33 結成
ミラが「話そう」と言って来た。さっきの事――ロナが攫われてからのアレコレ、だけじゃないだろう。
多分ロナがミラに「パーティを組んでくれ」と言った時、ミラが「話したくない」と言っていた「秘密」の事も話してくれる気なのかもしれない。――と言うか何となくその「秘密」が何だったか、もう分かってしまったが――。
考えてみればそれもこれも今日の事なのだ。本当に色々あった1日だった。
ロナはもう自分は死ぬんだと思ってたし、自分がヘマして捕まったせいでミラまで殺しかけたとめちゃくちゃ凹んでいた。
「――じゃあ、ミラが話してよ。ウチは聞いてるし」
ロナが沈む気持ちを押し殺してそう言うと、ミラは一瞬、迷うような顔をした後、話し始めた。
まずミラが話したのは、何故、ロナの「お願い」を保留したか、についてだった。
「ロナ、私、少し前に、ホントに偶然、魔法石を手に入れたんだよ」
ミラの「秘密」は、ロナの思っていた通りのものだった。
何でも、ミラは偶然、特別な魔法石を手に入れてから魔法が使えるようになり、それから毎日、狩りで魔法や戦闘の訓練をしながら新しい別の魔法石を探す日々だったらしい。
「――あっ、それってあの日じゃない?昼過ぎに森で会った日――雨が降りそうなのにミラはまだ頑張るって残ってた――」
「そうそう、よく覚えてるね」
何でもあの後、雨が降ってきたので帰ろうとしたら、ウサギ――凶悪な爪と牙がある――に襲われ、何とか倒して解体したら魔石が出て来てラッキー!と思ったら実はそれが魔法石だったと言う。
ロナは幸運か不運か分からない話だと思ったが、トータルでは断然、幸運だろう。そう思ったが、その後の尾行やその他のアレコレを聞くと、やっぱり不運かも?と思ってしまった。
☆
私はついに魔法石の事をロナに話した。少しすっきりしたが、不安が無いわけではない。
ロナがベラベラ喋るとは思わないが、今回みたいに秘密のせいで攫われたり襲われたりすることは普通にあるだろう。
ただ、今回、攫われたロナを「助ける」と決めた時点で、私の中で答えは出ていた。
私はロナを見捨てられない。なら傍に居て護るしかない。
ロナは少し緊張した顔で私を見ていた。
良くない答えを想像しているような顔をしているように見えた。それはある意味、正解だ。
「――ロナ、保留してた答えだけど」
「うん」
「――答えは『断る』だよ。私、仲間は要らない」
私の言葉を聞いたロナの顔が諦めと失望に染まる。
ロナにそんな顔をさせたくはなかったが、私にとって大事な事なのでちゃんと言わないといけないと思ったのだ。
「そう――」
ロナが何か「諦めの言葉」を言う前に私は急いで言葉を被せた。
「だけど――だけど、私は姉妹なら欲しい」
「……ん?」
ロナの顔が一転して困惑の表情に変わる。首を傾げて固まっている。
私はと言えば、頬が熱い。恥ずかしい事を言っている気がする。だが、私の中で、これは「なあなあで済ませる」のは出来ない事だった。
そんな私の様子を伺いつつ、ロナが少しおどけた感じで口を開いた。
「――それって、つまりオッケーって事?」
「違うでしょ、ロナ。何、聞いてるの。ノーって事だよ。だけどロナは私の妹になれば良いよ、って事」
「えぇ?どっちかと言えばウチが姉の方じゃないの?」
ロナが嬉しそうに言う。
「は?ロナは私に鍛えて欲しいんでしょ?なら私がお姉さんでしょ?」
ロナは少し笑った。
「――うん、まあ、そうだね。今回も助けてもらったし――まあ元々はミラの『秘密』の巻き添えだけどね」
「う……そこは悪かったと思ってるよ」
ロナがまた笑う。そして私を抱きしめた。あのクソみたいな孤児院を一緒に脱走してから――と言うより、物心ついて私がロナをロナと認識してから、初めての事だった。
「――よろしくミラ姉ちゃん。これからウチを鍛えてね」
「――うん、よろしくロナ――呼び方は今まで通りでいいんじゃない」
私もロナを抱きしめ、それから身体を離すとロナも赤い顔をしていた。私だけじゃなくてちょっと安心した。
ちょっと気まずいけど、私の中でロナが特別なんだという確認の為、自分に言い聞かせるため必要な儀式だった。
そうしないと、私は割と何でもすぐに「切り捨てちゃう」気がするのだ。
今回、儀式で姉妹になったけど、実際ロナはホントに姉妹みたいに育った、ただ一人の人間だ。絶対切り捨てたくない。
(上手くまとまってよかったわぁ)
ヨーコが微笑ましそうな雰囲気を醸していた。と言うかヨーコの事を忘れていた。さっきよりもさらに恥ずかしい波が襲って来る。
激しく赤面する私にヨーコが笑いながら言った。
(これがハズカシヌってやつねぇ)
私は「なるほど」と思いつつ、ピキピキと青筋を立てたのだった。
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