表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/86

30 魔力探知講座

(ミラは魔力探知をどういう風にやってる?)


 ヨーコはまず聞いて来た。正直、すぐに答えを教えて欲しいが、そうやって文句を言う時間すら勿体ない。私は雑念を追い払ってヨーコの問いを考える。

 

「どういう……何となく周りを探る感じ?生き物は身体に魔力が巡ってるから、だいたいの形や大きさ、強さなんかも感じるけど――?」 

 

(そう、その「何となく周りを探る感じ」というぼんやりしたイメージだと、魔力が全周囲に均一に広がってしまうの。必要のない上空や地面の中までね。そのやり方では効率が悪すぎて、わたしくらい魔力が大きくてもあまり探索範囲を広げられないわ)

 

 言われてみれば、確かにそこのイメージは曖昧だった。せいぜい魔力消費を抑える為、送り出す魔力濃度を薄くしようとしているくらいだ。

 

(そこでこのように――)


 そう言いながら、ヨーコが魔力を送り出す。それは薄い薄い風船みたいな、中身が空っぽの球形の魔力で、ヨーコの――つまり私の――全周囲に無数の小さな球体が並んでいく。

 さらにその魔力の球体の周囲にも魔力の球体が並びお互いに一点で繋がって、まるで無数の丸い積み木のように整然と積み重なり綺麗な形を作りながら拡散していった。

 

 そしてその魔力の球体はある程度以上の高さには延びて行かず、しかもヨーコに近い中心部分の球体はどんどん統合整理され、やがてヨーコを中心とした巨大ドーナツのようになり、まだまだ広がっていく。

 

(はい、ヒット。ロナちゃん、みつけたわ) 

 ヨーコによれば、ロナはこの街の貴族街――領主以外の領地を持たない貴族たちの屋敷がある区画――で手足を縛られて転がされているという。

 

 ともかく、ロナが生きている事、今いる場所が分かって私はホッと息を吐いた。

 

(じゃあ、今度はミラがやってみて)


 私は、ヨーコにロナがいる方角だけ教わってから、同じ様に魔力探知を試みる。

 

 魔力を風船の様に丸く膨らませて送り出すイメージはそう難しくなかった。だがその魔力の球体一つ一つを小さく形作り、全周囲に同時かつ無数に送り出す、というのが檄ムズだった。

 

 私が送り出せた魔力の球体は非常に大きく、連結も雑でところどころ抜けがあった。ヨーコの魔力探知と比べたら「手抜き工事の巨大な丸いオブジェ」と言う感じだった。

 

 それでも、無意識にやっていた時より遥かに遠くまで探ることが出来るのを感じる。ただ、「魔力のオブジェ」1つ1つが大きすぎてがスカスカなせいで、おそらく魔力探知の精度はかなり低いだろう。

 

 とは言え、「何を探るか」分かっていて、「ざっくりと素早く広い範囲を捜索したい時」には非常に役立つ探知方法だと理解した。

 

 逆に戦闘中とかだと、今までやっていた探知方法のほうが、探索範囲が狭い代わりに簡単で精度が高くて漏れが無いので良いかもしれない。

 

 そんな事を考えている時、私の魔力探知のギリギリ限界の距離で、私もロナの魔力をキャッチ出来た。

 

「――居た!」 

 

(上手上手。あとは必要に応じて魔力の球体を小さくして、数を増やしていければ完璧ね) 

 

 ロナを探知出来て、ヨーコの「まるでいつも通り、大変な事なんか全然起こってないみたいな声」を聞いて、私は少し落ち着いて来た。

 勿論、まだ見つけただけだ。これから短時間で犯人の貴族屋敷に「侵入」して「救出」して「脱出」しなくてはいけないので、気を抜いている場合ではない。

 

「よし、じゃあ行くね」


(頑張って。ミラならきっと助け出せるわ) 

 私はヨーコに激励されながら貧民街の路地を貴族街へ向って走った。暫くして平民街に入る。

 

 いつも廉価パンを売ってくれるパン屋を通り過ぎ、平民街の中央部に差し掛かった。この辺りは平民街でも割と立派で裕福そうなお店が多く並んでいる。一部のお店は大店と呼ばれ、貴族の御用聞きなども行っているらしい。

 時折、夜回りの兵士を見かけるが、物陰に隠れたり「擬態」の魔法でやり過ごす。

 

 平民街の中央部を抜けると水路が見えて来た。水路と言っても、幅が広く、深さも結構ある。最初にこの街が出来た時、ここは街の外壁と外堀だったらしい。その後人が増え、外壁と外堀のさらに外側に人が住み始め、貧民街が出来、やがて平民街になった。この街の領主様に勢いがあった時にその平民街ごと壁で囲って今の街になったという。

 

 水路には橋が架かっていて、貴族街側の橋の袂には兵士が詰めていた。夜間は貴族街と平民街の間の壁(内壁)の門も閉まっている。

 

 まあ、門が開いている昼間だとしても、普通に兵士に止められるので、貧民街の子供が貴族街に入ることは出来ないし、何かの事情で入って歩くと目立ちまくること間違いなしだ。

 

 私は「擬態」の魔法を維持しながら水路の脇まで進み出た。橋から離れた場所なので人目は無いが、一応、魔法は掛けたままだ。

 

 明るい昼日中、衆人環視の状態でそんな事をすれば(おそらく全身にボディペインティングした人が歩いている感じに見えるはず)とヨーコが言っていた。

 

 良く分からない言葉もあったが、要は「擬態」の魔法はそういう状態では効果が薄いという事だと理解した。

 

 この魔法は動いたら効果が激減する。とにかく注目されないことが大事なのだ。

 

 だけど今は深夜。月明りで明るいとは言え昼間よりは暗く、人目も殆ど無いのでこれでも十分立派な隠れ蓑になる。

 

 水路の際に立つと水路の壁を伝って水路に降りる。自然の川に繋がっているため多少の流れはあるが緩やかで、お世辞にも水は綺麗とは言えない。と言うか汚い。

 

 けど、今の私にはそれを気にしたり嫌がったりする余裕も無かった。

 

 音を立てないように水に入ると、水路の壁から手を放し対岸に向って泳ぎ始める。幅は広いが「水路としては広い」という程度なので、すぐに泳ぎ切った。

 

 対岸に着くと、水路の壁を登り、「洗浄」の魔法で自分を丸ごと洗う。この「洗浄」の魔法を使うと不思議な事に綺麗になるだけでなく、乾いた状態になる。その上、嫌な臭いも無くなるし魔法を使う前よりしわになったりもしない。非常に便利な魔法なので、自分で魔法を使えるようになってからは多用している。

 

 ヨーコ曰く(センタクキとショクセンキとショッキカンソウキを混ぜた感じで更に人に対しても使えるように温度とかも気を付けて作った)との事で、複数の工程を1つにまとめてある上に様々な工夫を詰め込んだ渾身の作らしい。

 

 私は最初に「そういうものだ」と刷り込んでもらったおかげで問題なく使えている。

 

 ちなみにこの魔法を教えてもらった時、最初に思ったのは「魔法って自分で作れるのか」という事だった。それは最初にヨーコに聞いた「魔法とは魔物の特殊能力」である、という説明とちょっと違うような気もしたが、便利なのでそれ以上気にしていない。

 

 私の目の前にある街の内壁は、昔は外壁だったとはいえ、そこまで高くないが、勿論、子供が簡単に乗り越えられるほど低くも無い。

 

 私の目算では、内壁はだいたい大人の男の人2人分くらいの高さに見えた。

 

 足に力を込めて跳び上がると、内壁の頂上に簡単に手が届いた。今や私の瞬発力は大人の男の人の2倍以上で、体重は半分もない。壁を蹴って跳び上がればさらに高く跳べると実感した。

 

 そしてそこから自分の身体を内壁の上に引き上げるのは更に簡単だった。

 

 私は内壁の上から貴族街側に飛び降り、目的の貴族屋敷を目指して走り始める。

 平民街と同じく夜回りの兵士がいたが、それに加えて各屋敷の門には兵士が常駐していた。

 

 ただ平民街と違って、ある屋敷の門から隣の屋敷の門までが異様に遠いので、夜回りの兵士と屋敷の門前だけ気を付ければそれほど移動を妨げられることは無かった。

 

 夜回りの兵士や門の兵士をやり過ごす私にヨーコが(要はダルマサンガコロンダよ)とか言っていたがそれは良く分からなかった。



読んでくれて、ありがとうございました♪

もし続きを読んでも良いと思えたら、良かったらブックマークや評価をぜひお願いします。

評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ