吊り上げてニンマリと笑う。よっぽど嬉しかったらしい。

 そんな感じでいると、ロナはホントに年下の妹って感じに見えた。


「うはぁ~マジか!?ウチが魔法!?使っちゃったかぁ~!?」 


 私はちょっとお姉さん風を吹かせて「その魔法石、ロナにあげようか?」と聞いたが、「自分で獲りたい」と首を振るので手に入ったら返してもらう事にした。

 

 それはそれとして、ロナは魔法の才能が有りそうだと分かったので、私はロナの右の手首に「小雷撃」の魔法石、右の足首に「擬態」の魔法石を追加で括り付けた。

 

 私と違って胸じゃないのは、魔法を覚えている最中のロナには、別々の場所のほうが意識しやすいと思ったからだ。

 

 ちなみに、すぐに新しい2つの魔法も使えるようになったロナは、特に「擬態」の魔法を面白がった。

 

 そんな感じで森の中を移動しつつ朝は発火蜥蜴狩り、昼から発雷鼠狩り、移動中は虫狩り、たまに私と対人戦闘訓練、というハードな訓練付けの毎日を送っていた。

 

 もちろん、狩りでは私もロナと交互に戦って訓練していた。片方が戦って片方が周囲の警戒と見学と言う感じだ。

 

 それに私は私で新しく手に入れた魔法石――魔法使いの男が持っていたやつ――を使う練習も始めていた。

 

 あの魔法使いの男は5つの石が付いたネックレスを身につけていた。ヨーコに見てもらうと予想通り全て魔法石だった。「雷撃」の魔法、「短距離転移」の魔法の他に「隠形」、「慣性力」、「剛力」の魔法石を持っていた。

 

 正直、あの魔法使いの男が、もっと「隠形」、「短距離転移」、「剛力」の魔法をガッツリ使っていたら気づく間もなく捕まって捻り潰されていた気がして背筋が凍った。

 

 私はヨーコの魔法石は別として、戦闘用にはしょぼい魔法石しか持ってなかった訳だが、それでもあの男は私が何かの魔法石を持ってる事は確信していた筈だ。

 

 それなのに特に警戒する事も無く、堂々と姿を見せつけ、私達を甚振いたぶり殺そうとした。

 

 傲慢で粘着質な喋り方と言い、人質を取ったり、子供を襲って持ち物を取り上げようとするやり方と言い、間違いなくクズ人間だが、皮肉なことにその傲慢な性格のおかげで勝って生き残れたとも言える。

 

 それにあの魔法使いの男と戦った事で、今まで「発火」や「小雷撃」のような近距離型の魔法しか使った事が無かった私が、「雷撃」や「短距離転移」のような中距離~遠距離型の魔法の使い方のコツを知ることが出来た。

 

 とは言え、とても有難がる気にはなれないが――何となく私はため息をついた。

 

「――その魔法凄いね。アイツが使ってたやつでしょ?」 

 

「うん。でも敵も持ってるかも、と思ったら嬉しいより怖いよ」 

 

 私はそう言うと、「短距離転移」の魔法でロナの背後に現れて軽くほっぺを突く。

 

「うわっ!?」


「ね?」


「……ミラ、こんなのよく見破れたね?」


「殆ど勘だったけど、魔力の動きは感じてたからね」


「ウチは何も感じなかった~」

 

 ロナがガックリと肩を落とした。

 

「ロナと私じゃ練習量が違うから」 

 

 私はちょっとドヤって見せた。

 

「くっ、すぐ追いつくし!」 

 

 ちなみにヨーコによれば、今の私達の能力値はこんな感じだ。

 

□ ミラ(人族)(9)

□ 筋力  6 (11) 

□ 瞬発力 9 (22)

□ 持久力 6 (11)

□ 耐久力 5 (10)

□ 精神力 10(12)

□ 魔力  12

□ 棒術    LV.8

□ 魔力感知  LV.6

□ 魔力制御  LV.3

□ 魔力探知  LV.4(UP)

□ 魔法制御  LV.5(UP)

□ 身体強化  LV.5(UP) 

□ 

□ 敏捷力   LV.3

□ 瞬発力   LV.5(UP)

□ 精神力   LV.2(UP)

□ 

□ 発火    LV.1

□ 異空間収納 LV.2(UP)

□ 洗浄    LV.1

□ 短距離転移 LV.1(NEW )

□ 雷撃    LV.1(NEW )

□ 隠形    LV.1(NEW )

□ 解体術   LV.1 

 

 ☆

 

□ ロナ(人族)(10)

□ 筋力  9(10) 

□ 瞬発力 8(9)

□ 持久力 7(8)

□ 耐久力 6(7)

□ 精神力 12

□ 魔力  10

□ 棒術   LV.2(NEW ) 

□ 魔力感知 LV.1(NEW )

□ 魔力制御 LV.1(NEW )

□ 魔法制御 LV.1(NEW )

□ 身体強化 LV.1(NEW )


 まず驚いたのはロナが年上だった事だ。ロナの方がお姉さんだったが、もう私が姉と決まったのでそこは揺るがない――揺るがせない。

 

 そして、全体的に目を引いたのはロナの優秀さ?と言うか私のショボさ?素の能力値はロナの方が全然良かった。筋力はほぼ大人の男の人並みだし、私が勝ってるのは瞬発力と魔力くらいしかなかった。

 

 しかも早くも身体強化を覚えているし、棒術は最初からレベル2だし。

 

 私の方はと言えば、「小雷撃」の魔法より先に「雷撃」の魔法がきたのが意外だったくらいだ。

 

 ちなみに「異空間収納」の魔法がレベルが上がったが、何が変わったのかが分からない。元々ヨーコから、ほぼ無限に入ると聞いているし、中に入れた物は劣化もしない。使い勝手が変わった感じもない。謎だ。

 

 まあ魔法制御も結構上がってきたから、そのおかげで魔法が能力値に現れやすくなったのかもしれない。他も、全体的に順調に伸びている。

 

 ともかくこれからはロナと2人で誰も手だし出来ないほどの強大な魔法使いになる予定だ。

  

 だから妹が優秀なのは良い事だ。私も姉のプライドをかけてもっと頑張ろうと言う気になるし。


 要するに私は全然、何も気にしてないし、焦ってない。無いったら無い。



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ここまでで第一部終了です。明日からすぐに第二部を投稿開始します。

ストックのあるうちは変わらず1日1話更新予定です。

第二部からもよかったら宜しくお願いします。


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読んでくれて、ありがとうございました♪

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読みやすいし、話もとても面白い。 これがランキング1位に上がってこないのが不思議でならない!
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