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17 接触

 翌日、朝早く探索者ギルド会館に来た私は、会議室で受付のお姉さんとお話していた。

 

「――肉以外の素材買取価格が銀貨10枚、指名依頼による後金と成功報酬が満額の銀貨25枚、合計で銀貨35枚になります。銀貨30枚分は代わりに金貨3枚でお支払いする事も出来ますが、どうします?」

 

 確かに普通はそのほうが、かさ張らなくて良いと思うけど、私は「異空間収納」の魔法があるので銀貨で受け取った方が使い勝手がいい。金貨でパン1個とか売ってくれないし、売ってくれてもお釣りがヤバイ。

 

 ただ、これは受付のお姉さんの「かさ張るから不用心だろう」という心遣いだ。せっかくの親切を断ると悪いという事もあるが「大金をジャラジャラ言わせて持ち歩くなんて不用心なのに何故断るのか?」と不審がられてしまうのも困る。

 

 私は金貨3枚と銀貨5枚の形で報酬を受け取ってギルド会館を出た。

 

 受付のお姉さんの「またお願いしますね♪」という圧が相変わらず凄かった。「こういう『指名依頼』は中級探索者にランクアップするための良いチャンスなんですよ♪」とも言われた。

 

 ちなみにギルドでの私のランクは「下級探索者」。ギルドに登録するとまず「新人探索者」と呼ばれ、登録してから問題を起こさず、納品依頼をこなしていればすぐに「見習い探索者」と呼ばれる。

 

 そこから暫く様子を見て最低限の実力があると認められると「下級探索者」と呼ばれるようになり、それでやっと「私の生業は探索者です」と言っても良いレベルだというのがこの界隈の常識だった。

 

 ランクが上がれば高額の依頼が増え、収入が増える。ギルドでの地位も上がり、社会的地位も上がる。だから、ほとんどの探索者は生活を良くするため、何かを実現するために中級~上級を目指す。

 

 でも私は変に腕を認められて、厄介な金持ちや権力者に目をつけられ、厄介な依頼や高難度の依頼を強要されたくない。薄給でも自由でいたいので一生、下級探索者のままで良いと思っている。

 

 受付のお姉さんは気乗りしない風の私を見て「貴族様や有力商人とコネを作る絶好のチャンスなんですよ?」と首を傾げていたが、貴族や大商人の噂の一部を聞いただけでも彼らが傲慢で理不尽で危険な存在と感じる。そんな存在へのコネが欲しいとはとても思えないのだ。

 

 ただ薄給はともかく、自分を守る為、自由に生きる為に力は欲しいと思っている。


 そんな事を考えながら、ポケットの中の金貨と銀貨を「異空間収納」の魔法で収納する。


 ちなみにヨーコは(だいたいサンジュウゴマンエンくらいかな~稼いだわねぇ♪)とか言っていた。意味は分からないがヨーコは偶にそんな意味不明な事を言うので私は特に気にしない。


 ちなみのちなみに、私は今日も探索者ギルド会館の裏口から出してもらった。指名依頼を終えたので、明日から裏口を使わせてもらえないかも?と思いながら、歩いていると、誰かに肩を掴まれた。

 

 その手を追って見上げると、若い男の人が私を見降ろしている。そしてその横に少し年嵩の男の人が立っていた。

 

「――悪い、お前と話をしたいという人がいるんだ。ちょっと一緒に来てくれないか?」


「――えっ?人違いでは?」


 もちろん、そんな訳ないと分かっている。直接会うのは初めてだが、割と長い付き合いになっていた。恐らく間違いなく、いつもの尾行の人達だろう。運悪くヨーコが探知してなかったらしく、事前に警告を貰えなかった。私は精一杯、平然を装いながらとぼけてみた。

 

「さあ。それは知らねぇが、とにかくお前と話しがしたいそうなんだ。それでお前をその人のところへ案内するのがオレたちの仕事なんでな。大人しく来てくれないか?」

 

 声は平静だが、見上げた顔は二人とも笑っていなかった。肩を掴む手にも痛くは無いが、ガッチリ圧がかかっている。

 正直、怖いし、逆らったらマズそうと思ったが、嫌なものは嫌なのだ。ギリギリまでごねてみることにした。

 

「そんな、嫌ですよ。知らない人と話す事なんて私にはありませんから」 

 

「ともかく来てくれ。美味い物も食わせてもらえるしちょっと話をするだけで小遣いもたっぷり貰えると思うぞ」 

 

「いや、私、ちゃんと仕事ありますから」 

 

「金はいくらあっても良いだろう?」 

 

「そうですか?必要なだけあれば良いとおもうけど?」 

 

 若い男がピキピキと顔を引きつらせる。そこまで煽ってないと思うけど、なんかこの人もうキレそうだ。

 

「――連れて行かないとオレが罰を食らうんだわ。可哀想だと思わねぇか?どうなっても良いとか言わねぇよな?」 

 

「いや、私には関係ないですから……」


「――関係ねぇから、どうでも良いってか?じゃあ、オレもお前の都合なんて、どうでも良い。大人しくついて来い。じゃなきゃ、どうなるか想像してみろ」

 

 若い男がブチ切れた。後ろの少し年嵩のほうは頭を抱えている。そして短い髪の毛を何度か撫でつけた後、その年嵩の男が1歩前に出てきた。

 

「――いや、スマンね。オレたちちょっと焦ってたんで、こいつも心にも無いことを言ってしまった。謝るから許してやって欲しい」 

 

 言葉では謝っているが、この年嵩の男の方も顔を見れば悪いと思っている感じではない。

 

「それに、こいつの言い方は悪かったが、この話がさる高貴なお方のご依頼なのは間違いない。断らないほうが良いと思うよ」 

 

 何だかんだ言っても、結局、脅すのだ。私はうんざりした。

 

「――何故です?受ける気が無ければ断るのは当たり前でしょう?」 

 

「そりゃ、理屈ではそうだが、世の中理屈通りにはいかないからね。ロナちゃんとかご近所のお友達もきっとそう言うと思うよ?」 

 

「え、おじさんもしかして、私のこと脅してます?」

 

「いやいや、ロナちゃんが毎日笑って過ごせると良いね?っていうお話だよ?」 

 

「そうですか?別に、ロナはロナで自分の思う通りにやると思いますよ。私は何とも思いませんけど?」 

 

 年嵩の方の男の眉もピクリと動く。この人達、キレるの早すぎ。


「ロナちゃんが酷い目に遭っても良いって事かい?友達として酷くないかな?」


「別に友達じゃないです。ルームメイトで仕事仲間ですけどね。ロナが酷い目に遭ったら可哀想と思うし、誰かに何かされたのなら、犯人はただじゃ置きませんけど、だからと言って私自身より優先する事はあり得ません」


「ほぉ~……?」


 そろそろ年嵩のほうも大分キレて来たらしくヒクヒクしているし、最早あからさまに私を睨め付け瞬き一つしない。ちょっと年齢が違うだけで、2人ともチンピラはチンピラだということらしい。


 それに私は魔力感知でこの人達の身体能力は大体分かるのだ。魔物と命がけで戦った経験から、大凡の強さも感じる。

 

 ハッキリ言って、2対1でも勝てそうだった。


 その時、ヨーコの声がした。

 

(この人達は弱いけど、戦いって直接戦うだけじゃないから油断しないこと。あと、相手の拠点について行くのはどんな罠が有るか分からないからあり得ないわ。ギルドの会議室でなら聞いてあげても良いと言ってみたらどうかしら?) 

 

 ふむ、完全にキレさせないほうが良いという事か――まあ、確かにこの人達が弱くても、私も別に強くはないし、もっと強いのが出て来るかもしれないし……。

 

 それに所詮、私は一人だしな。

 

 私は反省して、ヨーコの勧め通り、妥協案を出してみる事にした。

 

「――探索者ギルド会館の会議室でならお話を聞いてもいいですよ?そう伝えてください」 

 

 急に承諾した私に、一瞬、二人が固まった。その隙を突いて、肩を掴んだ腕を下から弾く。拘束を外して、私は彼らの前から走り去った。

 

 話からすると、新しい拠点もバレたか?面倒だけどまた部屋替えか――でも、また別の情報源が出来るだけかもしれない。

 

 面倒いし、ウザいし、正直、怖い。だけどあの程度のチンピラにビビって折れるなら、自由に生きるなんて無理だ。そしてそれは、相手が商人でも貴族でも同じこと。

 

 そんな選択肢は私には無かった。



読んでくれて、ありがとうございました♪

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