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第五十九話 愛情

 そらは予想外に簡単にその願いを受け入れてくれた。オレがそう望むのであれば天の使いに毬に憑依することを止めさせようと言ってくれたのだ。今すぐに毬の身体から出て行き、別の生き物に憑依するように言い聞かせようと約束してくれたのだ。もちろん美佐子や綾などオレの身近な存在には憑依しないように伝えるとも言ってくれた。それを聞いてオレは心からホッとした。この願いはそらに聞き入れてもらうのはとても困難なものだと思っていた為、そらの答えを聞いて身体中の力が抜ける程安心してしまった。これであの忌々しい使いの姿を見なくても済むのだ。ヤツがいると我が愛しい家族にどんな災いが襲い掛かるか分かったものではない。平穏な日常を過ごすことが難しいのだ。だが、これからはオレの力のみで家族を幸せに導いてやることができる。もうそれを遮る者はいなくなるのだ。


こんなに清々しい気持ちになるのは久し振りだ。使いが綾に憑依したときからオレの心は安堵というものを忘れていた。そらとの約束により我が家族から使いは去っていくこととなるのだ。こんなに喜ばしいことは無い。そらは最後にオレに問いかけてきた。悪魔から見た人間というものはどんなものか、人間界というのはどんなものかと。


「オレはずっと長い間人間というものは誠に愚鈍でそれらの造り出す世界も非常に退屈なものだと思っていたよ。人間界に身を置いて少しの時間を過ごした今でもその認識にあまり変わりはない。ただ、決してそればかりではないということに驚きというか感激のような気持ちも感じている。


優秀だと思う人間には出会ったことは未だに無いが、先程話した通り愛すべき人間という者がいる。彼女達といると本当にオレは幸せを感じるよ。しかし、やはり下らない人間の方が圧倒的に多いね。仕事というものに支配されている者、金に支配されている者、つまらぬ欲望や願望に支配されている者。人間という者は何かに支配されている奴隷のような者が多すぎる。自分が縛り付けられていることに気付き、その呪縛から解き放たれるようにすればもっと清々しく生きられると思うのだがな」

 

そういうあなたは家族に支配されているのではないのか、とそらが問うてきた。


「ハハハ。確かにそうなのかもしれないな。オレも少しずつ人間界というものに毒されてきているのかもしれないな。だがね。オレは決して家族に縛られている訳ではないのだよ。オレを縛り付けているものは愛情だよ。オレはこの狩野 生馬という人間の皮を被っている限りはもっともっと愛情というものに触れてみたいと思っているんだ。その対象は別に人間に限ったことではない。叶うことならば人間の造り出した文化というものにも積極的に触れて愛情を感じてみたい。それは可能なことであるとなんとなく予感しているんだ。今は具体的には語れないがね。人間界というものは中々に興味深いよ。いままでのオレでは知る由もなかった人間界をこれから何十年かは満喫できると確信しているね」

 

それは良かった。そらはオレのことを興味深い悪魔だと言ってくれた。賞賛だと受け取っても良いのではないだろうか。これからもオレを見守っているという言葉を最後にそらの声は聞こえなくなった。


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