24 真相?
テア達4人を探索者ギルド会館に送り届けると、私はギルド職員に相談して、兵士に事件を届けた。
本当は不審者4人を全員殺して事件ごと闇に葬りたかったが、関係者はあの不審者4人だけではないし、勿論、関係者全員の口を塞ぐなんて事は不可能だった。
とりあえず一番身近な門を守護する兵士たちへ届けると彼らの兵舎で事情を聞かれた。
どこから話したものか迷いつつ不審者が探索者ギルドの付近で新人に絡むようになった辺りから話し、新人パーティが攫われ、私が救出依頼を受けて救出したこと、犯人たちを連行する余裕がなかったので森に縛って木に吊るして置いてきた事を話す。
彼らが別の探索者から何かを奪って殺す目的で他所から来た事、元々人攫いにも手を染めていて、新人パーティの女の子たちを攫って行く予定だった事などを尋問して聞き出していたので、それも兵士に正直に申告した。
後で兵士が改めて不審者達を尋問した場合、私が何かを隠そうとしたのでは?と疑われるのは嫌だったからだ。まあ、実際、隠そうとしている訳だが。
結局あの不審者達は、私が何処で「お宝」を見つけたか白状させてから殺せと言われているだけだった。そのせいでとにかく私が一人になったところを襲いたかったわけだが、その私が彼らを撒きまくったせいで、彼らは半ば任務を諦め気味になっていて、そろそろ本業の人攫いに戻ろうとしていたというのが真相?という事らしい。
何と言うか、横着すぎる。根性も忍耐も責任感もプロ意識も何もない。正直モージよりアホじゃないだろうか。
だいたいテアをメッセンジャーとして一人で走らせたら、夜の森で死ぬ確率は低くない。人攫いに戻るつもりならテアは大事な商品のはずだが――せめて損得くらい考えてから行動しろと言いたい。というか言いたい事は他にも山ほどあるが、言っても仕方がないのでこれ以上考えるのは止めよう。
ちなみにもし彼らを尋問した兵士が興味を持って「私が見つけたお宝とは何か?」「何処で見つけたのか?」聞いてきたら、森のあちこちでお皿を拾っただけでお宝なんて知らないし、いちいち場所なんて覚えていないと答えるつもりだ。私も大概、場当たり的だ。
まあ、それで信じてもらえるかは分からないが、ちょっと調べれば私が「お宝」と無縁なのは分かる筈だし、森の浅層にそんなものがあったらとっくに見つかってると気づく筈だ。多分。
そして、やはりあの不審者達を寄越したのはあのおじさんだと思う。
勿論、さすがに不審者達も依頼者が誰かは吐かなかった。知らなかっただけかもしれないが――。だけど「私からお宝の発見場所を聞き出す」という発想は、「私がお皿を見つけた事」を知っていて、それを「お宝」だと思っているおじさんしか有り得ない。
そして「吐かないなら吐くまで痛めつけろ」とかではなく「吐かせてから殺せ」と指示したならもう完全に暗殺指令だ。余程、先日の私の態度が気に入らなかったらしい。
☆
結局、夕方までかかって、兵士たちは不審者達4人を森から街へと連行した。私も案内でついて行ったので夕方まで拘束されて、とても疲れた。
その後、探索者ギルド会館へ戻り、いつもの受付のお姉さんからお礼を言われて喜ばれた。報酬も受け取ったが、いくらだったかは私の胸に仕舞っておきたいと思う。
テア達4人は既にいなかったが、拠点に戻る途中で会って、熱烈にお礼を言われた。キラキラした目に囲まれて少しむず痒い思いもさせられたりした。
拠点に戻るとロナにも色々聞かれ、私はまた事の顛末を詳しく話した。ロナは感心しつつも、やはりお人好し過ぎるとやや呆れ気味だった。
☆
翌朝、いつも通り日が昇ると同時に起きて、街を出て森に向う。
森に入って暫く移動しても私の魔力探知では尾行の気配は感じない。
ここの所、ずっと後を付け回される生活が続いたせいで、ようやく常時の魔力探知が習慣付いて来た。
「尾行なし」
私がボソッと小声でつぶやくと、ヨーコも同意した。ヨーコの魔力探知の精度は私の比ではないので、久々にホントに尾行無しなのだろう。
「――どうしたら良いと思う?」
(ミラしだいねぇ。わたしなら――と言うか生前のわたしなら、放っておくわね。いつでも始末できるし、そもそもわたしに下らないちょっかいをかけて来る人はいなかったからねぇ)
久々にヨーコがドヤる雰囲気を感じる。
そう、残る問題は1つだけ。あの商会のおじさんをどうするか。
私の周りの人を人質にしようとしたこと、不審者達にハッキリと私を殺せと命じていた事、しかもあんな物の為にそこまでする人だと思えば、話しても分かってもらえない事はハッキリ分かる。私にとって危険過ぎる存在だ。出来れば確実に退治しておきたい。
私はヨーコとは全然違う。無敵でも無いしたいして強くも無い。見逃してまた同じことをされたら今度は殺されてしまうかもしれない。
だが、今この瞬間、目の前に敵がいて、命を獲り合っている訳ではない。近い将来は分からないが、「報復」やら「将来襲われない為」と言う理由で人を殺し始めるとキリがなくなる気もするのだ。そしてそのうちお金をもらって人を殺すようになるかもしれない。
それではまるで殺し屋か暗殺者だ。私はそんなものになりたいのだろうか。なっていいのだろうか――。
そんな事を考えながら、午前中ずっと黙々と虫を狩り続けた。
そして森の上空に日が昇るころ、そろそろお昼にしようかなと思ったとき、ついに狙っていたお宝を発見した。
「――ついに出た」
私は、今まさに解体中の虫の体内から小さな石を取り出した。
ただの魔石と言う可能性もある、と言うかその可能性の方が高いので、魔力を注入して確かめる。
ゆっくりと魔力を注ぐと、あっさり魔法の反応が返ってきた。この石は魔法石で間違いない。問題はどんな魔法を持っているか、だがそれも判明している。
この虫は葉っぱや木の樹皮に隠れる平べったい身体をした虫で、発見した時、木の幹に張り付いていて、一見するとそこに虫がいるとは気が付かないほどのクオリティで木の樹皮に擬態していたからだ。
私は木の幹に密着して魔法石に魔力を注ぐ。すると自分が木の一部になったように景色に溶け込んでいくのが分かった。
「――どう?」
(かなり優秀な魔法ねぇ。消える訳じゃないけどほぼ完全に景色に溶け込んで見えるはずだわ。動いたり喋ったりしなければまず気づかれないと思う。ああ、でも魔力探知でバレちゃうし匂いでも気付かれちゃうだろうし、触れば普通に判っちゃうから気を付けないとダメよ?)
「よし!」
ともあれ、間違いなく「擬態」の魔法のようだ。「発火」の魔法よりは大分、苦労して手に入れた、待望の魔法なのでかなり嬉しい。
この「擬態」の魔法があれば、尾行を撒くだけでなく逆に待ち伏せて私が相手を尾行したり、なんなら不意討ちする事も出来る。
そして警備員がいるようなお金持ちのおじさんの家に侵入する事だって出来るかもしれない。
……さて、ホントにどうしよう?
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