第二十七話 生物
支店長の家に戻ってから気持ちを落ち着かせる為にまたビールを一本開けた。町田や青山、藤井はまださっきのTVに夢中になっている。オレは食事の後でややハイテンションになっていたからなのか、誰にも問われもしていないのにややいい気になって喋り出した。
「いいかい。この世の中には悪魔とサタンとデモン、そして天の使いってものが存在するんだ。そいつらは基本人間や動物に憑依したり、取り付いたりするんだよ。それらのものと憑依された側の生き物を合わせてベヒモスというんだ。例えばデモンに憑依された人間とそのデモンをベヒモスって言うんだよ。残念ながら、何に憑依されてもあまり人間や動物にとってはいいものではないんだ」
「人間に憑依して何をするんですか?」
藤井が予想通りに食いついてきた。
「デモンは特に悪さはしない。ただ、死期の見えた人間に取りつくのが仕事なんだ。そうして死に追いやられる人間や動物の行動、思いの変化を記憶して人間達が死んだ後にそらってやつに報告しに行くんだ」
「そらってなんですか?」
町田の問いに藤井が得意げに答えた。
「僕達の言う神様みたいなものですよね」
「まあ、そんなところだ。悪魔もサタンもデモンと同じような感じかな。大きく違うのは悪魔とサタンは人間を殺すというところさ」
町田もオレの話に興味を抱いたらしい。体を前のめりにしてオレに問い掛けてきた。
「殺すってどうやって殺すんですか?」
「悪魔もサタンも人間に憑依しているからな。傍から見ると人間が人間を殺した様にしか見えないさ。暴力を使って人間を殺すことが一番多いんじゃないかな。稀にだが、病気に見せかけて殺すこともあるかな。後はそうだな、事故に見せかけて殺すこともあるんじゃないかな」
オレは持っていたビールを一気に飲み干して、更に続けた。
「ベヒモスが地上の生物なら、海のベヒモスはレヴィアタンと言うんだ。聞いたことくらいあるんじゃないかい。そしてここからが肝心で空中や宇宙にいるものをジズって呼ぶんだ。皆が宇宙人って言っている者もジズのことなんだね」
町田と藤井が小さな声で、
「今日の生馬さんいつもと雰囲気違うね」
「そうですか?最近あんな感じなんですよ。僕も営業同行するまではああいう人だとは思ってなかったんですけどね」
藤井が思っている以上に今のオレはいつもとは違うはずだ。人間になって初めて喰したものがふたつもあるのだから興奮も止まらないはずだ。
オレが話終えた丁度その時、根本の息子が吉本支店長のところへやって来てこう告げた。
「ねえ。心音ちゃんが何処にもいないの」
一瞬ドキッとしたが、知らないふりで通すほか仕方が無い。オレはまたビールを冷蔵庫から取り出して、
「支店長。オレ、ちょっと外見てきますよ」
「お、おお。悪いな。俺も散歩がてらに少し外に探しに行くか」
支店長の自宅の目の前には公園がある。支店長は先ずは公園から探すことにした。オレは支店長に進言し、家の周りを探すことにした。探すことといっても、もうこの世にはいないと分かっているオレには適当に探すふりをするしかなかった。さっき冷蔵庫から取り出したビールを飲みきり自販機の横のゴミ箱へ捨てた。代わりに煙草に火を付けた。




