23 尋問
私は女の子たちの元へ駆け寄りかけていたが、投げた手斧の回収や不審者の男達の武装解除を先にしてしまう事にした。
「レナ!リア!ミサ~!!」
「テ、テアッ!」
その間、隠れていろと言ったテアが走ってきて仲間達の元へと飛びこんでいった。テアも残りの3人も疲れ切ってボロボロだ。
まあ、あっちはあっちに任せておいて、私はさっさと不審者達の武器を取り上げる事にする。
痛みで苦しみ藻掻いているものの、足以外はまだ元気だ。一人だけ利き手の指も怪我しているが、それでもまだ逆の手がある。
とりあえず全員を視界に捉えるようにしつつ、手前の指を怪我させた男から処理していく。
男が取り落とした武器を拾って誰も居ない森の方へ投げる。
「おじさん、他に武器は持ってる?」
「は、はぁ!?お、お前、頭狂ってんのか!?こっちはそれどころじゃねぇっつうの!」
「はい、おじさん、他に武器は持ってますか?答えてくれないなら、危なすぎて怖いので残念ながら止めを刺すしかないですけど?」
「ま、待て待て待てぇ!何処に武器があるんってんだよぉ!?」
「私がそれを聞いてます。持ってます?」
「どう見ても持ってねぇだろうがぁ!」
「分かりました。じゃあ、うつぶせになって、両手を背中に回してください」
「な、何だってんだ!?何言ってんだ、てめぇ!?」
「はい、言葉通じないですか?やっぱ止め要りますか?」
――そんな押し問答を散々繰り返し、うつぶせになってもらい、腕を背中に回してもらって縄で縛っていく。
一応、足も縛って、腕と足を縛った縄同士も繋ぐ。これでも暴れたらさらに首も繋いで海老反り状態になってもらう予定だ。
残りの3人とも次々と無駄な問答を繰り返し、拘束し、武器を回収して、身体を探って隠し武器の類も一応探す。
そこまでしてようやく私は一息ついた。
☆
テアは木の上で大人しく隠れながら、自分達を軽く打ちのめして虜囚にした男達が、逆に手もなくやられていくのを呆然と見ていた。
テアはミラの事を以前から知っていた。周りの子とは殆どつるまないが、ロナとは仲が良く、周りから相棒みたいに思われていることも、ミラもロナも二人ともいつもぼさぼさの髪でいるけど実はとても綺麗な顔をしていることも。
そして、二人とも同じ年ごろの少年少女たち――どころか年上の子達よりよっぽど強いことも。
子供エリアも常に協力しあっている訳ではない。むしろ、弱者同士、仕方なくお互いがお互いを守り合ってる状態だが、お互い同士は仲が悪い者も多く、よくケンカをしている。
ミラもロナもケンカを売られる事はあったが、負けたという話を聞いた事が無い。
そして、ミラは最近、メチャクチャ稼いでいるらしいという噂まであった。それに嫉妬して絡んだらしいモージもいつの間にか追放されている。
要するに、ミラやロナはテア達年下の子達の憧れの存在なのだ。
そのミラが、単なる子供のケンカじゃなく正真正銘、大人の無法者との刃物を使った実戦で奴らをズタボロにしたのを見てしまった。
少し前まで、こんな所で犬型魔物に喰われて死ぬのかと絶望していたのに、今はメチャクチャ興奮していた。
思い出すだけでも痺れるあのミラの素早い動き。ハッキリ言って街の子供同士のケンカではメチャクチャ手加減してたんだと気づいたのだ。それがまたカッコ良いと、テアは身震いした。
ただまあ、それはテアの誤解で、ミラが強くなったのはごく最近なのだが。そして、それまでは絡まれそうになったら上手く逃げていたのだが、テア達はそんな事は知らなかった。
テアの仲間のレナもリアもミサも、絶望と苦痛と疲労でぐったりしていて、ミラの立ち回りを殆ど見ていないらしく、何が起きたのか分からずポカーンとしている。
テアはとりあえず、3人の拘束をナイフで切り、全員を助け起こし、怪我がないか確かめた。テアを含め、何回も殴られたが、幸い、誰も酷い怪我はしていなかった。
3人にとりあえずの事情を話していると、ミラが近づいて来た。
「テア。他のみんなも、大丈夫?」
「だ、大丈夫です」
「は、はい」
「大丈夫、です」
皆、口々に大丈夫だと告げる。そうするとミラが少し笑った。これがまた、すっごく可愛いのだ。こんなに可愛いんだから、きっと人攫いに狙われまくってるんだろう。だからきっと、あんなに強くなったのだ。
仲間達もミラに見惚れてポーっとしていた。まあ無理はないけど、私なんて全部見ていたのだ。ミラが男の子なら絶対結婚したい。
テアがそんな事を妄想していると、ミラが一旦、報告に帰ろうと言った。そして、手伝ってほしいと言う。
何の事かと思ったら、あの不審者の男達を縄で木の枝に高く吊るし上げるのを手伝ってほしいと言うのだ。
とりあえず、犯罪者としてギルドか兵士に突き出したいが、全部、持って帰るのは無理だ。けど、置いて帰ると魔物に食われちゃうかもしれない。
そこで、仕方ないので吊るし上げて急いで帰って通報したいと言う。まあ、それでも木の上も守備範囲な魔物に見つかって喰われるかもしれないが、そうなればもう仕方がないし別に何とも思わない。むしろテアは喰われたら良いとすら思う。
テア達は快く承諾して、皆で協力して一人ずつ木の枝に高く縄で吊り上げた。パッと見「変な木の実」が成っている「変な木」みたいになってしまった。
テア達4人は、ミラに護衛されつつ、いつもの活動場所より深層にある不審者達のベースキャンプを離れて街に戻った。昼前だったこともあってか、魔物や獣に襲われることもなく、昼頃までには街に着き、探索者ギルド会館に到着できた。
「テア!レナ!リア!ミサ!」
探索者ギルド会館に入ると、受付のお姉さんが泣きそうな顔で駆け寄ってきた。テアも他の3人も、何かを言いたかったが、急に涙が込み上げて来て、胸が詰まって言葉が出て来なくなった。
4人まとめて、お姉さんに抱きしめられ、皆でワンワン声を出して泣いた。間違いなく、後で黒歴史になる、そう思いつつ、涙が止まらなかった。
テア達が気づくと、ミラは他の職員さんと話して、兵士に通報し、人数を揃えて荷馬車を引いて森にとんぼ返りしたという。
多分、1歳くらいしか違わないのに、ミラと私達ではあまりにも違う、とテアはちょっと落ち込み、やっぱり憧れた。
そんなテア達を見て受付のお姉さんが「ミラちゃんずっと頑張ってたし、強くなったなと感じたのは本当に最近よ。みんなも頑張ったらきっとそのうちミラちゃんみたいに強くなれるわ」と言った。
ホントにそうなれるかどうか分からないけど、あのミラがずっと頑張ってたというなら、私達が普通に頑張るくらいじゃとても追いつくはずはないとテアは思った。
それでも不思議と悔しいとは感じないし、ミラを思うととてもドキドキするテアだった。
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