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18 成長

 隙を突いて拘束を逃れた私はすぐに裏道から表通りに飛び出して人ごみに紛れた。

 

 裏口作戦はもう通用しないらしい。そして拠点も既にバレている可能性も考えておく必要がある。

 

 ホント、色々面倒くさいことになった。わざわざつけ回さなくても、用事が出来ればこちらから訪ねていくから、その時に話を聞いてくれたら良いだけなのに。それで出来ればちょっとだけ親切にしてくれると嬉しい。そしてそれまでは放っておいて欲しい。私の望みはそれだけなのに、そんな簡単な事が分からない人たちと何も話したくないと思った。

 

 まあ、それは私の事情なので通らない事は分かっている。分かっているがうんざりするのだ。

 

 それに、ロナにある程度、事情を話して注意するように言う必要がある。何なら私だけ拠点を移った方が良いかもしれない。ただ、大げさに反応するとやっぱりロナを人質にするのは有効だと思われるかもしれない。悩ましい。

 

 あの男達に言った事は概ね私の本心だが、このことでロナが危険な目に遭うなら、完全に私の巻き添えだ。さすがにただ黙って見ていることは出来ない。

 

 ☆

 

 今日は朝一番に探索者ギルド会館に行ったので、まだ昼までだいぶ時間がある。

 

 普段はわざわざ朝、探索者ギルド会館に行ったりしない。朝は依頼を探す同業者で混んでいるのだ。

 私は基本、個別の依頼は受けず、大抵、その日採れた(獲れた)薬草や運が良ければ魔物の肉と素材を売るのがメイン。そういうのは常時買い取ってくれるので朝行く必要がない。

 

 私は拠点には帰らず、いつものパン屋でパンを買って、久々に以前良く探索していた森の浅層の、さらに入口近くの一帯を流して歩いた。そして、目当ての人物を見つけた。

 

「おーい、ロナ」 

 

「お~、ミラ。この辺で会うの久々じゃん?」 

 

「ちょっとロナを探してた」 

 

「え、何で?」 

 

 私は変なのに尾行されてた事や、最近になって声をかけられた事、話があるからついて来いと言われて断るとロナや近所の子達を引き合いに出して脅された事を話した。

 ロナは黙って聞いてくれていたが、脅された話を聞くと、相当驚いた様子で目を丸くした。

 

「え~、何、ヤバイじゃん!?まさかついて行っちゃったの?」 

 

「行かないよ。怖すぎるし」 

 

 そもそも行動が真っ当じゃないし、それに私たちの常識では、金持ちは権力者であり、権力者は大体ヤバイ、というのが共通認識なのだ。ついて行ったが最後、それっきり「最近あの子見ないね」となっても不思議はない。

 

 私が脅されてついて行ったわけじゃないと分かるとロナはホッと表情を緩めた。

 その後、疑問符を浮かべながらロナが首を傾げる。


「――ん?だったら、ミラの話って何?」 

  

「一応、私のせいでとばっちりがあるかもしれないから、ゴメンってことと、気を付けてって話」 

 

「ミラ――そんなのわざわざ誰も言わないよ。そのせいでハブられたら損しかないじゃん」 


 ロナは一転、呆れた顔になった。

 

「ん、まあ、お隣さんだから、一応さ」 

 

「バッカだなー、ミラ、ウチなら絶対黙っとくな~」 

 

 ロナに呆れられながら、久々にロナと一緒に歩いて森を探索した。定番の薬草がそこそこ採れた。

 

 昼になり一緒にお昼休憩にする。買ってきたパンを食べているとロナが私をみて、また首を傾げる。

 

「ミラ、絶対最近稼いでるじゃん?なんでまだこんな不味いパン食ってんの?」 

 

 こんな、というのはつまりロナも同じ店で買ったパンを食べているということだ。

 

 ちなみに、別に、いつも行くあのパン屋の腕が悪くて不味いわけじゃない。

 貧民街の子供でも買えるように安い素材で大量に作った廉価パンだから不味いのだ。不味いというか、美味しくない、ってくらいか。

 

 ちなみのちなみに、そんな廉価パンでも出来立てなら不味くない。ただ、廉価パンは売れ残っても翌日以降もそのまま並ぶ。だから不味い時もあるのだ。

 ヨーコは(ボランティアみたいなもんだから、仕方ないわねぇ)とか言っていた。

 

 ☆

 

 昼からはまた、ロナと別れて魔法石狩り&戦闘訓練に戻った。

 

 今の狙いは、引き続き発雷鼠の魔法石と、虫型魔物の擬態か隠形系の魔法石だ。

 

 武器はまだ杖のままで棒術オンリーだが、そろそろ別の武器も使ってみたい気持ちもあり買うかどうかは迷っている。だって、武器は高い。そういう高い武器を買うとさらに悪目立ちしそうでイヤなのだ。

 

 もちろん、逆に周りから一目置かれたりするかもしれないけど、一方でまた、やる気があると思われて受付のお姉さんに指名依頼とか押し付けられるかもしれない。

 

 なので今のところ、こっそり磨ける「身体強化」の魔法を強化中だった。

 

 ちなみに今の私の能力値をヨーコに聞くとこんな感じ。

 

□ ミラ(人族)(9)

□ 筋力  6(9) 

□ 瞬発力 9(17)

□ 持久力 6(9)

□ 耐久力 5(8)

□ 精神力 10

□ 魔力  12

□ 棒術   LV.7(UP)

□ 魔力感知 LV.6(UP)

□ 魔力制御 LV.3(UP)

□ 魔力探知 LV.2(UP)

□ 魔法制御 LV.3(UP)

□ 身体強化 LV.3(UP) 

□ 

□ 敏捷力  LV.2(NEW )

□ 瞬発力  LV.3(NEW )


 前にヨーコに計測してもらった時からすると、瞬発力がメチャクチャ伸びている。ただ、私の肉体が急速に成長したわけではなく、補正で伸びている。つまり、身体強化が伸びているのだ。

 

 それに加えて能力値とは別に、敏捷力と瞬発力という個別の項目が増えていた。

 そして、計算して見ると、身体強化、敏捷力、瞬発力のレベルの合計値が全て能力値の瞬発力の補正値として加算されていた。


 今の私は、筋力、持久力、耐久力も大人の平均的男性とほぼ同程度、瞬発力は2倍弱もあるという事だ。正直、ホントにそんなに差があるのか試してみたいくらいだった。


 なぜこんなに急速に伸びたのか?それはもちろん、ヨーコの指導のおかげだった。

 

 この1か月あまり、指名依頼のせいでひたすらレアモンを探しつつ、虫型魔物を狩りまくっていたが、その時に漠然と身体強化になっていた魔力を意識して上半身か下半身に集中させてみろと言われていたのだ。


 敵を殴り潰し、握り潰し、捻り潰す上半身強化か、走って跳んで回避して、敵を翻弄する下半身強化か。

 私は迷わず下半身強化を選択した。「どんな敵でも叩き潰せる私」もちょっと良いと思うけど「誰にも捕らえられない私」のほうが断然好みだったから。


 おかげで以前の私なら、悪そうな大人の男の人2人に囲まれたら、ビビってちょっとチビりそうだったのに、全然怖くなかった――ちょっとしか怖くなかった。なんなら「ヤるならヤッてやる!」って感じでつい調子にのってしまったほどだ。


 ロナと別れた昼からだけでも、夕方までに以前よりたくさんの発雷鼠と虫型魔物を発見し討伐できるようになった。


 あっという間に発雷鼠を5匹、狩って捌いて背負い籠に入れ、後はひたすら夕方まで虫を狩る。今日も魔石も魔法石も出なかったがそのうち出ると考えて気にしない様になった。


 ☆


 その数日後の夕方、いつも通りの狩りを終えて探索者ギルド会館に肉と素材を売却しに行くと、いつもの受付のお姉さんが困った顔で私に手招きした。


 私をカウンターから遠ざけて、小声で話し出す受付のお姉さん。


「――ミラちゃん、なんか、会議室でミラちゃんのお客という方達がお待ちなのよ……どうする?」


「別にまだお客さんじゃないけど、一応心当たりがあるので――」


 どうすると言ってもどうしようもない。逆に無視して良いの?と聞いたらお姉さん、困るんじゃないだろうか。

 まあ「ギルドの会議室なら話を聞く」と言ったのは私だ。仕方ないからお話をきかせてもらおうじゃないか。


 私は受付のお姉さんに案内されて、ギルド会館の会議室に向った。



読んでくれて、ありがとうございました♪

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