22 発見
テアが立ち往生していた位置から、巨木の森の深部へ向かって進んで行く。
テアの背中を追いながら、いつもより遥かに真剣に魔力探知を使う。周囲を目いっぱい探りながらの歩みは、飛び込んでくる情報量が非常に多く処理が追い付かない。ともすれば足元のちょっとした木の根の出っ張りにすら足を引っかけそうになる。
この辺りはまだ全然、巨木の森の浅層のはずだが明らかに森の魔素濃度が増し、周囲の木々のサイズがハッキリと大きくなっていく。そこ此処にいる魔物らしき魔力反応も普段感じる魔物より大きい。
そんな中を、テアは不安気に奥へ奥へと歩いていく。そして、立ち止まった。
「――この辺りです。間違いないです」
この先に、少し開けた場所があるらしい。以前にも探索者パーティや軍などのベースキャンプとして使われた事があるのかもしれない。
そして私の魔力探知でもこの先に7人分の魔力反応を探知していた。
3人、3人、1人と狭い範囲に少しばらけて点在していて、片方の3人は反応が弱い。新人パーティの子達だろう。
残りの4人は新人パーティの子達よりはかなり強い反応だった。1人離れた位置に居るのは、一応見張りだろうか。
(敵は4人。1人だけ少し離れた所にいるわ。1人1人の実力は総合力ならミラとほぼ同程度。だけどミラは特化してるから、強みを活かせば大丈夫よ)
私はテアに気づかれないように小さく頷く。
(良い?やるなら常に圧勝しなさい。出来ないなら逃げること。『正々堂々五分五分の勝負』は2回に1回は死ぬってことよ?)
そんな声に背中を押されながら、私はテアに声をかける。
「テアはその辺の木にでも登って、隠れてて」
「――真っすぐ突っ込むんですか?」
「あの程度、私には朝飯前だから」
そんなセリフを口にすると、テアが目を丸くする。私は内心、メチャクチャ恥ずかしくなっていた。流石に調子に乗りすぎだろう、とは思う。
だがこれは心の持ちようの問題だった。それくらいでないと、彼女達を助けるのには荷が重い。その程度、言い切れないようでは関わり合いになること自体間違いだ。
そして私は自分の心に問う。そして心からそう思っている自分を確認した。
もはや問答無用。テアに向って木の上を指さすと、テアはコクコクと何度も頷いて軽い身のこなしで登って行く。
そして私は極力、気配を消しつつ、1人離れたところに居る男に近づいていく。
当然、開戦は必殺の不意打ちからの予定だ。
その男は開けた空間の森の端5メートルあたりに立って森の方を向いている。
もう朝だというのに残り3人は焚火を囲んで座っていて何か話している。
人質になっている新人パーティの女の子たちは少し離れたところに縛られて転がされていた。
私はそこまで確認すると1人離れたところに居る男へジワジワとにじり寄る。
私は何とか森の端から3メートルと言うところまで這い寄ったが、これ以上は気づかれると直感した。その距離8メートル余り。一息に飛び込むにはやや厳しいが、そこは少しの手間で何とでもなる。
私はテアから見えないよう、胸の前に「異空間収納」の魔法から手斧を取り出した。そしてその手斧をポーンと山なりの緩くて高い軌道で、1人離れたところに居る男の頭上へ向かうように投げつけた。
朝でも薄暗いとは言え多少は開けているし、たとえ辺りが暗くても、そこそこ大きな物体が視界の中で動けば違和感が凄い。男も眉根を寄せて違和感の元を見上げた。
「――何だ……斧?」
元々、気が緩んでいたのだろう。余裕で躱せる緩い速度、緩い軌道は男の危機感を即座に刺激しなかったはずだ。
思わずキャッチしようと手を伸ばした男の脇の方から、全速力で突進した私に気づいて、初めて男の警戒心が反応した様に見えたが、時すでに遅し。
脇を開け腕を上げて、やや上を見た姿勢の男の背中に抜けながら無防備な膝裏を解体用ナイフで掻っ斬る。
「うぐあッ……!?」
呻き声をあげながら、千鳥足で酔っ払いのように倒れる男。
「――何だぁ?」
「急にどうした?」
「何をふざけて……おい、マジなのか!?」
焚火を囲んで座っていた3人が男の様子に気づいて腰を浮かす。その時には既に足から血を流して倒れた男の背後を抜けて走った私が、他の3人の背後に回り込んでいた。
流石に一番近くの男が私の接近に気づいて振り返ったが、その膝裏に解体用ナイフを突き立てた。
「ぁ……ッ!?」
声も出せずに背中から倒れ込む男。
「なっ!?」
「おいっ!?」
やっとそれに気づいた2人のうちの1人の背後から近づくと、焚火を挟んで向かい側の男と目が合った。
「お、お前ッ!?」
走りながら既に2本目の手斧を「異空間収納」の魔法から取り出していた私は、その声と同時に手斧を目の前の男の膝裏に叩き込んだ。
「ぐぁ!?」
目の前で倒れる男を軽く躱しながら、私は解体用ナイフを構え、最後の一人に向って歩く。
「1対1ですけど、やりますか?降参するなら拘束するだけで済ませますけど?」
「な、な、何だお前はぁああああぁっ!?」
「言葉、通じないなら面倒だから制圧しますけど、どうします?」
「ふふ、ふ、ふざっ、ふざけんじゃねぇぞ!?」
「了解」
私は目の前の焚火を蹴りあげる。火のついた薪が男の顔に向って飛散した。咄嗟に顔を庇う男。その瞬間、姿勢を低くして全力で男の背中に向って駆け抜け、振り返ればがら空きの背中が見えていた。
私は男の無防備な膝裏を斬りつける。
「ぐあぁっ!?」
ふらつく男の両膝の裏を斬ると男を背中から蹴り倒す。
「ぐっ……!?」
男は既に武器を抜いているので、武器を持つ手の指に斬りつける。
「ぎゃああああぁっ!?」
狙い通り、男が武器をとり落としたので、ひとまず放っておいて、私は縛られて転がされている女の子たちの元へ駆け寄った。
(ミラ、油断したらだめよ?怪我をしているとは言え、体力的には貴女より全然強いし、まだまだ力は残ってるんだから)
私は、ホッと一息していたところだったので、ギクッとした。そして、慌てて小さく頷いて見せた。
そう、まだ不審者の男達の反撃を警戒しつつ拘束して、尋問しなくてはならないのだ。
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