第二十四話 宇宙人の存在
待ち合わせの場所で煙草をすっていると
「あれ?生馬さんですか?」
藤井が声を掛けてきた。赤いTシャツに緑のハーフパンツにスニーカーと会社にいるときとは全く別人の藤井を見てオレが若干驚いた。藤井もまだ二十代前半なんだし、休みのときはこうあるべきだなあと素直に感心した。
「生馬さんってそんなにおしゃれでしたっけ?」
「余計な事は言わなくていいんだよ」
いつも通りの会話を繰り返しながら支店長の自宅に向かった。
途中、長谷川とも合流して三人で支店長宅に到着した。
「いらっしゃいませ」
出迎えてくれたのは奥さんと三歳くらいだろうか、心音ちゃんと言う名の女の子だった。
家の中にはいると志茂田部長、根本、井上、それに町田、青山の女性陣が既に支店長とビールを飲んでいた。
「おう生馬。御苦労さま」
早速支店長が缶ビールを渡してくれた。今日はできるだけたくさんの酒を飲んでやるつもりだ。折角の休日に上司の家などというありがたくもない場所に来ているのだから、それなりにもとは取るつもりだったのだ。
オレ達大人の他に根本と井上は子供を連れてきていた。両方男の子で歳は四、五歳くらい。子供達はすぐに仲が良くなったらしく明るい声ではしゃぎ回っている。
オレは人間の子供というものが案外と好きだった。屈託のない笑顔を見ていると、とても癒された気持ちになる。意外であろうか、悪魔が人間の子供を好きだというのは。
一方大人の世界ではゴルフの話題で持ち切りになっていた。どうやら最近支店長が新しいゴルフクラブセットを購入したようで、そいつの品評会が行われている様子だった。オレに取っては堪らなく興味のない話だ。女性連中も当然興味がないようで、TVを見ながら何かを話していた。見ていたテレビ番組は宇宙人やUFOの存在の真偽に関する番組だった。藤井もゴルフ談義は退屈らしくそちらの輪に加わっていた。
「UFOとかって本当に存在するのかしらね」
年上の女性の青山がそんな話を振って来た。青山は三十歳独身で見た目はまあまあ綺麗なのだがガサツな性格で中々結婚できない、むしろしようとも思っていない、言わば独身貴族の女だった。
「わたしはいないと思うな。だっているんだったら誰かがちゃんと写真にとったりしてそうなものじゃないですか。見たって人の証言もなんとなく曖昧だし」
町田が返答した。彼女は見かけもまあまあ可愛らしく、持ち前の明るいキャラで社内の人気者の座を掴みとった女である。確かに彼女と話していると何でも前向きに話をする為、オレ達が元気をもらうことのが多い。
「え~。僕はいると思うなあ。証拠も結構信頼できるんじゃないですかねえ。写真に撮ろうとしてもそんないつでもカメラ構えているわけじゃないですから」
「生馬さん、実際のところどうなんですか?」
藤井はオレなら知っていて当然という迷惑千万な振りをしてきた。
「宇宙人もUFOもいると思うよ、オレは」
オレは敢えて「思うよ」と付け加えた。
「じゃあどうして今まで誰も直接会ったって話も写真も残ってないんですかね」
「直接会ったやつもいるだろう。そう言うやつ以前TVに出てなかったっけ」
「ああ。どっかの国のお婆ちゃんじゃないですか。TVでわたしは宇宙人に拉致された経験があるっていうのみたことある」
「ほら。りっぱな証言者もいるじゃないか」
町田が首支店長の奥さんが焼いてくれたであろうピザをむしゃむしゃと食いながら首を突っ込んできた。
「でも証拠が無いですよね。証言だけだと嘘なのかもしれないし。誰でも納得する証拠が欲しいんですよ」
なんだか事件の犯人を追う刑事みたいなことを言っている。
「証言と言う意味ではやつらは証人の記憶をある程度操作するのだから、まともな証言を人間から得るのは難しいだろうな。それにやつらの周り、半径五km以内にいる生物は全部彼らに見つかって行動も制限されるから、カメラを持っていてもまともな写真をとることは可能ないんじゃないかな」
「え?え?今何気に凄いこと言わなかったですか?宇宙人って人間の記憶を操作できるんですか?行動も制限されちゃうんですか?それって何の情報です?」
藤井が思った以上に食いついてきてしまった。クエスションマークだらけの質問にオレは思わず言い過ぎたかなと思った。しかし、ここまできたものは仕方がない。
「ちょっと前に某国の科学者がUFOや宇宙人についてレポートした本を読んだのさ。それによると記憶は過去五時間分くらいは操作できるらしいよ。人間の脳に振動を与えて、都合の悪い記憶は消して、ありもしなかった新しい記憶を植え付けることも簡単なんだってよ」
「行動が制限されるのはどういう仕組みなんですか?」
町田が少しは興味を持った様だった。
「これも脳の操作の問題さ。さっきも言ったように奴らは例えば半径五km以内の生物の思考をある程度管理することができる。UFOや宇宙人に遭遇した人間がカメラで記録に残そうと思った瞬間、やつらは人間の思考を操作してしまうのさ。思考を操作された人間はカメラなど何かしらの記録媒体を持っていてもそれを使うことを忘れてしまうんだ」




