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16 レアモン

 契約期間の終了間際、もうきっと、どこかに移動しちゃってるだろうと思って、ホッとしていたのに、突如、私はレアモンらしい魔力反応を探知してしまった。

 

 普段、同レベルの深度で見かけるどんな魔物より大きな魔力反応から、私がいつも狩っている魔物より強い事が分かる。

 

 小型と言う話だったが、魔力の感じからするとそうは思えない。ギュッと凝縮して強いとか、そういう事だろうか。

 

 私はヨーコに一人で探せと言われたので、意識を魔力探知に集中する。

 

 最初は詳細な体格や体型までは感知出来なかったが、近づくにつれて事前情報通り4足歩行タイプだとハッキリ感じるようになってきた。

 

 さらに近づくと、逞しい体躯で頭にユニコーンのような長い一本角があるのが分かるようになった。

 

 ここでようやくヨーコが以前、資料室で見た図鑑知識を披露してくれた。このレアモンの名前は恐らくユニブレードディアと言う鹿の魔物だろうと言う。

 

 一本角――ユニコーンだと思ったのはユニブレード――刃のような角だった。戦い方は突進して頭のブレードを振り回して獲物を斬り裂く、突き殺すなど――怖すぎ!

 

 魔法の有無は不明だが、発雷鼠や発火蜥蜴と違って斬られても突かれても、蹄で蹴り上げられても即死級という事だった。

 

「――いきなりハードル上がり過ぎでは?」


(大丈夫よ。確かに魔物は身体能力が人よりかなり高いし、爪や角も強力だわ。でも、その分、攻撃は単純で単調な力圧し(おし)が殆どなの。魔物同士の戦いならそれで充分、勝てば生きて負ければ死ぬ、まさに単純明快な世界なのよ)


(――だけど人間には戦いの技術や駆け引きがあるわ。いたずらに恐れる必要はないし、勿論侮ってもダメ。どんな時もどんな相手でも冷静、公正、客観的を心がけるのよ)


 ビビる私に、ヨーコがそんな事を言う。実に師匠っぽい。私は少しだけ恐怖から解放された。

  

 ちなみに、鹿型の魔物は多いのに何故、ユニブレードディアは希少な魔物と言われているのか?

 

 それは彼らが脳筋バカすぎるから。

 

 魔物の生態は普段目にする行動以外、分からない事が多いのだが、ユニブレードディアは同種の個体でも構わず襲い殺し合うという事が知られているらしい。

 

 その為、個体数が圧倒的に少ないのではないか、と言われている。

 

 ヨーコのそんな解説を聞いている間に、やっと心が落ち着いて来た。考えてみれば最初はウサギの爪の一撃や、発火蜥蜴の身体のデカさにもビビって死の恐怖を感じていたのに、慣れてしまえば雑魚と思えるようになったのだ。

 

 その頃と比べ、今は棒術もあり魔法も使える。毎日戦闘訓練しているのだ。やれない事はない、はずだ。

 

 その時、魔物の姿が見えた。私は思わず息を呑む。魔力探知で大凡感じてはいたが、物凄く大きく感じる。

 

 巨体と言う程ではないが、今までに狩ったウサギや鼠、蜥蜴と比べると段違いに大きい。

 その上、頭が動くたびに長い刀のような一本角が鈍く凶悪な光を放っている。

 

「ビイイイイィィイイイィ!」 

 

 突如、およそ鹿らしくない咆哮を轟かせたユニブレードディアは軽く前脚を持ち上げ、強烈に地面を蹴り、高速で突進してきた。

 

 私は杖を構えて待ち受けていたが、あまりの勢い、音、殺気に一瞬硬直した。

 

「――やぁああああああぁっ!」

 

 危うく呑まれかけたが、雄叫びを返す事で恐怖による拘束を振り払う。

 

 頭を低くした格好であっという間に間合いに飛び込んできたユニブレードディアの突進突きを躱しつつ杖を振るが、大きく避けたせいで届かなかった。

 

 駆け抜けたユニブレードディアがすぐに反転して再び突進してくる。今度は頭を上げたままだ。 

 一本角のブレードを振って来るとみて、私はユニブレードディアがブレードを振り降ろす直前の間合いで「発火」の魔法を発動した。

 

 いきなり顔に炎を浴びせられて、ユニブレードディアが炎を避けようと頭を逸らして棹立ちになる。

 

 そこで私は左斜め前に飛び込み、思いっきりユニブレードディアの後ろ脚に向って杖を振り抜いた。

 杖は両後ろ脚を圧し折り、支えを失ったユニブレードディアの身体が空中で斜めに傾ぐ。

 

 やった!と思った瞬間、倒れながらユニブレードディアが一本角のブレードを私に向って振り下ろしてきた。

 

 運か実力か、今度は硬直することなく、瞬時に地面に身体を投げ出した。

 

 元々足を狙って体勢を低くしていたおかげで、一本角ブレードもユニブレードディアの身体もギリギリ躱すことが出来た。

 

 私は地面に転がった勢いでユニブレードディアから距離をとる。ユニブレードディアは倒れたまま猛烈に暴れのた打ち、頭の一本角ブレードを振り回していた。

 

 一瞬でも回避が遅れたり、ユニブレードディアの近くでもたもたしていたら、一刀両断か、下敷きか、もしくは穴だらけになっていたかもしれない。

 

 私は慎重に距離をとり、杖の出来るだけ端の方を持つと、出来るだけ遠い位置からユニブレードディアの頭めがけて何度も何度も杖を振り下ろし、ようやく止めを刺した。

 

 ホッと息を吐いたが、休む間もなく穴を掘り、持って来た縄でユニブレードディアの足を括って吊るし、首を切って血抜きをしつつ、内臓を切り出して穴に落としていく。

 

 ある程度、血が抜けるのを待っている間、穴に落とした内臓を「洗浄」の魔法で洗って魔石を探す。発火蜥蜴の魔法石よりやや大きめの魔石が入っていたので取り出して洗う。危うく見落とすところだった。危ない危ない。

 

 その後、切り開いた内側も「洗浄」の魔法で洗浄ながら、ハッとした。「異空間収納」の魔法に入れて持ち帰るつもりだったが、それだと人前で取り出せない。当たり前だが、荷車を借りるなり運搬の手伝いを頼むなりしないと、丸ごと持って帰るのはかなり厳しそうだ。

 

 だが、依頼は肉を獲って来ることなので、出来れば丸ごと持って帰りたい。丸ごと持って帰れば肉以外の素材売却の価値も上がるかもしれない。

 とは言え、これをそのまま担いで行こうにも、体格差的に引きずってしまって結局、素材が傷むだろうし、重量的にも多分厳しい。


 置いて帰って人を呼んでくるのは、戻るまでに他の魔物に食いつくされそうだった。


 試しに一度、ユニブレードディアを地面に降ろして、それから担いでみる。重量的には、ただ持ち上げるだけならギリギリ何とかなるが、どう頑張っても一本角ブレードや足先を引きずってしまうし、この状態で長距離を歩くのはキツイ。

 

 ヨーコに相談すると「タンカ」という物を作ってみないか、と言われた。

 

 まず、2本の木を切って枝を払って2本の棒を作り、その間に枝を渡して縛って固定し長いソリの様な物――「タンカ」を作った。その上にユニブレードディアを縄で括りつけ固定した状態で、「異空間収納」の魔法に収納した。

 

 その後、街の近くまで戻ると、森を出る前に誰からも見られていないのを確認し、「異空間収納」の魔法から細工済みの「タンカ」を取り出し、「タンカ」の棒の片側を持って引きずる形で歩いて森を出た。

 

 森を出る直前から街までなら何とかなる、そう思っていたが、その考えは相当に甘く、私にとって恐ろしい苦役となった。

 

 何度も、もうやめたいと思ったが、ここまでにかけた労力が放り出すのを何とか思い留まらせた。

 

 流石に今、例の尾行の人たちに声をかけられたら逃げられないと思ったが、ふと視線を感じ、その視線の方を見ると誰かと目が合った。同じ年ごろの探索者パーティの一人で、同じ貧民街の住人なので顔は知っている子達だった。

 

 私が彼らに手招きして呼び、探索者ギルド会館まで運ぶのを手伝ってくれたら小銀貨1枚出すと言うと、喜んで手伝ってくれた。

 

 パーティの子達と固まって門を通ると不思議と尾行の人は気づかなかったらしく、ヨーコの魔力探知でも追って来る反応はなかった。

 

 ユニブレードディアを探索者ギルドへ納品すると、お代は翌日貰うと言うことで、全員、裏口からコッソリ帰してもらった。パーティの子達は目を丸くしていた。

 

「お前、いつもこんな事してんの?」


「いや、ここのところモージのせいで、変なのに尾行されてるから」


「あ~」


 パーティの子達も渋い顔になる。モージの追放騒ぎはあの界隈の子供なら誰でも知ってる有名な珍事なのだ。

 

 既にヘロヘロの私はパーティの子達にお礼を言って解散すると、尾行の有無の確認はヨーコの探知に任せ、拠点に向って必死に足を動かした。

 

 拠点に帰るとロナに一言声をかけただけで、何もせずに眠ったのだった。



読んでくれて、ありがとうございました♪

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