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第八十二話 一生あなたと離れ離れになることはない


「貴様、何をしている?何故こんなところにいる?オマエはそらの力で何処か遠くへ葬りさられたのではなかったのか?」


 気味の悪い笑顔をさらにクシャクシャにさせて何とも甲高い不気味な声をあげてヤツは笑った。


「確かにボクはそらから君のお姉ちゃんから離れて別の生物に憑依しなさいと言われたよ。いやあ。酷く傷ついちゃったなあ。ボクは何も悪いことも間違ったこともしちゃいないのにさ。いくらそらの命令でも腹が立っちゃったなあ。よくよくそらの話を聞けばボクを追い出すようにそらにお願いしたのはキミだというじゃないか。余計に腹立たしかったよ。たかだか悪魔がそらの力を借りて天の使いを追い出すなんてさ。


それでボクは考えたんだ。何とかキミに仕返しをしてやれないものかとね。いいアイデアが浮かんじゃったね。キミの家族に憑依できないのならキミ自身に憑依するのはどうなものかとね」


「馬鹿な。そらの造成物に別の造成物が憑依するなんて話は聞いたこともないぞ」


「うん。基本はそんなことは不可能らしいね。でもボクは心を込めてそらにお願いしたんだ。今回だけは認めて下さいってね。そらは悩みもせずに即答したよ。今回だけは認めましょうって」


 オレは唖然とした。言葉を発することができないくらいに。余程呆けた顔をしていたのだろう。天の使いはさらに嬉しそうな声で話を続ける。


「ボクはそらと契約を交わしたんだ。特別に悪魔に憑依することを認める代わりにボクは生涯キミと一緒にいることを誓った。この意味が分かるかい?もうボクはキミから離れることはないんだ。キミは生きている限りもうボクから離れることはできないんだ。言っておくけどそれは今、キミが憑依している人間から別の生き物に憑依することになってもボクとは離れることはないんだよ。ボクは今の狩野 生馬という人間に憑依しているわけではないのだからね。キミという悪魔に憑依しているんだからね。


悪魔というものの寿命は何百年と続くらしいね。それだけ長い時間ボクとキミとは一緒なんだ。よろしくね、相棒。せいぜい長生きしてボクをたくさん楽しませておくれよ」

 

なんという恐ろしいことだ。オレの力では残念ながら天の使いを闇に葬ることは非常に困難なことであることは理解している。使いの呪縛から解き放たれるのは、ヤツがオレに愛想を尽かせて自ら出て行くか、オレ自身が死んだ時だけなのだと思っていた。あくまで天の使いというものは人間やその他動物に憑依するものであり、悪魔のような天の造成物に憑依するわけではないと認識していたから。しかし、今回はそのどちらにも期待ができないのだと言う。オレが人間生馬の身体を捨てて、別の生き物に憑依したとしてもそれと一緒に天の使いまで一緒にくっついてくるというのだ。


天の使いに憑依された生き物は、それはそれは苦い思いをしながら生きて行くことになることはオレ自身の目で確認している。いや、オレ自身も身を持って体感している。こんなに辛くて苦しいことが他にあるだろうか。オレにはこれ以上の苦しみなど想像もつかない。使いに憑依されて辛い思いをするのがオレだけならばまだしも、使いに憑依されたものは自分の身の周りの生き物さえも苦しめることになる。いや、むしろ使いに憑依された者の周りの生き物の方が与えられる苦しみは大きいのだ。オレがこの生馬の身体に住み着いている限りは美佐子や綾や毬を傷付け続けることになるのだ。

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